鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下


壺中天

「・・・・・・容認できない」

 

この会合の中心である浅海サキが静かに、そして冷静に告げる

普段から感情をあまり見せないサキではあるが、その表情には何の感情も見えなかった

しかし、いつものサキであり、真に告げた宣告も悪感情に基づいたものでは決してなく、むしろ目覚めた仲間達を守るための決定だった

サキの目から見て、真という少年は聡明だ

しかし、彼は自分の存在を軽く考えすぎだ

多くの人を救う為に自分の身を捧げる

それは尊いことだ

でも、ことは真と「さやか」だけの問題ではない

だからこそ、サキは納得できなかった

 

「でもそれしか方法がないんです・・・・」

 

灰色の髪の少女 ― 宇佐美真 ― がサキに詰め寄る

彼が決断した「答え」

それはゆまの夢の中に入り込むことだった

それが可能だったのは対象である「ゆま」が真が出てくる夢を見ていたからだ

彼が選んだ方法は「夢の自分」と今こうして行動している「自己を持った自分」とを入れ替える方法

ゆまは「真」と「織莉子」が自分の「兄」であり、「姉」として存在する夢を望んだ

真はそれが彼女を目覚めさせる為の、最も痛みの少ない方法であると知った

実際、今のゆまが織莉子の手によりある種の「洗脳」を受けた存在である以上、プレアデス聖団の皆を起こした時のような、「イドの闇」で真実に向き合わせる方法はとれない

彼女の幼い自意識では「洗脳」も同時に解いてしまうこともある

そうなればいやがおうにも過去の罪を知っていしまうだろう

おまけにゆまは「魔法少女」だ

しかしゆま自身はそのことを覚えていない

この「夢の牢獄」を脱出するには「魔法少女」としての力が必要だ

どうしても「ゆま」には、自分が魔法少女であることを伝えなければならない

それでいて、過去の悪夢をからゆまを守らなければ破滅が待っている

 

― 相手のキャパシティーを超える程の負荷を与え、夢の牢獄を崩壊させる ―

 

この方法は夢の牢獄に繋がれた全員が力を惜しまず、全力を出すことで相手からの干渉を断つことが成功のカギだ

例外を作ればそれだけ不安要素となる

ゆまが真実に向かい合えるのかを見極めることが必要だ

だからこそ、真もゆまの夢の中に入り込んでNPCとして振る舞いながら、より多くの情報を集める必要がある

当然、危険はある

ゆまが魔法少女であることは彼女に洗脳を施した「美国織莉子」と事情を知っている「呉キリカ」、そして「宇佐美真」の三人だけだ

織莉子の父である、「美国久臣」ですらその事情を知っていはいない

ではなぜ、ゆまが魔法少女であることを相手は知っている?

あの二人がゆまを見捨てるはずはないし、軽はずみに情報を漏らすはずもない

とすれば・・・・

プレアデス聖団が魔法少女となった状況が脳裏に浮かぶ

皆、いつの間にか魔法少女となったと証言している

相手に洗脳を得意とする魔法少女がいるのは間違いない

考えたくはないが、ゆまが全てを思い出している可能性もある

それを知るにはあまりにも情報が足りない

だからこそ、サキは反対した

彼らを夢の牢獄へと繋いだ正体のわからない「敵」を最も憎んでいるのは目の前のサキに他ならない

彼女の盟友である「和紗ミチル」の必至の説得と真のサポートで、魔法少女となる「未来」を否定したと言うのに、何者かがサキと彼らを操り「魔法少女」に仕立て上げた

敵にいかなる大義があろうとも、その振る舞いは万死に値する

だからこそ、真がゆまの夢に入ることを容認できない

今回は運よく二人を残して皆覚醒できたが、次も同じとは限らないのだ

カンナかゆまか、それのどちらもか

相手が対象にトラップを仕掛けていて、そしてそれに引っかかったら最後、こちら側の情報を相手に奪われてしまう

それどころか、ヘタをすれば一人残らずこのまま自意識を封印されて、再び敵に弄ばれるだけの存在にされることもあり得る

 

「私は皆を守らなければならない。だから・・・・・」

 

「私は賛成するわ」

 

サキと真が振り返ると、群青色の髪の少女が立っていた

「百識」の魔法少女 ― 御崎海香 ― だ

 

「海香・・・・」

 

海香が真の隣に座る

 

「私も真さんと同意見よ。私はカンナちゃんの夢に入る」

 

「でも、それじゃあ!」

 

「・・・・敵に察知される可能性は高まるわね」

 

「なら何で!」

 

「一つは技術的な限界。いくら外から夢の内部を見ることはできても詳しい情報は得られない。敵の内通者かどうかなんて、実際の所、中に入り込む以外に知る方法はないのよ。それに・・・」

 

海香が真を見る

 

「二つ目はゆまちゃんもカンナちゃんもかなり特殊な事情を抱えている。どう考えても、今までのような方法はとれない。」

 

「今でなければならないのか?海香」

 

「計画は最終段階に来ている。私達に外の世界と連絡する手段がない以上、ぐずぐずして敵に察知される可能性もなくはないのよ」

 

冷静に言葉を紡ぐ海香

 

「引くこともできないのか・・・」

 

「・・・・・私達が目覚めて時から、その選択はないのよサキ」

 

静かにサキが目を閉じた

 

「認めよう・・・・・」

 

「それじゃぁ!」

 

「でも、少しでも危険があったら計画の中止を断行する。それは真くんも海香も納得してくれるね?」

 

二人は静かに頷く

 

「それと私達に定期的に情報を報告すること。・・・・・・君たちが誰よりも聡明であることを私は知っている。でも、二人は仲間だ。もっと私達を頼って欲しい」

 

「「はい!!」」

 

二人の声が円卓に響いた

 

 

 




ノブナガ・ザ・フール

・・・・・正直、ちゃんと終わるのか不安になった

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