鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

309 / 322
投下


裁きの庭

― インキュベーター ―

 

自らを「キュウベェ」と名乗る、この人外の生命体は特に人間に危害を与えるような存在には見えない

彼らは人類という種に最大限の敬意を払っているとは言うが、しかしその実は人類を家畜とも思っていないのだ

宇宙の寿命を延ばす為に、幼気な少女達を使い潰す

それが奴らの存在意義であり目的だ

もっとも、彼らがある「一人の少女の願い」を叶えた為に、その「宇宙」が改変された事実を知っていない

まさに「家畜」にしてやられたというわけだ

 

 

『参ったね・・・・・』

 

キュウベェを囲む少女たち

皆、いつもと同じ魔法少女形態をとっているがキュウベェに対する敵意を隠そうともしていない

「彼」が魔法少女達に殺されることはよくある事だ

キュウベェは極めて合理的な生命体だ

そのことは魔法少女の契約の際に、いくつかの必要な説明をしない

奴らは「説明を省略しただけ」と何の良心の欠片もなく話す

大概の魔法少女は怒りに任せてキュウベェを殺すが、しかし彼らに物理的な攻撃は意味はない

彼らは一つの意識を全体で共有している

例え、目の前の個体を殺してもすぐさま記憶を引き継いだ別の個体が現れるのだ

しかし、「彼」が対面している魔法少女達はそのような短絡的な解決はしない

情報を得たいのは彼らとて同じだからだ

 

「テメェ!さっきからいい気になって茶化してくれたな!!!!!!!」

 

杏子が朱槍を構える

しかし、織莉子がやんわりと止める

 

「インキュベーターの特性を考えなさい佐倉さん。今ここで怒りに任せた行動をとってもそれこそ相手の思う壺よ」

 

「こんなヤツの肩を持つのかよ?」

 

「佐倉さん、貴方の目の前だけにキュウベェが現れた理由をわかって?」

 

「仲間割れを狙ったんだろ!マミの時みたいに!!」

 

『勘違いしないでくれるかな。ボクは何も共倒れを狙ってそんなことを言ったわけじゃないよ』

 

「ええそうね。目的は私達から情報を引き出す為でしょう?」

 

『やれやれ。そこまで読み取るなんて、やっぱり美国織莉子はボクらにとって厄介な存在だね』

 

「貴方達が私をここまでにしたのよ?」

 

そう言うと、織莉子がキュウベェを見る

その瞳にあるのは「怒り」

政治家の娘として、謂れのない誹謗中傷を受けたことなど何度もある

自分がいたぶられるのはまだ許せる

しかし、仲間が軽くみられるこどだけは許すことはできない

 

「まずキュウベェはニコとゆうり、あいりのことはあまり詳しくは知らない。第二に私とキリカの関係を知っているわ。お互い勝手に情報をばらさないし情報の提供もしない。なら、マミのことで傷ついた佐倉さんを標的にした。彼女なら何かしらの情報をばらす可能性が高い。何処か間違いがあるかしら?」

 

『訂正するほどのことはないね』

 

「さてと、貴方には二つの道がある。一つはおとなしく全てを話すか、それともニコさんに洗いざらい情報を抜き出されてからキリカとあいりさんに〆られ、最後にユウリさんの手でじっくりと料理されるかだけよ」

 

「おいおい!あたしがズタズタにする分はあるんだな?」

 

杏子が槍を構える

 

『あの結界がボクらにとって厄介なのは事実さ。実際、何度も端末を送って調べようとしてもその都度、直ぐにリンクが切れてしまうから良くわからないんだ』

 

「つまりはインキュベーターでもあの結界の影響を受けるって事かしら?」

 

『いや、結界で音信不通になったわけじゃないんだ。ボクらにわかったことはあすなろ市ではソウルジェムを持たない魔法少女がいるということ。そしてボクらを専門に攻撃する生命体がいることだけさ」

 

「ソウルジェムが無い魔法少女?」

 

魔法少女は契約の際にソウルジェムを得る

これは彼女達の魔力の根源であると同時に、抜き出された彼女達の魂でもある

その為魔法少女であることはソウルジェムを持っているということと同義だ

 

『姿形は魔法少女そのものなんだけど、彼女たちからソウルジェムの波動を感じないんだ。実際、魔法を使っている以上は魔法少女であることは間違いないんだけど・・・』

 

「貴方達はその少女達と契約した覚えはあるのか?」

 

『はっきり言って、全てのクラスタにおいてその記録は残っていない』

 

「つまりは作られた魔法少女ということ・・・・?」

 

『それも分からない。だから僕らはキミ達から有用な情報を得る為にこうして話し合いに応じているんじゃないかい?』

 

「一理あるわね。ところでさっきのインキュベーターを狩る生命体というのは何かしら?」

 

『織莉子、君には言葉で説明するよりも実際に見てもらった方が早いだろうね』

 

キュウベェの言葉と同時に、その場に白と黒の良く似た生き物が現れる

インキュベーターに酷似した姿をしているが、全体的に色は黒を基調としていて、特徴的なリングのついた触手は耳からではなく首元から生えていた

 

「?!何だよコイツ!!!」

 

杏子が咄嗟に槍を構える

 

『安心してくれていいよ。これはただの立体映像さ・・・もっともこの映像を送ってきた個体は攻撃を受けてすぐにリンクが切られてしまったのだけれど』

 

 

「なぁ、織莉子。本当にアイツを逃がしてよかったのか?」

 

「拷問にかけても意味はないわ。実際、復讐する必要なんてないし」

 

闇に消えるキュウベェを見ながら織莉子が呟く

人工的な魔法少女

キュウベェに酷似した生命体

まるで魔法少女のシステムを模倣したかのようだ

あの箱庭の中の情報は彼女のアカシックレコードでも検索はできなかった

確実に言えるのは、全ては箱庭の中にあるということだけ・・・・

 

「あの人に頼むしかない・・・・・」

 

 

 

 

 

 




BD鑑賞中、クララドールのフィギュマが販売にならないかな・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。