鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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長かった・・・・
これで「恭介救済」エピソードは完結


天国に結ぶ恋

光の洪水の中、燕尾服を着た上条恭介がそっと赤いバイオリンを肩に当てる

 

もう恭介には満員の聴衆も

 

身を焼くようなスポットライトも

 

舞台袖で彼に熱い視線を送る彼の恋人である、志築仁美も

 

彼の心に無い

 

彼の心に去来するもの

 

それは掛け替えの無い、世界で最初のファンになってくれた少女「美樹さやか」との思い出

 

「赤いバイオリン」から紡ぎ出される音階は天使の羽のようにホールを満たした

 

 

『…何か、手間かけさせちゃったね』

 

『じゃ、いこっか』

 

『うん』

 

 

「さやか?」

 

演奏を終え、恭介が顔を上げると観客席に今までさやかが座っていたように感じた

 

 

 

「たまにはクラシックもいいもんだな、真」

 

「あら?来るまではあんなに渋ってたのにね」

 

「真が演奏後に関係者を集めたパーティがあるって言ってくれたからだな・・・ほむら!過ぎたことはいいだろ!」

 

「相変わらず素直じゃないわね、佐倉さんは」

 

佐倉杏子と巴マミ、そして暁美ほむら

3人はそれぞれ煌びやかなドレスに身を包んでいた

 

「まぁまぁ、パーティー会場に移りましょうよ」

 

「ええ」

 

「そうだな真」

 

真の案内で杏子とほむらがパーティー会場へ移る中、巴マミが真を呼び止めた

 

「真さん、ちょっといいかしら?」

 

「巴先輩」

 

真剣なマミの表情に真は襟を正した

 

「貴方のしたことはとても褒められたことではないわ」

 

「はい・・・・」

 

「あなたの目標がさやかさんであっても、その最後まで見習うことはない。よくわかって?」

 

「ええ、その通りです」

 

「あなたは私たちの一員・・・・一人で悩まず何でも相談してもいいのよ」

 

「すみませんでした」

 

「でも、結果としてあなたは一人の芸術家を助けた。それは誇ってもいいわ」

 

マミは真に笑顔を見せた

 

「さぁ私達もパーティーを楽しみましょう」

 

 

「父の名代として参りました、宇佐美真と申します」

 

「ああ・・・宇佐美教授は今回は来られなかったのですか」

 

真はパーティーの主催者である、初老の男性 ― 上条家当主 ― に挨拶をした

 

「ええ。父は海外へフィールドワークに出かけていて代わりに出席いたしました」

 

「そうか宇佐美教授は海外へ・・・・。おお、ちょうどよかった!恭介、こちらへ来なさい」

 

「はい、父さん」

 

本日の主役である、上条恭介はステージ上での燕尾服から、パーティー用の夜会服に着替え終えていた

そこで彼を待っていた少年に、恭介は心奪われた

灰色の髪

凛とした声

それらは否応となく、あの夜の少女を思い出させた

 

「僕の顔に何かついていますか?」

 

慌てて恭介は顔を逸らした

 

「いえ、ある人物によく似ているなと思って・・・」

 

「そうですか」

 

「今日の僕の演奏は楽しんでいただけましたか?」

 

「ええ。特に最後の亜麻色の髪の乙女に強い感銘を受けました。まるで、誰かを想いながら弾いていたように感じて・・・・。不適切な発言ですね、すみません」

 

「素直な感想は演奏者にとっての喜びですから、気にしないでください」

 

「きっと・・・あんなに感情を込めた演奏を贈られて、その誰かは満足しているでしょうね・・・」

 

― いいわ。これでミッションコンプリートよ!真さん ―

 

真の脳裏に織莉子からの念話が届く

 

― すみません。最後の最後まで世話になって ―

 

― いいのよ。今日は私達も参加する予定だったから ―

 

「それでは僕はこれで・・・」

 

「挨拶の途中で引き留めてごめんね」

 

恭介が心の底から微笑んだのを見て、真はそっとその場を後にした

 

 

「お・ま・え!その鴨肉のローストはアタシんだ!」

 

「アタシが目をつけていたのが先だ!どうせ貧乏人の貧乏舌のくせに!」

 

 

「「「「どうしてこうなった・・・」」」」

 

 

巴マミ、暁美ほむら、美国織莉子、そして宇佐美真がハモる

目の前には一切れの鴨肉のローストを奪い合う杏子とキリカが、不毛な戦いに身を投じていた

 

「キリカ。鴨肉のローストくらい何時でも用意してあげられるわよ」

 

「止めないでくれ!これはアタシとあの女との聖戦なんだ!」

 

織莉子が止めようとするが、効果はない

 

「佐倉さん!今日は公的なパーティよ。少し真さんのメンツも考えなさい!」

 

「ただ飯なら楽しんだ者勝ちじゃねぇのか?」

 

杏子も矛を収める気はないようだ

だが、突破口は意外なところから現れた

 

「「無い!」」

 

銀の皿の上の鴨肉のローストが消失していた

 

そしてそれは・・・・

 

 

「上条様!本日の演奏は最高でした!!料理をとってまいりましたの!」

 

「ありがとう仁美・・・・」

 

 

「アタシの鴨肉のローストが・・・・」

 

「あ~あ」

 

落胆する二人を尻目に、巴マミと美国織莉子が声を掛ける

 

「折角の料理が冷えないうちに楽しみましょう」

 

「今を楽しむこと。悔いを残さないことが人生を楽しむコツよ」

 

 

真は皆の輪に加わった

 

 

僕のしたことはあまり褒められたことじゃない

危険な事だし、何よりも杏子さんを悲しませることになったかもしれない

でも・・・上条さんの演奏は素晴らしかった

この演奏が天上の「美樹さやか」さんに届いているのを祈りながら・・・・

 

「僕の分の料理を残してくださ~い」

 

「弱肉強食だぜ!真ォ!」

 

「僕のトリッパ(牛のハチノス煮込み)が・・・」

 

 

 

 

NGシーン

 

「恭介の様子がおかしい?」

 

見滝原中学校 杏子たちの教室

誰もいない時間を見計らって、「幸福なお姫様」志築仁美は悲痛な面持ちで口を開く

 

「いつも上の空で・・・・・わたくし、おかしいと思いまして・・・お父様の知り合いの力で部屋を調べましたの」

 

「それって不法侵入・・・・」

 

「恋人が恋人の部屋に居ることはおかしくありませんわ。・・・・・それでこれを見つけましたの!」

 

バサッバササッ!

 

「魔法少女○イ」、「魔法少女メル○」etc・・・。

 

言わずと知れた魔法少女凌辱もののエロアニメだ

 

「これは生身の女に興味がなくなったことですの!!!!!!」

 

「そんなこと言われても・・・・な?」

 

順当な受け答え

でも仁美はそれに満足はしなかった

 

「こうなったら、恭介様に香港で仕込まれた媚薬を盛ってでも・・・・」

 

ゾクリとするような空気が漂う

 

― 今、仁美の後ろに何か黒い靄が見えたような・・・・ ―

 

 

「ナイトメア」

 

このことが彼女、いや魔法少女全体が巻き込まれることになる現象の一端であることを彼女はまだ知らない

 

 

 

 

 




ナイトメアって結局、なんなんでしょうね・・・・

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