鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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ではでは投下


双生児

「夢の牢獄」に造られた宇佐美邸別館

彼と死んだ母親とを繋ぐものである「鳴らないオルゴール」が無いなど、現実世界において存在している宇佐美邸とは良く見ると細部が異なるが、邸内に漂う古びた紙やインクの匂いも全て再現していた

恐らく、真が今も「夢」にしがみついていたのなら決して見抜くことのできない細かな差異

今更ながら、真は敵の能力の恐ろしさを再確認していた

 

 

カチャッカチャ・・・・

 

土曜日

休日である今日、何時ものように昼食を集りに来た「美樹さやか」と一緒に昼食を食べた後、真は一人で片づけをしながら思案していた

一緒に昼食を食べた美樹さやかは既に帰宅している

これはあくまでお互いの世間体をよく考えた上でのことだ

真の住んでいる地区は、織莉子とゆまの邸宅がある区域ほど高級ではないにしても、それなりに高級住宅地で所謂「ステータス」とやらを鼻にかけた連中が多い場所だ

所詮ステータスなど意味はないが、世の中には他人を貶めた分だけ自分の価値が向上すると本気で考えている人種がいる

まさに「ヒトモドキ」だ

彼の父や彼が貶められても彼らのみがターゲットならいかようにもできるが、マミやほむら、杏子がターゲットにされるのは避けたかった

真が魔法少女として活動していた「現実世界」では、彼が所属する「マギカ・カルテット」のリーダーである「巴マミ」の考えで、新たに本拠地になった宇佐美邸に入る際は一般人に対する目隠しの意味で自らに「結界」を張ることになっていた

これなら、あらかじめ魔力を持った人物でなければ「結界」に包まれて姿を隠した「魔法少女」の姿を見ることはできず、従って「父親が不在な事をいいことに、一人息子の真が得体のしれない少女を連れ込んでいる」なんて風評を流されることはなかった

無論、しかしこれもあくまで用心の範囲内

物事は時として、意図したことよりも別のものになってしまうことがある

他人を貶めるための言葉がそのまま自分に返ってきて自分の方がダメージを受ける、「ブーメラン」という現象もあるのだ

魔法少女としての活動は「アニメ」や「漫画」のようにキレイなものではない

彼が所属するユニットではそんなことはないが、他の区域の魔法少女の生活は殺伐としている

騙し騙され、血で血を洗う

好いた男を二人の魔法少女が奪い合うことも、自分の余命が残り少ないことを悲観して名も知らぬ男達にその身を安売りする少女もいる

特に魔法少女といっても少女だ

彼女達が歩んできた道程には様々な事があった

少女らしく笑う日々

その中でも、様々な危機に見舞われることも往々にしてあった

 

魔法少女であった幼馴染が戦いの末に消滅し、その影を追い求め絶望に見入られた少年

 

少女化した真に恋心を抱き、魔法少女とマギカ・カルテットの存在に気付いた少年

 

それらを時には協力し、時にはぶつかり合い、真とその戦友達が解決してきた

ただ・・・・・それらがいい方向へと向かうこともあれば、そうじゃないこともある

魔法少女の日常は過酷だ

予防線を張ったとしても所詮は「予防線」だ

それが意味を為さないこともある

 

月のない晩に白い影が出入りするのを見ただの

 

若い女の悲鳴が響き渡るだの

 

いささかアレな噂を流された結果、「変わり者学者のお化け屋敷」などと現実世界ではそう言われてしまうようになったのだが・・・・

この世界では「魔法少女」も、そして戦うべき「魔獣」も存在していない

だからこそ、世間体を「現実世界」以上に気にしなければならない

この「夢の牢獄」でも魔法少女としての力を行使するのは可能だ

しかし、そんなチート行為をすれば相手に気付かれるのは間違いない

真とて此処にいる「美樹さやか」がNPCであることを知っている

知っているとはいえ、それでも心穏やかに過ごしたい

たとえ、別れるとしても・・・・・・・・・・

その思いを心の奥に隠しながら彼は戦う

皆を夢の牢獄から解放する為に

 

 

ウィィィィィン・・・・・・

 

アンゼリカ・ベアーズ地下

「救済者」のラボ

その最深部

プレアデス聖団全員と、真、ゆまが安置された中枢

皆は棺桶のようなカプセルに一人一人安置されている

そのカプセルの中の一つが開き、一人の少女が身を起こした

 

「救済」の魔法少女 ― 夏樹真理 ―

 

真理はゆっくりと立ちあがり、自らの指を伸ばしたり閉じたりしてみる

かつてのように、筋肉の委縮や硬縮は見られなかった

今更ながらに、仲間が作ったこのカプセルの性能には感嘆せざるを得ない

特殊周波の微弱な電流を流すことにより膠着した身体の筋肉を動かすシステムは現在でもあるが、このカプセルは全身にそれを行う

彼女の為だけのものではない

此処に囚われている全ての少女が眠っているカプセルにも同じシステムが付けられている

真琴は言う

 

~ 今私達は彼女たちに協力してもらっている。時が来たら、借りているモノを返すわ・・・ちゃんと利子をつけてね ~

 

彼女の究極の目的、それは・・・・

 

カッカッカッ!!!!!!

 

彼女が一つのカプセルに近づく

そこには一人の少年が眠りについていた

 

「終わらない夢と、希望と絶望の現実・・・・・どちらが幸せ?」

 

彼女の問いかけに答える者はいない

 

 




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