鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下


金魚鉢

「いくよ・・・・」

 

「ああ、頼むよ」

 

シュルシュル

 

ニコの固有魔法である「コネクト」

その要である触腕が立花の身体に差し込まれていく

立花は静かに目を瞑るが、ニコが言った通りに痛みはなかった

強いて言うならば、今ニコと「繋がっている」場所に感覚が無いことくらいか

 

シュルシュル・・・

 

役目を終えたニコの触腕が再び彼女の元に戻っていく

 

「終わったよ立花さん。ごめんね、貴方の記憶を探るようなことをして」

 

「いいさ、子供のワガママに付き合うのは大人の義務だよ」

 

そう言うと、立花はニコにいつものような明るい笑顔を見せた

 

 

「しっかし、何度見ても便利な能力だなそれ!」

 

杏子がニコの背中から生えた触腕を見ながら感嘆の声をあげる

ニコの固有魔法である「コネクト」

これは記憶を覗くのみに限らず、魔法少女一人一人異なる固有魔法を「強引」に繋げることも可能だ

使い方によっては、対象とニコとを直接繋げて相手にニコの魔力を流し込むことで相手の固有魔法に一時的なブーストをかけることもできる

攻撃手段になり得ないが、使い方次第では戦況を変えることもできるかなりトリッキーな魔法だ

幻惑魔法という、戦闘に特化した杏子には考えられないような攻撃や見たことも無いような合体魔法すらも作れるだろう

色眼鏡で彼女を見ず、素直に称賛する彼女の姿にニコはかつて自分の手で行った凶行を思い出させた

プレイアデス聖団に所属する少女である神那ニコと名乗る「聖カンナ」と「御崎海香」

この二人の固有魔法を強引に繋げて作り出したグリーフシードの紛い物「イーヴル・ナッツ」

そしてプレイアデス聖団が魔女化を抑えるために肉体と分離させて、永久保存していた「孵化寸前」のソウルジェムをコネクトで強引に繋げて作り出した巨大魔女「ヒュアデスの暁」

全て成し遂げたのは全てを繋げる「コネクト」があったからだ

だからこそ、この魔法を使う都度に心が引き裂かれそうになる

いくら自分を擁護しようとしても、彼女が罪なき魔法少女を手にかけた事実は変わらない

死すら彼女の贖罪になることはなかったのだ・・・・

 

「?!」

 

ニコが肩に置かれた暖かな感触を感じて振り向く

そこには彼女と同じ「罪人」である織莉子が立っていた

 

「ニコさん疲れたでしょ?今、紅茶の準備をしてくるからゆっくりと休んでいて・・・」

 

ふと見ると、別館の豪華なテーブルの上には品よく並べられたイングリッシュスコーンやティーサンドイッチが置かれていた

 

「これは・・・・・?」

 

「立花さんが用意してくれたのよ」

 

「店の余った食材で作った物だから遠慮しなくていいさ」

 

「あの・・・お店の方は・・?」

 

ユウリが恐る恐る立花に聞く

彼女は「和紗ミチル」の弟子であった時に何度か立花の店である「ビストロ・タチバナ」を訪れていた

あの無人島からニコの手助けで脱出した後、もっとも気になったのは家族や友人たちの安否だった

本当は早く連絡したかったが、通常の通信手段である電話やメールで連絡することはニコから止められていた

彼女達は脱走者であり、彼女達三人は敵からの再襲来を警戒していたから当然ではあるが・・・・

 

「その・・・何と言うか・・ビストロ・タチバナはちゃんと営業しているさ。やっぱり僕は根っからの料理人なんだろうな・・・・料理をしていると落ち着くんだ」

 

「ごめんなさい・・・もっと早く連絡できれば・・」

 

ユウリが涙ぐむ

電話やメールでの連絡ができない以上、安否を知らせる方法がなかった

運良く、立花と連絡が取れたのは織莉子が立花と連絡する手段を持っていたからだ

新聞の広告欄を使った暗号なんてアイディアはニコやユウリ、あいりの誰も思いつかなかった

そのおかげでこうして立花と再び出会うことができたのだ

 

「ニコちゃんの考えもわかるし、僕もキミ達を責めているわけじゃないさ。それにこうしてキミ達に出会えた」

 

立花がユウリの手を握る

 

「泣いていると美味しい料理も美味しくないよ」

 

「ありがとう立花さん」

 

ユウリも立花もテーブルに座り、ささやかな茶会が始まった

 

 

立花の用意したサンドイッチはとても余り物で作ったように見えない出来で皆が満足した

その席で織莉子は今現在、あすなろ市で起きている事態を説明する

案の定、あの大結界は魔力を持たない人間には反応していないようだ

ただ、あすなろ市では失踪した少女達が多くいることから、街中でも警察のパトロールの姿がが頻繁にみられているそうだ

 

「ウチにもポスターを張りに警察が来てね。何でも娘が失踪しているそうだ・・・・」

 

恐らく、その警察官の娘 ― 「チサト」と言うらしい ― も魔法少女だったのだろう

今、あすなろ市にはそうした家族を唐突に失った家族や友人たちの嘆きが満ちている

だからこそ、立花は少しでも自分にできることをするために見滝原に来たのだ

家族を失う悲しみは立花には痛いほどわかっているからだ

でも何ができるのだろうか?

彼には便利な魔法も無ければ、彼女達を助けられるような権力もない

でも・・・こうして皆を元気づけられる

彼は料理と天職である料理人という職業に感謝した




ホラー+ロボって「ベターマン」という作品が過去にあったけど、あれってガオガイガーと関係があったからヒットしたっていうし、「M3ソノ黒キ鋼」はどう考えてもヒットしないような・・・

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