犬カレー空間って文字で表現するのが難しい・・・・
そういえばマスコミの地震予測って当たった事なんてあるんですかね?
何処からかパチパチという何かが爆ぜる音が聞こえる
その音は微かだが、しかし痛みに気を失ったゆまを覚醒させるには十分だった
「何処・・・・此処・・・・・・」
美国ゆまがなおもズキズキと割れるように痛む頭を押さえながら、その場からゆっくりと立ちあがった
目の前には曇り一つない銀の檻
蝶番の嵌められた場所を見つけたゆまが、そこに手を触れる
ギシギシ!
「やっぱりだめか・・・・・」
蝶番の嵌められた箇所を試しにゆまが手を掛けて押して見るが、それは耳障りな音とともにギシギシと軋むだけで全く動かなかった
他に何処か入口のようなものが無いか隈なく調べたが、この檻が円筒形の構造をしていて丁度「鳥かご」のような形状をしていることが判明した程度で、出入り口もこじ開けて通れそうな場所など全くそういったものはない
いつもなら、ナイフとペンチそれと各種ドライバーがセットされた「マルチプライヤ―」の一つくらいは携帯しているが、今はどこを探してもそれは見つからなかった
まぁナイフを抱いて寝るような趣味なんてゆまにはないが・・・・
「こんな柔い真鍮くらいならダイヤモンドヤスリで一発なんだけどな・・・・・」
ゆまが一人そう呟いた時だ
・・・・・ドスン!・・・・・ドスン・・・!
地面が揺れる
「何?!地震??????」
その衝撃でゆまはとても立っていられず、その場に蹲った
鳥かごに閉じ込められているという異常な状況を抜きにして、冷静に考えるならこの現象は「地震」であろうと判断できる
そうだ
「反日」が社是のマスコミが、社会不安を煽る為だけに「○○大名誉教授」やゲーム脳だのと医学ですらない「言いがかり」で飯を喰う「医学博士」といった、所詮は「名義」だけの似非学者を引き出して、「○月×日に地震が起きるニダ!!!!」と言うアレだ
予想が外れても決して、マスコミが「謝罪」も「訂正」もせず「責任」すらとらないアレだ
しかし・・・地震というものはこうしてだんだんと近づいてくるものなのだろうか?
寧ろ、「何か巨大な物体」が何らかの手段で移動する際の地響きと考えるべきだろう
では何が?
この地響きは感覚としてだが、上から下へモノを落とすときの衝撃に似ている
「まさか鳥かごごとプレス機でぺしゃんこになるとか・・・・・・」
アメリカのカートゥーンではお馴染みの「おしおき」が頭を過る
「これは夢・・・そう夢。あ、でも夢なら何でもありだよね・・・・・」
ゆまの脳裏を紙のようにぺらぺらになった自分の姿が過る
無論、実際にプレス機に潰されたらそんな風にはならないのだが、精神の安定を図る為にそのことは考えないようにしている
ゆまが冷静に今の状況を知ろうとしている時だった
・・・・・それが姿を現した
血のように赤い髪
赤い帽子
所々に膠のような黒い染みがついた革エプロンをつけた巨人
ゆまは前に兄が話してくれたノルウェーの巨人「トロール」を思い出した
巨大な体躯、かつ怪力で、深い傷を負っても体組織が再生出来、切られた腕を繋ぎ治せる
醜悪な容姿を持ち、あまり知能は高くなく、凶暴、もしくは粗暴で大雑把
伝承に出てくるだけの存在
でも今、ここにそれが臭い息を吐きながら立っている
そうだ
これは夢だ
そうに違いない
ゆまはこの異常な状況をそう、理解した
「全く!あのオカルト好きのシスコン男の娘が!チクショー!!!!!後でエプロンドレス着せたる!」
・・・・確かに彼女の「兄」は女性物の服が異常に似合う
しかし、この異常な状況でも取り乱さないのは彼女は「この世界」を夢と認定したからだ
一度、夢と定義できればこの異常な状況も可愛げがあるように見える
童話に出てくるような暖炉には凹みだらけの鍋がかけられ、もう一人現れたはげ面のトロールは巨大なクレイパイプでタバコを吸っていた
そして最初に出てきた赤い髪のトロールも褐色の液体 ― 恐らくはウィスキー ― の入った瓶をラッパ飲みしている
醜悪な人形劇
ゆまは眼前のそれをそう評した
主人公が赤ん坊を放り投げたり、妻を殴って最後に地獄へ迎えに来た悪魔もぶちのめす「パンチ&ジョディ」も酷い話だが、それを滑稽に演じることで多少なりともエンターテイメントとして成り立っていた
でも、目の前のそれはただ醜悪としかいえない
男のトロールが食事の準備をしている女のトロールの胸を鷲掴みすれば、女のトロールがその手を叩くといった具合だ
酒毒にやられた人間なら多少は笑えるかもしれないが、とてもじゃないがそれを楽しめるほど彼女は下劣な人間ではない
「いいかげん夢が覚めないかな・・・・・」
夢の中には自分が夢であると知っても続く、明晰夢というものもある
既にこれを夢と判断した以上、目の前の醜悪な人形劇なぞ見たくはなかった
そうこうしているうちに、トロールの食事が始まった
男女の目の前には大きな鍋が一つ
丁寧にナプキンを首元に巻き付けている
二人が鍋の蓋を開くと中は空だった
喧嘩をし始めるトロールたち
その時だった
巨大なテーブルの下で動く何かをゆまは見つけた
煤に汚れた身体
貫頭着のような粗末な衣服
そして焼かれたり刺されたりした、痛々しい傷跡
ライム色の髪
それが頭を上げる
「そ・・・ん・・・・な・・・・・・・・」
それは幼い、ゆま自身だった
サムライフラメンコ
なんか一周回って面白くなったような・・・・