ええ、バイトですよ私は
「事情は分かったわ。彼のことは私の落ち度よ」
織莉子が目を伏せる
「でも、真はどうするんだ。アタシたちが説得してもダメだったあの坊ちゃんを説得するアテがあるとでも?」
「・・・そのためにはキリカさんと織莉子の協力が必要なんです」
「話してちょうだい」
「・・・・・できるかわからないわ。おまけに危険だわ、巴マミは承知しているの?」
「巴先輩は決して許さないでしょう・・・・僕のしようとすることを知ったら」
「何か穏便な方法はないのか?それに真、アイツお前とは直接は関係してないんだろ?何がそこまで・・・・」
「僕は、僕の気持ちに嘘をつきたくないんです」
真が二人を見つめた
そこにあるのは強い意志
「・・・決行はこちらで決めさせて。やるからには最高の時を選ばないと」
「ありがとうございます!」
宇佐美邸 別館
佐倉杏子は日課となったパトロールに見慣れた顔が足りないことに気付いた
「おや?マミ、真は?」
「真さんは今夜はどうしても抜けられない用事があるからって、お休みよ」
「あの真が?」
「こればかりは真さんの事情だから仕方ないわ」
同日
織矢探偵事務所
― 視界が歪む ―
溺死者がそうするように、真が空気を取り入れようともがく
しかし、彼の肺臓は石のように固まりピクリとも動かない
「真さん!真さん!しっかりして!!!!!!」
歪む視界に光が射した
光は美国織莉子の姿をとった
「僕は・・・・」
「意識浸食を起こしてブラックアウトを起こしたわ」
意識を取り戻した真をキリカが抱きしめる
「もうやめよう・・・このままじゃ・・・本当にさやかの二の前になるぞ!」
真は泣きそうなキリカの顔を見つめる
「・・・そうかもしれません。今僕が止めても誰も僕を責めない」
「・・・ああ!そうさ私も織莉子も責めもしない」
「でも、僕は僕を責め続けると思う」
「・・・・もって6時間。覚えていて・・・」
「はい・・・」
~ 佐倉さん、聞こえる? ~
~ なんだマミか。どうしたんだい授業中に念話なんて ~
~ 真さんのことよ 彼、此処三日ほど学校に来ていないそうよ ~
「なんだって?!」
ガタッ!
急に杏子が立ち上がった拍子に、椅子が倒れた
「杏子さん!授業中ですよ!」
一斉に視線が杏子に注がれる
― やべ!授業中だった・・・ ―
「・・・・トイレに言ってきていいですか」
「行ってきなさい」
杏子はトイレに駆け込むと、マミとの念話を再開した
~ 悪りぃ、続きをたのむ ~
~ 学校の先生に尋ねたら、風邪で自宅療養してるって ~
~ アイツ・・・・ ~
~ 私達に心配を掛けたくなかったんでしょう・・・ ~
放課後
宇佐美邸
「理論は完成した。意識浸食もほとんど起きていないわ」
織莉子が目の前には暖かな香りを立てるコーヒーが準備されていた
しかし、彼女はそれに手を付けず目の前の人物から目を離さなかった
「ありがとうございます・・・無理を言って・・・・」
― 目の前の人物 ―
宇佐美真は丁寧に礼を述べた
「決行は今夜」
「はい・・・」
「こればっかりは初めてのことで私の予知も効かないわ。それでもするの?」
「ええ。お願いします」
「キリカ・・・お願い」
「いいんだな?」
「はい」
キリカが魔法少女に変身し、その能力を使う
真の姿が光の中に消える
そしてそこには・・・
青い髪に金色の髪留めをつけた少女が立っていた
「再現率は90%か」
「では、真さん覚悟はいい?」
白いドレス姿の少女 ― 美国織莉子 ― が真を覆い包むように金色の円盤を展開する
フィィィィィィィィ!
高周波音が響き
レコードから放出された光の帯が真を包む
「グッ!!ガァァァッァァァァァァァァ!!!!」
光の中で真の表情が苦痛に歪む
「・・・・あなたは宇佐美真さん?それとも美樹さやかさん?」
織莉子が静かに語りかける
「僕は僕だよ。織莉子さん」
織莉子の表情に安堵の色が浮かぶ
「移植は成功したわ真さん。今の貴方は美樹さやかの記憶を持っているわ」
「ありがとう」
真は美樹さやかの顔と声で笑顔を見せた
NGシーン
「移植は成功したわ真さん。今の貴方は美樹さやかの記憶を持っているわ」
「とりあえずあたりさわりのない記憶を呼び出してみたら?真」
「はい」
実験成果を思いだし、さやかの記憶を呼び出す
記憶は焦点を合わせ・・・・
― スカイブルーのショーツを履いたさやかの姿 ―
「違う!違う!」
真が頭を振り、邪な思考を追い出す
― 香りのいい泡に包まれたさやかの肢体 ―
「下も青色だったなんて・・・辛抱たまらん・・・・・・・グハァ!」
「織莉子!真が鼻血を吹き出して気絶したぞ!」
「意識浸食が再発したの?」
とりあえず24日までにクリスマス特別編を投下予定です