鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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真夏の夜の淫夢って、なんであんなに流行ったんでしょうね・・・・


淫夢

「くふぅ・・・・ぁ」

 

間接照明の琥珀色の光に包まれる中、男女が睦みあっていた

 

― あり?なんでこんなとこにアタシが・・・ ―

 

少女は周りを見渡し・・・

 

― げげっ!なんて所にいんだよ!!―

 

赤い髪の少女 ― 佐倉杏子 ― はとっさに目を隠す、が

 

― ええっ!男の人のアソコってああなるんだ・・・結構グロイな ―

 

どうやら男女は杏子の存在には気づかないようだ

男女がそういった「行為」をすることは彼女でも知っている

人並みに興味があってしかるべきだ

 

 

― アノ時ってどんな顔をしてんだろうな・・・・ ―

 

 

彼女がふと浮かんだ疑問を口に出した時だ

 

不意に、景色が変わった

 

暖かく汚れ一つない、シーツの上

 

白い肌をした少女が横たわっていた

 

 

― 何だ一体・・・・ ―

 

 

彼女が手を見る

それは幻惑魔法で男性に変化した杏子の手と同じく、筋張った手をしていた

 

「ねぇ・・・杏介ぇ?もう終わり?」

 

横たわっていた女性が身体を起こした

その少女の顔は彼女の良く知った人物だった

それは・・・

 

「真ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!????????」

 

 

佐倉杏子が絶叫と共に目を覚ます。

彼女が周りを見渡す、飾り気のない部屋

叔母である「一二三美緒」から与えられた彼女の部屋だ

 

 

「何だよ一体・・・・とりあえず水飲んで落ち着くか」

 

 

一二三邸

杏子の母親と妹のももと一緒に世話になっている叔母の家だ

杏子が階段を下りると、階下では灯りが灯っていた

 

「よう杏子。お前も酒を飲むかい?」

 

彼、いや「彼女」一二三美緒は香りのいいキューバ産の葉巻とリンゴのブランデー「カルヴァドス」を楽しんでいた

 

「いや・・・いいよ叔母さん」

 

美緒が杏子を抱きしめる

 

「つれないな~杏子ちゃんは~」

 

「叔母さん!酒臭いって!」

 

「酒は大人の香水だよ?」

 

「水だけ飲みに来たんだよ・・・・帰る」

 

「まぁまぁサラミもあるから少しくらい夜食を食べてもいいじゃないか?」

 

「・・・わぁったよ」

 

杏子は食卓に座った

 

「・・・・何かあったのかい?杏子」

 

「どうして分かるんだ?」

 

「こう見えても人を見る仕事をしていんでね」

 

そういうと美緒は美味しそうにブランデーを一口啜った

 

「なぁ・・・叔母さん。人を好きになるってなんなのかな・・・」

 

「何だい藪から棒に?」

 

「いいから答えてくれ!」

 

美緒が杏子と視線を合わせる

 

「わからない、それが答えかな」

 

「・・・・もういい!」

 

杏子が席を立った

 

「杏子、座わんな」

 

「そうやっていつも茶化して・・・!」

 

「いいから座れ!」

 

美緒の気迫に押され、杏子は再び席に座った

 

「話を変えるね。杏子は食べ物が・・・いや食べることが好きだよね?ならそれに理由はあるかい?」

 

「・・・・考えもしなかった」

 

「それが普通だ。誰しも嫌いな理由はいくらでもいえるのに、逆に好きな理由は答えられない」

 

「だから・・・・わからないってこと?」

 

「そうさ。だから自分に正直に生きることが大切だ。俺は不器用で・・・・それに気づくのが遅すぎた」

 

美緒は少しの自嘲を込めて呟いた

 

 

翌朝

宇佐美邸

 

「杏子さん、真さん。計画を話すわね」

 

計画はこうだ

1、何時ものようにデートを楽しむ

 

2、中沢が尾けてきているのを確認する

 

3、ラブホテルに入る

 

「二人が入るラブホテルは、協力者に準備してもらったから心配ないわ」

 

巴マミが二人にラブホテルの場所を書いた地図を手渡す

 

 

「後は貴方達の覚悟しだいよ・・・・覚悟はできた?」

 

暁美ほむらが二人を見つめる

 

「「覚悟はできています」」

 

杏子と真は答えた

 

 

 

 

 

NGシーン

 

「人を好きになる、か・・・・・」

 

杏子が自室に引き上げた後、一人、一二三美緒は呟いた

 

 

キスよりも先に口で愛することを覚え

 

愛を告白されるよりも先に、身体を許した

 

 

彼女にとって、女や男を抱くのは腹が減ってファストフードを食べるのと同じだ

あくまで、「渇いている」時にする身体だけの関係

そこに愛はない

 

プルル!

 

不意に彼女の携帯が鳴った

 

「一二三だ」

 

先ほどまでの優しさのある声ではなく、冷え切った声が居間に響く

 

「一二三様、定期連絡をお伝えします。対象はアメリカを出国し、現在はメキシコの呪術医師の所に居ます」

 

「メキシコか・・・・また厄介な所に!」

 

「対象を如何しますか?」

 

「死なない程度に監視、もしヤバかったら即応を許可する」

 

「了解しました」

 

杏子の父親は現在、全世界修行の旅に出ている

その資金は何処からか?

それは彼女が幾つかの口座を経由して正体を明かさず杏子の父親に「提供」している

 

― 魔法少女になった少女は願いの大きさに関わらずやがて破滅する ―

 

杏子が「家族のために」魔法少女になった

本人から聞いたわけではないが、彼女の行動を収集し考察すれば理解できないわけではない

だからこそ、彼女を破滅させる訳にはいかない

あの堅物が事実を知ったら・・・・

恐らく悪夢の結末しかない

堅物を家族から引き離すにはこの方法しかなかった

 

 

誰も傷つかない、たったひとつの「冴えたやりかた」

 

 

寒い冬の夜

汚れた服を着て、妹と一緒にビラを配る杏子

その姿を見て・・・・心は決まった

 

「杏子・・・・愛しているよ」

 

彼女はグラスに口づけ、囁いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ふとしたきっかけで杏子の父親が戻ってきても、今の彼女ならきっと最悪の結末を回避できるはず・・・・・

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