鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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キーボートにコーヒーこぼして買い直し
おかげで前回更新できんかった・・・・・


太陽と月と・・・・・・・

ザア・・・ザァァァァ・・・・

 

永遠に続くかのように思える押しては返す波

青い海と見事なコントラストを見せる白い砂浜

真は何処までも続く水平線を見つめた

 

 

プレアデス聖団の皆が偽りの世界から覚醒し、そして同じように「真」や「ゆま」そして「カンナ」が記憶を取り戻した

「偽り」の記憶とはいえ、それは対象にとっては現実であり理想の世界だった

故に「後はこの世界からの脱出を行えばいい」とはなかなかいかなかった

誰しもが自分の「夢」を大切にしてしまうからだ

無理矢理、夢を否定させることはできない

まず、この「プレイアデス聖団」もそして「美国ゆま」も「魔法少女」ではあるが、しかし彼女達は魔法少女としての「実戦」を全く経験してはいない

確かに浅海サキや御崎海香や牧カオルなどは初回で魔法少女に変身して彼女達を襲った「化物」を撃破している

初めて契約した魔法少女は変身することはできても戦うことすらできない

彼女達が敵を撃破できたのはあくまで偶然の産物

魔法少女としての基本である「魔力の使い方」も「結界の張り方」も知らない

そんな状態での脱出は危険すぎる

当然のことだが、この夢の牢獄から脱出するということは彼女達を拉致した敵と正面から戦うことを意味する

この世界から脱出してもまた敵の手に落ちれば元の木阿弥だ

そのため、真やカンナ、そして真の中の「美樹さやかの記憶」が彼女達に訓練を施した

正体の知れない敵 ― カンナの話では「救済者」と名乗っていた ― は十人もいない数人規模の組織であることは皆の記憶の断片を繋いで判明している

全員がそれぞれ別の方向で逃げれば、少なくともこの中の数人は敵の手から逃げおおせるはずだ

本当は皆が全員脱出できればいい

でも、敵戦闘員の練度やそのトリッキーな魔法を見ている以上恐らくは不可能だろう

つまりは皆、覚悟しなければならないのだ

「仲間」を見捨てる覚悟を・・・・・

真もそんな未来は選ばない

彼自身もそんなことは嫌だった

だから、彼は一人でも「戦う」

皆を助ける為にだ

 

 

「此処にいたのかい?」

 

真が振り向くと、白いサマーパーカーとスカイブルーのショートパンツを身に着けたサキが立っていた

 

「ちょっと海を見ていて・・・・」

 

彼が言葉少なげに答える

真は覚悟の大切さを知っている

でも、彼自身は悩んでいた

彼女達は本当に仲間を見捨てることができるのか、と

計画の根幹は覚醒後は真がしんがりを務める

プレアデス聖団の皆とゆまはカンナが護衛することに決まった

戦闘に不慣れな彼女達は脱走に集中すればいい

 

ガサ・・・・

 

「隣いいかい?」

 

「ええ。」

 

この目の前に広がる世界は幻

この海も砂浜も海香とカンナが作り出した仮初の空間だ

だから、この海の向こうには何もないし、陽気に歌うウミネコも生きてはいない

彼らがこうやって束の間の「バカンス」を楽しんでいるのは理由がある

明日この「夢の牢獄」を脱出する

とはいっても体感時間なので正確ではないのだが、便宜上はそう決めている

こうして皆が一緒にいられるのも今夜限り

明日は場合によっては数人の脱落者を出してしまうだろう

だからこそ、サキがこうしてバカンスを企画した

 

「真君には感謝してもしきれないよ。キミ達が私達を見つけ出してくれたから、私達はここまで来ることができたんだ」

 

「・・・・・僕を・・恨まないんですかサキさんは?」

 

サキは真からの問いかけに首を横に振る

 

「確かにキミと杏子さんがあの日に自分が魔法少女であることを明かしたおかげで、劇団は休止状態になってしまった・・・それは間違いようのない事実だ。でもそれは起こるべくして起きたことだったと思うよ。現に私は私達に何も教えずに劇団を辞めたミチルから、魔法少女の事やなぜ辞めたのかあらましを詳しく聞くことができたからね。それに、魔法少女になるということの意味を知らなかったら、きっと後で後悔したと思う・・・」

 

「サキさん・・・・」

 

サキは目を伏せると、足元のさらさらとした砂浜の砂を掴んだ

その白い指の隙間からキラキラとした砂が零れ落ちていく

 

「例え、私達が超常的な力を得ていても所詮は人間の範疇から逸脱はしていない。救えない命ももちろんあるし、過ぎ去ってしまった時間はどうしても戻らない・・・・。でも、私達は自分の意味を知らない、知ることもしない飼いならされた家畜じゃない。自分自身で未来や結末を選択する自由がある・・・なら、私は前に進むよ。自分の時間を生きたいからね」

 

サキが微笑む

その笑顔は母親の笑顔のように真を安心させた

誰かが隣に寄り添う、それだけでも彼は救われた気がした

 

「私は、いや私達はキミの事を信じているよ。例え、敵の手に再び落ちることになっても、仲間の内一人でも多く見滝原へ辿りつければ・・・僕らの勝ちさ」

 

「覚悟」は「諦め」とは違う

栄光の未来に進む為の意思、そのものだ

 

「さて真くんも皆の所に戻ろうか。みんながバーベキューを準備しているんだ」

 

サキが真に手を差し伸べる

 

「はい」

 

真は彼女の手を掴んだ

未来に破滅なんてない

誰も未来なんてわからないのだ

だからこそ、前を進む「覚悟」が必要となる 




何気にキカイダーが面白そうだ・・・・

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