鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下


見えない悪意

― 魔獣 ―

 

人が生きる上でついて回る暗い感情が瘴気となり、それが結晶化し人型を為したもの

罪なき人々を襲い、人の感情を餌とする人外の存在

そして・・・・インキュベーターと契約した魔法少女が自らの生を繋ぐために狩るべき「獲物」だ

 

 

カオルがカンナに話した「化け物」

それはあらゆる点でカンナの知っている情報や常識に全く当てはまらないモノだった

魔獣というのは、意図的に発生させるものではなく、ある種の自然現象といっていい

言い換えるなら雷と同じ

空中の電子の値で雷の発生は予想できるが、その発生を完全にコントロールできるわけではない

発生した雷に撃たれて死ぬ人間も予想なんてできない

人の妬みや苦しみ、怒り、悲しみが瘴気となり、そして瘴気が魔獣となる

そのプロセスに人は介在しない

だからこそ「おかしい」のだ

 

― 化け物を倒したらそれから人間が出てきた ―

 

最初はカンナはカオルが嘘をついているとも思ったが、直情的な彼女がそれをできるはずがない

おまけに彼女が嘘をつくメリットがないのだ

それに彼女はカンナとニコと一緒に実際の魔獣を見ている

何らかの嘘を吐くにしてもそれをベースにするはず

常識としてありえない「化け物」の存在を作る意味がない

おまけに「魔獣」は「アメリカ」でも「あすなろ市」でもその姿に全く変化はない

どれもこれも、表情のおぼつかない長衣を纏った白い巨人のような姿をしている

でも、カオルが襲われたと話す「化け物」は棘が無数に生えた「サッカーボール」のような姿をしていたという

あまりにも「個性的」だ

 

~ もしかしたら・・・・ ~

 

カンナが意識の海に潜る

それは「カンナ」が「ニコ」と別れる前の記憶

二人っきりのベットで話してくれた「悲劇」

 

「友達」を事故といえ、殺してしまった少女

彼女は自らの罪を忘れずに生きてきた

でもそれは「両親」を悲しませる結果になっていた

そこで悪魔と「契約」して、事故のことを何も知らない「自分」を得た

それは「幸せ」に生きる自分を見て楽しむ為じゃない

自分の得られない幸せや、大切な「家族」を彼女に託すためだった・・・・

 

あり得ない「世界」でのあり得ない「物語」

私はそれを一笑したが

でももし

もしもだが、そのあり得ない世界での「化け物」が実在したとしたら?

人の悪感情が結晶した醜い化け物「魔女」が・・・

だとしたら!

 

「カオル!もっと・・・・!」

 

「今度はアンタの番だ。情報の基本はギブアンドテイクだろ?」

 

カオルが不敵に笑う

魔法少女としての経験は確かにカンナの方が「勝っている」

でも「情報戦」では戦闘経験よりも相手の心理を読む「駆け引き」が必要になる

巧みにブラフを使い、敵のカードを引き出す

ポーカーでは基本の戦術だが、それはサッカーとて同じ

フェイントを使い、敵の選手を誘導するテクニック

一秒にも満たない刹那の刻に、相手の心理を読みカードをセットして勝負する

これはただ幾多の戦いを経験しただけでは得られない

曲がりなりにもカンナはサッカー部の「エース」だ

その手の経験はカンナ以上

正にカンナはカオルに釣られたも同然だ

 

「私達が両親を目覚めさせるために旅をしていたことは知っているよね?」

 

「ああ」

 

カオルはカンナに返事をしながら、その視線を見る

人間というのは実は単純だ

嘘を吐くときに大なり小なり何らかのサインを出してしまう

PKなんかはまさに、そういったサインを的確に把握する技能が求められる

 

「結局、そんな魔法少女は見つからず途方に暮れていたら私の目の前にアイツが現れた」

 

「アイツ?」

 

「そう、マコトと名乗ったアイツは・・・・」

 

カオルがカンナの言葉を遮る

 

「ソイツはマコトと名乗ったのか?本当に?」

 

「何を必死なのかわからないけど、相手はウサミマコトと名乗ったよ」

 

― 宇佐美真 ―

 

彼女を含め、プレアデス聖団の魔法少女たちを目覚めさせた少年

その名を敵の内通者から聞いた

 

「・・・・ソイツはどういう姿をしていたんだ?」

 

「金髪で紫色のドレスを着ていた・・・・アンタが誰の事を言っているかわからないけど」

 

「そうか・・・・・」

 

カオルは静かに呟いた

 

「アイツが両親の覚醒と引き換えに出した条件は私にシュミクラを作る事と、計画の手伝いをすることだった」

 

「シュミクラって?」

 

「意思を持たない肉人形。私の魔法を使えば作るのは簡単だったよ・・・・・」

 

「そんなことって・・・」

 

「魔法少女は条理を覆す存在。それはわかるよね」

 

カオルが頷く

 

「私はそのシュミクラで二人の少女をおびき寄せた」

 

「その少女の名前は?」

 

「ユウリとあいり、それとミチルとほむら、織莉子の四人。それに何の意味があるかなんて知らない。後はそのまま楽園に繋がれた」

 

この夢の牢獄が楽園?

とんだ皮肉だ

そうカオルが思った時だ

 

「私が作ったシュミクラは二人サトミという子とミライって子・・・・・」

 

「おい・・・それは本当か!」

 

カオルにも薄らと全体像が浮かぶつつあった

 




キルラキル
復活のマコ番長!!!
いや~見たいものが山盛りに詰まった回だな本当

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