鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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一日に二つのSS投下は結構ハード・・・・


クリスマス特別編 希望の女神 ― 暁美ほむら ―

 

クリスマスの夜 

僕と暁美先輩は見滝原をパトロールしていた

 

~ 真さんこちらの索敵に異常は無いわ ~

 

~ 了解。索敵終了し次第、暁美先輩に合流します ~

 

 

クリスマス

多くの人が幸福を噛みしめる聖夜にも魔獣は現れる

嫉妬

恨み

悲しみ

それらが濃縮し、腐敗し、魔獣となる

 

 

「巴先輩のところは大丈夫かな?」

 

「貴方は彼女を心配できるほど強くなったのかしら?」

 

 

― 暁美ほむらさん ―

 

魔法少女としての能力は高く、マギカ・カルテットでは巴先輩に次いで二番目の実力者といえる

彼女の言葉は時として厳しくて、でもそれは彼女なりの優しさと言えた

 

「まだ夜は長いわ。今は煩わしいことを考えずに休めるうちに休みなさい」

 

彼女が武装を解いた時だ

 

シュゥゥゥゥゥン・・・・・

 

空気が重苦しいものに変わっていく

魔獣の結界だ

そして、周りには僧侶のような姿をした巨人 魔獣が姿を現していた

 

「くっ!」

 

暁美先輩が変身するが、魔獣の拳が彼女を捉えていた

だが、その拳が暁美先輩に触れるよりも早く、僕の拳が魔獣を殴りつけた

魔獣は吹き飛びながら、全身の至るところから青い炎を吹き出しながら消え去った

 

「大丈夫ですか!暁美先輩!」

 

「ありがとう・・・真さん」

 

ビルの谷間の風が僕と暁美先輩を凪いだ

不意に暁美先輩の赤いリボンが解けて飛ばされた

とっさに暁美先輩が手を伸ばすが、あと少しで届かなかった

 

黒曜石のような夜に溶け込む、赤いリボン

 

それを黄色いリボンが掴んだ

 

「巴先輩から能力を借りててよかった」

 

リボンを引き戻し、僕はそれを掴んだ

 

「あっ・・・・・・」

 

― 何・・・・・何かが入ってくる・・・・ ―

 

ドサッ!

 

「真さん!!!!!」

 

消えかかる意識の中、暁美先輩が走ってくるのが見えた

 

 

ピンク色の髪の少女が泣いていた

 

~ 「そんな…あんまりだよ、こんなのってないよ」 ~

 

廃墟になった見滝原に立ち尽くす少女

 

~ 「だから私、魔法少女になれたらそれで願いごとは叶っちゃうんです」 ~

 

笑顔で誰かと話す少女

 

~ 「ほむらちゃん。私ね、あなたと友達になれて嬉しかった。あなたが魔女に襲われた時、間に合って。今でもそれが自慢なの」 ~ 

 

 

「ほむら・・・・暁美先輩!」

 

目を開くと見慣れない天井が見えた

 

「人が心配していたのに、後輩は私と夢の中で戯れているなんてね」

 

「暁美先輩!・・・・・すみません」

 

「佐倉さんが合流してくれたから、今日の狩りは早めに終わったわ。あなたも人間だし、ゆっくりと休んでいきなさい」

 

「ありがとうございます。・・・・・ここは何処ですか?」

 

「真さんの家からかなり離れていたから、私の家に連れてきたわ」

 

暁美先輩の家

なら・・・・このベットはもしかして・・・・・・

 

「申し訳ありません!ベットを貸してもらって!!」

 

「気にすることはないわ。鏡を見てみて」

 

暁美先輩から渡された手鏡を見る

そこには「男」の僕ではなく、「少女」の僕が映っていた

 

「なんらかの要因で変身中に意識を失ったから少女のままに固定されたんでしょう。多分、変身を解いてたら元に戻るわ・・・・それよりも」

 

暁美先輩が近づく

 

「真さん・・・・あなたは見たかしら?」

 

「何を・・・ですか?」

 

「貴方が意識を失ったのは私のリボンを掴んでからよ。だから私には原因を追究する義務があるわ。貴方も原因がわからないなんて気味が悪いでしょ」

 

「そうですね・・・・」

 

 

僕は暁美先輩に「あの夢」のことを話した

数多ある絶望に押しつぶされそうになっても希望を信じる、ピンク髪の少女の夢を

 

「・・・・・そう」

 

暁美先輩の瞳が潤む

 

― いつも鉄面皮の暁美先輩でもこんな顔をするんだ ―

 

「暁美先輩。明日時間はありますか?」

 

 

翌日、宇佐美邸別館

ここ別館マギカ・カルテットの拠点になる前は倉庫として使われていた

そのため、今でも彼の父「宇佐美蓮助」の収集した様々な物品が収蔵されていた

内訳も普通の壺や刀剣類に混じって、「ピーター・キュルテンが人肉料理を食すときに使ったスプーン」や「スウィーニー・トッドの剃刀」といった吐き気を催す邪悪なアーティファクトも陳列されていた。

そして、倉庫の奥に真が求める物があった。

 

「真さん見せたいものって何?」

 

真が準備したコーヒーを口元に運びながら、いつもの鉄面皮で話す暁美先輩

 

「これです」

 

真が覆いを取り外す

 

暗い空

 

何処までも続く砂漠

 

そして、遥か遠くで全てを受け入れるように手を広げる、白いドレスを纏ったピンク髪の女性

 

「まどか・・・・」

 

― あの夢の中であった少女はまどかって呼ばれていた。なら・・・・暁美先輩は何者なんだ? ―

 

「理由を話してくれるかしら?」

 

「ええ。暁美先輩はゴヤの黒い絵って知っていますか?」

 

ゴヤの「黒い絵」

スペイン最高の画家である、ゴヤが描いた人の愚かさや悲しさ、絶望が塗り込められた14枚の壁画

その神話や伝承を元に描かれているが実際は、ゴヤの生きた時代の悪徳や絶望を表現している

 

「ゴヤの黒い絵には最後、15枚目に希望という作品が描かれる予定でした。しかし、ゴヤは後にフランスに亡命して、彼が書いたとされる希望の素描もその死と共に失われました」

 

「つまりはこれはその希望というの?」

 

「いいえ。彼が書いた素描は消えました。一説には彼が死ぬまで仕えていたメイドが持ち出したとも言われていて・・・・これはその持ち出された素描から別の画家が描いた作品と言われています」

 

「貴重な作品だということはわかったわ。ただ自慢したかったの?」

 

「僕はあの夢の中でこの人物に逢ったんです。教えてください、この人物・・・・まどかって誰なんですか?」

 

「・・・・・まどかはにあなたなんて言っていたの?」

 

「私の最高の友達を守ってあげて、と」

 

「長い話になるわ。いい?」

 

 

私はこの街とは別の場所で魔法少女となった

 

「まどか」は私の友達で・・・・魔法少女だった

 

彼女はとても優しかった

 

彼女は「世界の絶望」と戦い勝利した

 

「でも・・・・」

 

彼女が払った代償は大きかった

 

彼女は永遠に「絶望」と戦うことになった

 

死すら与えられずに・・・・

 

両親も友人も彼女のことをだんだんと忘れて・・・・

 

「今じゃ私の付けているリボン・・・・最後に渡された彼女の形見だけが、彼女がこの世界に居た証なの」

 

暁美先輩は悲しげに微笑んだ

 

 

「暁美先輩・・・・もし、よろしければこの絵を差し上げます」

 

「私は絵をもらうために話をしたわけではないわ」

 

「それはわかります。でもこの絵は父や、ましてや僕よりも暁美先輩にこそふさわしいと感じるから・・・・」

 

真は絵を外し、その裏側をほむらに見せた

 

「まどかさん・・・・この絵がその永遠に戦い続ける魔法少女を描いたものなのか、どうかわかりません。でも、ここには古いドイツ語でこう書かれています・・・・」

 

 

この世界に絶望の種がまかれても

 

いつか永遠のその希望が

 

私達を迎えに来るのです

 

永遠の安らぎとともに

 

 

「希望の女神・・・・」

 

「だからこそ、僕はこの絵を託したいのです」

 

「・・・・ありがとう真さん」

 

 

未だに奴らインキュベーターが彼を魔法少女にした意図が判明しない

 

だからもし彼がシステムの障害になるのなら、私が処理しなければならない

 

そう思っていた

 

でも・・・・・

 

「私の最高の友達を守ってあげて、か・・・・」

 

真さんから贈られた絵を見る

 

そこに描かれたのは「救済の女神」まどかの姿

 

「心配させちゃったね・・・まどか」

 

彼女一人の部屋にほむらの慟哭が響いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、いよいよ明日はクリスマス特別編のトリ「美国織莉子編」
完成できるかな・・・・ハハッ・・・

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