鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

280 / 322
時間ができたので投下します




 

― 戦い ―

 

雌や縄張りを賭けた命がけの闘争

それは人が、いや生き物全ての「本質」といえる

野生に生きる動物は自分のテリトリーに入ってくるものに決して容赦しない

水の中を優雅に泳ぐ魚とて同じだ

テリトリーとは貴重な餌場であると同時に自分の居場所であり、他者にそこから追い出されることは自然界では死を意味する

だからこそ命を賭けて戦うのだ

明日を生きる為に

戦いは何も動物界のみで起きるわけではない

植物界でも同じこと

寄生樹は大樹に寄生しその幹から栄養を奪い、鳥に運ばれて異郷の地に運ばれた植物の種も日当たりのいい土地を得る為に枝を広く大きく伸ばして他の植物達を腐らせる

そう、この世界は「闘争」でできている

それは真理だ

理不尽を正す為

復讐の為

他者の利益を奪う為

自分よりも優れた人間を貶める為

人間だけだ

「闘争」を生き物の性として肯定せず、言葉を弄してあれこれと理由を探す

戦いに必要なのは自分の命を賭ける、それだけだ

純粋に研ぎ澄まされた殺意こそ武器

そこに技術はいらない

格闘技や軍隊の戦闘訓練の意味

それは訓練や組手を通して、人を殴ること撃つこと刺すことについて抵抗を無くすことにある

防御手段や刀やナイフの危険域から身を守る手段はあくまで小手先の技だ

自分の敵は滅殺する

ただそれだけ考える

後はそれに身を委ねるだけでいい

戦いに「ルール」はない

 

 

黒い流れのなか、カンナの身体を水色の光を包み込む

一瞬にして彼女の服は光の粒子に変わる

一糸まとわぬ引き締まった四肢が露わになるが、すぐさま水色の飛行服が彼女の身体に装着された

そして臀部を強調するかのようにカーキ色のストラップが彼女の身体を締め付ける

 

ポフッ!

 

彼女のレモン色の髪の上に古い時代のスカルキャップが乗り変身は完成した

すでに彼女は「覚悟」を終えていた

戦いは「不可避」

相手がわざわざこんな舞台まで準備している

これは相手も「覚悟」を決めているという、なによりの証拠だ

ならば「そうする」

もとより閉じた「この世界」に都合のいい逃げ場は存在しない

しかし、予想通りとするなら相手は誰だ?

「救済者」はこんなことはしない

ならば・・・・

 

~ そんなわけがない ~

 

カンナは頭を振ってその考えを追い出した

彼女は今までお世辞にも品行方正とは言い難い振る舞いをしてきた

同じ魔法少女からはかなり恨まれているだろう

でも彼女はちゃんとスジを通した

幼気な魔法少女を「自爆」に変わる新たなテロ兵器にしようとした組織をまとめて潰したこともある

正義とかそんな甘っちょろい理由ではない

「命」を対価として行う「契約」を、あのテロ組織は神の為であると囁きながらその実は家族を人質にして結ばせる

卑劣だ

だから「潰した」

今やそのテロ組織も信仰していた宗教も無い

魔法少女にされようとした少女が洗脳を解かれた途端に願ったのだ

この世界から「その宗教」を消し去るように

魔法少女の秘密と「兵器」にされそうになった少女達を救った彼女はもういない

彼女の力ではたった一度の願いを叶えるのがやっと

力を使い果たした魔法少女の結末はどれも同じだった

ニコは不意に自分の身体が停止していることに気が付いた

見ると心地よい黒い流れは既に止まっていた

 

「よっと・・・!」

 

彼女は身を起し地面を蹴る

相変わらず足元は見えないが底に何らかの足場があるのだろう

問題なく彼女は足を支えることができた

 

― 歩くこと ―

 

それは人間の持つ大きなアドバンテージの一つだ

地面を踏みつけ足場を作る、それは二本の脚だけでその身体を支えることを意味する

そして空いたその手に「武器」を握ることができる

 

パァァァァァァ・・・・・

 

彼女の手の中に光が集まり、それが先の曲がった「バール」のような杖の形をとる

 

「こんなモノでもないよりましか・・・・・」

 

そう言うとカンナはバールのようにも見える杖を軽く振った

重さや質感も、「以前」使っていたものと全く同じ

無論、敵の頭を砕く程重くはなくあくまで形だけのもの

急所に当てられればそれなりに威力はあるだろう

まぁ、最もこれなんかよりも強力な武器を彼女は持っているのだが・・・・・

 

 

彼女は歩く

音もなく、足の裏には地面がある感触がある

しかしそれはコンクリートとも土とも違う

何かの生き物の上、もっと言えばその腹の中を歩いているようだ

堂々と、しかし常に戦えるように魔力を溜めながら歩く

それにこれは魔法少女同士の戦いに間違いない

なら今こうしている間も相手はその牙と爪を研いでいる

暗闇の中でもわかる

この身を焼かれるような感覚

常人なら怯え慄くが、彼女にとっては心地よかった

 

「?!」

 

開けた場所に一人の少女が立っていた

橙色の髪の少女

忘れもしない「牧カオル」だ

しかし以前会ったことのある彼女は魔法少女ではなかった

それどころか、魔法少女に怒りを持っていた

だが

白色に黒いラインの入ったサマーパーカーとその身体にフィットした黄色のジャンパースーツ

そして彼女からは間違いなく魔力が息づいていた

そう彼女「牧カオル」は魔法少女に「なった」のだ

 

 




「永遠の0」
恐ろしいまでの興行収益だそうですね
私も見ました
どっかの馬鹿が「見た記憶をゼロにしたい」とか言っていたけど、今どんなキ・モ・チ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。