白を基調としたパーティードレスを纏った少女が宇佐美邸の前で、最愛の友人を待っていた
― 美国織莉子 ―
有名代議士の娘にして、かつて「救済の魔女」の誕生を喰い止めた正義の味方だ
結果として罪のない人々を虐殺することにつながってしまったが・・・・
「織莉子~!遅れてごめん!」
「大丈夫よキリカ。私達にとって時間は有限であっても無限だから・・・・」
― 呉キリカ ―
かつての盟友であり、彼女の救世に協力した少女
そして、魔女化しても彼女を守り切った「真の騎士」
それは「生まれ変わった世界」の中で全ての記憶を失っても、織莉子を守る騎士として彼女の傍らにいた
キリカの肢体を彩るのは黒を基調にしたナイトドレス
普段はあまりアクセサリーをつけていない彼女ではあるが、その胸元には織莉子から贈られた真珠と黒水晶のネックレスが輝いていた
「じゃあ行こうかキリカ」
「うん・・・」
二つの宝石は連れだって扉の中へと消えた・・・・
「ようこそ織莉子さん!キリカさん!」
「招いてくれて、ありがとう真さん」
「今日は女の姿じゃないんだな真」
「キリカさん酷いな。僕は必要なとき以外には変身しないよ」
「ちぇっ!結構可愛くて好きだったのに・・・」
可愛いと言われ、真の顔が赤く染まる
「そうやってすぐ赤くなるとこも可愛いよ」
キリカが耳元で囁く
「キリカ、からかうのもそれくらいにしないと・・・・あの子に刺されるわよ?」
見ると、いつの間にか赤い髪の少女 ― 佐倉杏子 ― が立っていた
「・・・・アタシの可愛い舎弟を誘惑するなら・・・・ワカッテイルナ?」
ご丁寧に魔法少女形態で槍をキリカに突きつけながら・・・・
キリカと杏子の剣呑な雰囲気は織莉子と真のフォローで収まり、パーティーは無事に始まった
「巴先輩?このボトルは酒じゃないですか?」
「ああ・・・・それは食後酒に持ってきたものよ。みんなで飲みましょうね」
真の手元にあるボトルには「トゥニーポート 10年」と書かれていた
「トゥニーポートとは趣味がいいわ。でも、甘くておいしいけど飲み過ぎには注意よ?気が付いたら腰砕けになっていた、ということもあるから」
「・・・・・そうね」
真は微かに巴マミの表情が翳ったように見えた
「どうしたんですか?巴先輩」
「ううん、なんでもないのよ真さん」
「?」
今回のパーティーは彼、「鉄仮面の魔法少女」宇佐美真の発案だった
マギカ・カルテットの一員となり、その過酷な戦いに身を置くようになり、戦友とも呼べる仲間を持つことの大切さを知った
だからこそ、― 織莉子とキリカ ― 二人の魔法少女探偵と仲良くなりたかった
時刻は午後9時を指していた
「悪りぃ・・・アタシこれで帰るわ。これから内輪のパーティーがあんだ」
「佐倉先輩見送りますよ」
「そんなに気を遣わなくていいぜ」
そんな時、織莉子が紙箱を杏子に差し出した
「料理を詰めておいたわ。後で食べてね」
「そんな悪いって」
「あなたが家族を大切にしているのはわかるわ。たとえあなたが魔法少女だと知らなくても・・・・いや知っていても家族は最大の理解者だから・・・」
「織莉子・・・・・・?」
「引き留めて悪かったわね。家族とのパーティーを楽しんで来てね」
「・・・・お、おう」
スノーコートを羽織り、冬の夜に消えていく彼女を真は見送っていた
「織莉子さんって優しいんですね」
「ええ・・・・彼女には彼女なりに苦しみがある。私ができることはその負担を少しでも減らすこと・・・・」
「織莉子さん・・・・?」
「さぁ私達も戻りましょう」
戻ったら・・・・
「何でキリカは私以外にも笑顔を見せるの!!!!!!!あの宝石のような笑顔は私のモノよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「男が欲しぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
呉キリカと巴マミが意気投合していた・・・
「そりゃね・・・魔法少女として活動していたら、世間一般の幸せが無いって覚悟していたわよ・・・でも・・・でも!!」
獲物を見つけた獣のように、真を抱きしめる
「私も女よ!同級生が・・・・破瓜って意外と痛くないのよねとか、アソコを舐めてもらうのは気持ちいいけど、なかなかイケなくて結構つらいとか話していたら・・・・!」
マミが真を押し倒す
「・・・・男が欲しくなるじゃない?」
野獣と化した巴先輩
まさにこの言葉がしっくりくるような、獣欲に駆られた瞳で彼を見つめる
「巴先輩・・・・僕はですね・・・こういうのはちょっと段階を踏んだ方が・・・・」
「その時は今よ!」
巴マミが真の股間に手をあてる
「ぐへへ・・・嫌がってもここは正直でんがな!」
「ヒィィィィィィィィ!!!!!!」
例のバケツマスク団が見たら、血涙を洪水のように流すような光景がそこに繰り広げられていた
「あ・げ・る」
「あげるって何をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
巴マミの表情が歪む・・・・
その瞬間だった
「オゲェェぇェぇェぇェぇ!!!!!」
およそ乙女が出すべきでない、大音響の嫌ボイスが響く
別の意味でレイプ目になった真が隣を見ると・・・・
織莉子もレイプ目になっていた
「貴方達はなんて愚かなの・・・・・・」
一方、暁美ほむらは一人ポートワインをゆっくりと味わっていた
酔いつぶれた巴マミは暁美ほむらが送り、同じくキリカは織莉子が送ることになった
「最後はとんでもないことになってしまってすいません・・・・・」
「いいのよ。これで彼女、巴マミの孤独が癒されるなら安いものだわ」
「?」
「真さん ジョハリの窓って知ってる?」
「何ですかソレは?」
「心理学用語で、簡単に言うなら自分の理解しているペルソナと他者の見ているペルソナは必ずしも一致しないということよ」
「巴先輩も僕らが見ているのとは、別の面があるってことですか?」
「そうね・・・。少なくても、彼女ほどの戦歴を誇る魔法少女はいない。彼女がどのような人生を歩み、どの様なことを考えてきたか誰も理解できない」
「それなら・・・・僕は巴先輩・・・いやマギカ・カルテットの皆の力になっていきたい!・・・あ、それには織莉子さんもキリカさんもです」
「優しいわね。最愛の伴侶も、最高の協力者も、深淵の秘密も選ばなかったのに、あなたのその気持ちはどの真さんも同じだった」
「僕が複数いるんですか?」
「概念上の話よ・・・・今いる貴方はここしかいない貴方であることは変わらないのだから」
キリカのように全てを「忘れる」こともできず、かつて犯した罪に怯える日々
どの平行世界でも信念を貫く、彼は何にもまして輝いていた
「真さん・・・貴方はこれから多くの苦しみ、悲しみを見つめることになるでしょう」
「魔法少女になるって決めた時から、僕の意思は変わりません」
「それは?」
「この力を人のために使うこと、それが僕の信念です」
「ならその信念を貫きなさい・・・・鉄仮面の魔法少女 宇佐美真」
「はい!織莉子さん」
彼、宇佐美真の因果は縺れその未来は見えない
その因果の中には「最悪の存在」に変ずる未来すらある
かつての自分のように「宇佐美真」を殺すのか?
何度も自分に問いかけた
でも、答えは見つからない
「平行世界」の真を観測して答えを出そうとした
しかし、その世界の中の真も、目の前の真も同じだった
「私は可能性を信じたい」
寒空の下、彼女の宣言を聴く者はいない
ただ・・・・
「キリカのことをどう、ご家族言えば・・・・」
まさかパーティーで泥酔してリバースしたって言えない
新たな悩みの種に暫し、頭を抱える織莉子だった
皆様よい性夜、もとい聖夜を・・・・・
私はこれからバイトですよ・・・・ははは・・・・・
あ、次回からは杏子と真のバトルです