ニコと織莉子の魔法で現出した敵の首魁「ウサミマコト」
金色の長い髪とエメラルドのような緑色の瞳
そして気品にあふれた紫のドレス
全く持って、今まで会ったことのない魔法少女だ
当然のことながら、恨みを買った覚えもない
確かに杏子は口よりも手が先に出るような人間ではある
だが、無意味な暴力をふるったことは一度もない
彼女が叩き潰すにはそれなりの理由があるし、それを覚えていないことなどないのだ
でも・・・・
でもなぜか目の前の少女には「見覚え」がある
どこで・・・・
杏子が自らの記憶の扉を開くが、あんな金髪で紫のドレスなんてド派手な格好をした魔法少女なんて忘れようとしたって忘れるはずがない
忘れることがないということは見たことが無いのと同じ
~ ・・・・・・ ~
杏子が傍らのキリカをそっと見る
彼女もまた、杏子と同じようにどこか腑に落ちない顔をしていた
~ キリカの奴もか・・・・ ~
織莉子とキリカは本来はマギカ・カルテットに所属していない魔法少女だ
だから、この二人は目の前の「ウサミマコト」の姿を見て腑に落ちない顏をしているということは、少なくとも何らかのカタチで三人が同時に「それ」を見ていることになる
ということは、真が拉致された後で巴マミが敵に寝返る前となる
「なぁ織莉子・・・・この映像の人物の髪の色って変えられるか?」
「それは問題ないわ佐倉さん。でもどういう感じの髪色にするの?」
「そうだな・・・・・髪型はそのままで色を金髪から明るい灰色にしてみてくれないか」
「お安いことよ」
見る間に映像が変わる
「ウサミマコト」の輝くような金色の髪が脱色し、見る間に灰色へと塗り替わる
杏子がその姿を一目見た瞬間だった
「コイツ!!!!!!!」
間違えることなんてない
そんなこと・・・絶対にあるわけがないのだ
真が父親に贈られた、亡き母の形見である「鳴らないオルゴール」に封印された「記憶」
それは彼女が命を燃やしてまで救い出した息子である「真」が、もし「魔法」と「魔法少女」に関わるようなことがあった時に助言を与えるものだった
記憶に残された一人の人物に、「ウサミマコト」は相似している
そう・・・
「真のお袋そっくりだ!!!!!」
生まれたばかりの真の命を救う為に、魔力を使い果たして死んだ彼の母親にして「魔法少女」として戦い続けた「宇佐美命」の姿にそっくりだった
「へ?マコトのお袋っていったい誰」
あいりが訝しげに杏子を見る
「真ってのはアタシたちの仲間で、拉致された魔法少女の一人さ。真は少し変わっていて・・・・」
杏子があいりに説明しようとするが、織莉子が彼女を静止する
「下手に口で説明するよりも、直接見てもらった方が早いわ」
そう言うや否や、その場にもう一人の人物が姿を現す
灰色の短い髪
贅肉の少ないスレンダーな肢体
「宇佐美真」がその場に現れた
「え・・・・と、男の子だよね・・?」
ユウリが織莉子に問いかける
「ええ。そうよ・・・・今は」
映像の中でブラックオパールのような宝石を真が翳した
「アレって・・・ソウルジェム!」
「ええ。彼はイレギュラーな魔法少女になれる少年なのよ」
その場には三目の鉄仮面を付けた「魔法少女」としての宇佐美真が立っていた
「そんなことって・・・・」
ニコが驚くのも無理もない
通常、魔法少女になれるのは文字通り少女だけだ
でもそれは少女の方がなり易いというだけであり、適正があれば理論上は少年でも「魔法少女」となることが可能だ
もっとも、なれる可能性は低いのだが・・・
「インキュベーターのシステムでは魔法少女になれるのは少女だけとは限らない。無論、少年も含まれるわ」
そう言うと織莉子は手元に金色の円盤を引き寄せた
「彼の母親は魔法少女だった。彼女は生まれたばかりの真さんの命を繋ぐために魔力を使い切った。彼が魔法少女になれたのはそれが影響しているのかもしれないわね」
「その母親の名前が・・・宇佐美命さんよ」
真の映像が崩れ、そこに一人の少女が立っていた
灰色の艶やかな長髪
黒いフレアスカートと真鍮製のバルブや歯車のあしらわれたコルセット
そしてその手にはクラシカルな手回し式のオルゴール
髪の色や瞳の色など細かな違いはあるが、間違いなく「ウサミマコト」に酷似していた
「つまりは死んでいると?」
「ええ、それは間違いわニコさん。真さんの父親である蓮助さんもその場にいたもの」
「でも俄かに信じられないな。髪の色を変えるのは魔力を使わなくてもできるし、瞳もカラーコンタクトで済む」
「私は円環の理から生還できた魔法少女なんて知らない。それに生還できたとして、なぜ真さんを拉致する必要があるの?」
「確かに円環の理は絶対だ。あれから逃れられた魔法少女なんていない。恐らくはただの空似だろう」
「でも調べる必要はあるわね。杏子さん、頼めるかしら?」
「へ?」
「私はお父様から命さんのことを聞いてみるけど、杏子さんは蓮助さんと話してみて、命さんの家系を少し調べてもらえないかしら?」
「なんかこそこそ調べまわっているようで嫌だけどな。わかったよ」
杏子は頷いた
偽街の子供達
映画館でもらった魔女図鑑は持っているけど、BDのブックレットの説明はなかなか凝っている
グッスマでフィギュア化されないかな・・・