鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下します


踊る影法師

窓の外を流れる景色を眺めながらカオルは一人焦っていた

 

「カンナ」と「ニコ」

 

彼女達の結束はカオルが思うよりも固く、海香もカオルもその間に入ることができなかった

真と「さやか」から学んだ方法 ― 相手が眠る瞬間に自分とラインを繋げ、対象をイドの闇へ転送する ― を使用しようとしても彼女達は常に二人で行動している

カンナが油断して、一人で眠ることなどほとんどない

まさか、彼女達の家に入り込んで無理にラインを繋げるわけにもいかない

そんなことをすれば、これを仕組んだ相手に自分達の正体を明かすようなもの

いやそれよりも悪い状態になる可能性がある

今でこそ、イドの闇を経由して情報を取り合うこともできているが、敵がいつまでもそんなことを見逃すはずはない

連絡もできず、自分の願望が叶えられている「夢の世界」

大好きな彼女に会えず

大嫌いな彼にも会えない

ただただ終わらない「夢」に溺れるだけ

私は安直な「夢」なんて望まない

確かに外の世界では恐ろしげな魔獣との戦いが待っている

カオルは望む

戦いの果てに倒れるかもしれない

でも戦う意思を持って死ぬことは「絶望」や「苦しみ」の中で死ぬよりも尊い

それこそが人の尊厳であり、人の持つ力だ

プレアデス聖団の皆が記憶を取り戻した時、数人の仲間が「夢」からの脱出に難色を示した

魔法少女の寿命は短い

いくら記憶を取り戻したといっても、その事実は重い

解析により、この「夢の牢獄」では穢れの増減は見られないそうだ

つまり、此処にいれば「死」から逃れられる

でもそれは牧場で飼われる牛や豚と同じ

敵の気まぐれで「出荷」されることになる

それでいいのか?

家畜の安らぎに溺れていいのか?

真が皆に問いかける

戦わずに得られる自由はない

ただ相手が黙ってくれるのを待っているのならそれは犬だ

人が生きる以上その尊厳を守らなければならない

犬じゃなく人として生きるなら戦うしかない

真の言葉に感化され、プレアデス聖団は一つになった

 

「いつかは今じゃない」

 

そうだ

確かに魔法少女の寿命は短いかもしれない

でも

それは今を生きるただの少女たちとて同じ

いつ何時その生が終わるかわからない

ならば自分の生きたいように生きる

英雄にならなくていい

カッコ悪くても、泥臭くても生きる

生きぬいてやる

戦う意思を決めた仲間達は真から戦闘技術を学び始めた

それは自分という存在を守る為

もう家畜の安全なんて求めてはいない

プレアデス聖団の皆とそしてカンナとゆまと一緒に自らの人生を歩む為に

私達は戦う

 

 

― 極々、普通に振る舞いカンナと「ライン」を繋げる ―

 

それがこんなにも難しいかったとは・・・・

カオルが頭を抱える

元より繊細なことが苦手な性分

本当ならすぐにでもここを脱出したいが、カンナとのラインがない以上無茶なことができない

自制を余儀なくされ、カオルはよけいにストレスが溜まった

だからこそ・・・・・

 

「スキー合宿だァァァァぁぁl!!!!!!!」

 

カオルの満面の笑みと雄叫びが白い雪山に響く

そう

彼女達は「中学生」

「運動会」もあれば「文化祭」もある

そして今回の「スキー合宿」も

合宿といえば、雑魚寝

これはいくらカンナの「夢の世界」といっても変更できないだろう

上手くいけばカンナにラインを繋げイドの闇に導くことが可能だ

そしてここにきてカオルに与えられた「運動バカ」という役割が大いに役に立つことになる

「運動バカ」なら、スキー合宿でニコかカンナもしくは両方と一緒に滑るように誘導できる

そうやって、体力を奪ってしまえば後は宿で死んだように眠ってくれるだろう

眠るときこそが、最も精神があやふやな時間

無論、カンナが「魔法少女」としての記憶を失っていないことは憂慮する点ではある

敵の内通者である可能性は消えていない

ラインを繋げた瞬間に、敵に覚醒していることがバレたら目も当てられない

しかし、それ以外に方法は存在しなかった

「さやか」や海香が夢の分析を行ったが、カンナを敵の内通者であると認定する証拠は見つからなかった

もうやるしかない

答えは既に出ている

あとは「覚悟」だけ

カオルは海香を見る

彼女は放心したように雪山を見ていた

海香は既に「覚悟」していた

カオルとの「別れ」を

 

 

「そんな・・・・・!」

 

イドの闇

ここにいるのはカオルと海香、そして「さやか」の三人

驚愕するカオルとは別に海香は強い決意をもって彼女を見つめていた

カンナとラインを繋げることは自分のカードを相手に見せる事

ゲームは先にカードを切った者が負ける

一か八か

彼女一人の負債ならまだいい

でも彼女の背後にはプレアデス聖団のみんなが居る

彼女達のミスで他の彼らを危機に晒すわけにはいかない

だからこそ・・・・

 

「私か、それともカオルか、ラインを繋いだ瞬間二人の内一人はそこを離脱する」

 

つまりは「皆の為にどちらかが見捨てる」ということだ

共倒れを防ぐにはそれしかない

最悪、一人が犠牲になるだけで済む

後はそれを受け入れるだけ・・・

 

「・・・・わかった」

 

カオルは短く、そう答えた

 

 

言葉は重い

それが呪いのようにカオルを縛り付けていた

 

 

 

 

 

 




キルラキル
やっぱり黒のセーラー服と黒髪のロングは絶品だと再認識した

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