「救済者」のアジトである「アンゼリカ・ベアーズ」
その地上階にある寂れた喫茶店
今、この場所にはこの街にいる魔法少女全員が集まっていた
あすなろ市には戦える魔法少女はいない
つまりはここにいるのは「救済者」の魔法少女達に他ならないはずだ
「さて、この場に集まってもらったのは他でもない。いよいよ私達の計画も大詰めを迎えつつあるわ」
真琴がテーブルを操作すると、空中に幾つもの映像が浮かぶ
その中には強制的に休眠状態にされて救済者の手で「夢の牢獄」に繋がれているはずの「プレイアデス聖団」の皆と「千歳ゆま」、そして・・・・
「真さん・・・・」
巴マミが呟く
魔法少女に変わることのできる少年である宇佐美真
魂をソウルジェムから解き放ち、魔法少女から少女に変わることを選んだ彼女とて、自分のかつての仲間が敵の手に堕ちた姿を見るのは忍びなかった
しかし、映像の中の皆は仲良く楽しくバカンスを楽しんでいた
生きていた頃と変わらない姿
「あらあら、明日はデッドラインを超えるってんで乱交か?あの真ってやつもヤるね」
仲間の一人である優希紗々がおどけた表情で話す
「・・・・・・」
マミが声無く紗々を睨む
紗々の能力は「洗脳」
偽りの記憶を埋め込むことも、場合によっては「魔獣」ですら洗脳して手駒にすることも可能とする
かなり強力な魔法の使い手であるが、正直彼女の性格は好きに慣れない
「そうそう怒るなって!ただの大人のジョークを聞かせただけだよ。それともムッツリかい?」
「私はあくまで真琴さんの主義に共感しただけよ。貴方のような人物に忠誠は誓っていないわ」
マミが毅然と言い放つ
彼女のような言い方なんて到底許せない
しかし仲間である以上は衝突はするべきではない
でなければ・・・・・
「紗々もそれだけにしておきなさい。貴方の魔法は強力だけど戦闘力はそうでもないわ。貴方の姿を彼らがみれば確実に潰されるわよ?」
「はいはいわかりましたよ」
「彼ら」は知らない
すでに「救済者」に彼らの全ての計画が筒抜けであったことを
「彼らの魔力もそして魔法を使う方法は真とカンナが伝授している。これなら問題なく魂の欠片が生成できるわ」
真琴が愛華を見る
「問題ないかしら?」
「元々の計画じゃ、少しずつ魔力を抜いて魔法少女に覚醒する前に終わる予定だったけど、彼女達が魔法少女に目覚めてくれたおかげで大分計画が早まったよ」
「ちょっと待って!」
巴マミが声を出す
彼女達の計画の概要は既に伝えられてはいる
でも、聡明な彼女でも彼女たちの話にはついていけない
「この結界はそもそも何のためにあるの・・・?」
巴マミが「救済者」に合流して以来、この巨大結界の作用は知っている
そして彼女の行おうとする救済も
だが、プレアデス聖団の覚醒と計画の完了がどう繋がるのかはよくわからない
「そうね・・・巴マミさんはまだよくわからないわよね・・・いいわ教えてあげるわ」
「あすなろ市を覆う結界の役割はこの街を外部からの干渉を受けない状態にするためにあるわ。そして、内部で発生する瘴気はイーブルナッツで吸い込ませることで魔獣の手からこの街を守っている。それはわかって?」
マミが無言で頷く
「この世界には呪いがある。例え魔法少女が居なくなっても魔獣は発生してしまう。でも、瘴気の大本を消してしまうこのシステムがあれば人は呪いに怯えることはなくなる。この結界が他の街でも起動すれば、それこそインキュベーターの甘言に騙されてしまう少女もいなくなるわ。人類は救われる・・・・」
グリーフシードの模造品である「イーヴル・ナッツ」
その効果は瘴気を吸い取る事
無論、人間を害しないわけではない
それに取り込まれれば「魔女モドキ」になってしまう
だが、魔女モドキになっても強い一撃を加えれば、イーヴル・ナッツは排除されるし、何よりも魔女モドキになった人間もかなり衰弱しているが死ぬことはない
魔女モドキの討伐にも、魔法少女は必要ない
魔力を付与した武器を与えた「疑似魔法少女」で事足りるのだ
「でも、魂の欠片は・・・・」
マミが真の父親である蓮助から渡された白い宝石が嵌められた指輪
あれからは強い魔力は感じるが、しかしそれだけだったはず
「蓮助さんも所詮は部外者ということよ。いい?魔力と魔法は同じものなのよ。つまりはアレはただの魔力を込めた電池ではない。あれには魔法少女自身の固有魔法が込められている・・・ここまで言えばわかるでしょ?」
マミは全てを知った
この街を覆う結界を生み出しているのはプレアデス聖団の魔法
それを魂の欠片に込めることができれば、いや量産できればこのような結界をどこでも生成できる
文字通り、この世界からインキュベーターを駆逐できるのだ
~ でも・・・ ~
巴マミに一つの疑問が浮かぶ
なぜ真琴は「魂の欠片」のことを知っていたのか?
おまけに蓮助さんの知らない使い方も熟知していたのか?
「マミさん、あなたの疑問に答えてあげるわ・・・・」
そう言うと皮で装丁された分厚い本を彼女の目の前においた
「これには一人の少女が残した研究が書かれているわ。彼女の名前は・・・わかるよね?」
もう既に答えは知っていた
少女の名前は・・・
「宇佐美命さんね?」
「正解」
真琴は巴マミに微笑みかけた
もう手品の正体もわかった
そして「魔法少女から少女に戻る方法も・・・
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面白いんだけど、少しパワーダウンしてるな・・・