鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下


葛藤

真がゆまのこれから歩む未来について思い悩むように、二人の少女も思い悩んでいた

牧カオルと御崎海香の二人だ

二人がいるのは「イドの闇」

彼女達、囚われの魔法少女達が言う回廊だ

夢の牢獄はそれぞれ完全にスタンド・アローンな状態だ

つまり、通常手段では夢の牢獄に繋がれた少女同士は行き来できない

しかし物事には常に例外と抜け道が用意されている

真と彼を憑代にしている思念体「さやか」

二人の調査によると、夢の牢獄に繋がれている少女は八人

それらを個別に管理できるはずがない

敵は精神分析学上の概念である「集合的無意識」を利用して、全ての少女を並列に結合していた

これならば自らに負担を掛けずに個々の夢を管理できる

手品のタネさえわかれば、それを利用するのは容易い

プレアデス聖団の中心人物であった「浅海サキ」を目覚めさせた真はイドの闇の回廊を通り、一人一人目覚めさせていた

後、残すは二人

「美国ゆま」と「聖カンナ」

この二人を目覚めさせることができれば「目覚め」ることができる

改めて、二人は目の前の「カンナの夢」を見る

夢の入り口はクラシカルな意匠の施された窓のようでもあり、見ようによっては扉とも見えた

二人が目を凝らすと、そこに映し出されたのは幸せそうな家庭で暮らす「姉」という役割のニコと一緒に暮らす「妹」という役割のカンナだった

 

~ ニコちゃんは・・・確か・・・・・ ~

 

群青色の髪を掻き揚げながら、御崎海香はかつて出会った二人の事を思い出していた

ギャングに撃たれた両親を助ける為に契約した願いで生み出された、カンナ自身のコピーである「神那ニコ」

カンナの「再生成の魔法」で生み出されたコピー体である彼女もまたインキュベーターと契約し「接続の魔法」を手に入れたことにより、瀕死の重傷だったカンナの両親は一命を取り留めた

だが・・・・・両親は目覚めることはなかった

両親を目覚めさせることのできる魔法少女と出会う為に彼女達は二人っきりで旅をしてきた

命あるものでさえその場にある材料でもって再現できる「再生成の魔法」を使う魔法少女 ― 聖カンナ ― 彼女にとって願いで生み出されたコピー体であろうとも「神那ニコ」はかけがえのない「家族」だ

しかし、だ

旅路の果てに、願いが叶いもし両親が目覚めたら「神那ニコ」はどうなる?

当然のことだが、聖カンナの「コピー」であるニコは戸籍も何もない

両親が永い眠りから目覚めると言うことは必然的に神那ニコと聖カンナとの「別れ」を意味する

カンナが全てを打ち明けて両親を説得する?

それは無理だ

目の前で魔法少女の変身を見た私達なら「魔法少女」という存在を受け入れることができたが、カンナの両親もそうであるとは限らない

私達でも、魔法少女の「秘密」を明かすために一時的に死んだ真を見て里見は「化け物」と呼んだ

私達でさえ、だ

これが常識的な分別のある「大人」だったら?

カンナの話では、二人は敬虔なカトリックだそうだ

そんな二人に魔法少女の存在を知ったらどうなる?

最悪、カンナと両親との関係が最悪に悪化することもあり得る

真の話では、ある少女が魔法少女であることが家族にバレて家庭崩壊を招いた事例もあるという

無論、カンナの家族がそれしきで崩壊するような家庭だとは思えない

しかし、人の心なんてすぐに変わる

もしもだ

この世界に無尽蔵に金塊を生み出せる魔法少女が居たとしたら、その家族は豹変してしまうだろう

望めばいくらでも金塊を得られるのだ

人間の価値観を麻痺させるのは間違いない

どんなに善良な人間でも、すぐさま欲にまみれた下衆になるだろう

だから魔法少女は自らが魔法少女であることを常に隠さなければならない

真や杏子、そして「カズミ」が私達に自分が魔法少女であることを告白したのは、もうすでにプレアデス聖団の皆が魔法の存在を知ってしまったからだ

そして魔法少女と魔獣の戦いを「目撃」した

いずれは彼らと魔法少女の契約を結ぶべく「インキュベーター」が接触しようとするに違いない

彼女達が告白を決意したのは、自分達の平穏よりもプレアデス聖団の皆が安易に契約しないように守ろうとしたからに過ぎないのだ

二人が旅を続けてきたのは両親を目覚めさせること

両親が目覚めたら、再び幸せな家庭に戻れる

しかしその中に果たしてニコはいるのだろうか?

結局のところ、波風を立てずにいるにはニコが自ら身を引くしかないのだ

 

 

「・・・・・・安心したわ」

 

それは海香の紛れもない本心だった

カンナのコピーである「神那ニコ」

あすなろ市での短い邂逅

その中で二人は仲の良い姉妹のように見えた

だからこそ「恐れた」

オリジナルである「聖カンナ」がコピーである「神那ニコ」をどう思っているか、それを知ることを

夢の牢獄は対象の内なる欲求を反映させる

だから、海香は彼女の本心を知りたくはなかった

もしも

もしもだが、ニコをカンナが「モノ扱い」をしていたら?

それを目の当たりにする勇気がなかった

だからこそ、実際に干渉せず「イクス・フォーレ」でイドの闇からカンナの夢を解析している

そして同時に二人を如何助けるのか、それも彼女は調べていた

海香とて、魔法少女の宿命を知っている

だからこそ、二人には実りある「余生」を送って欲しかった

最悪、彼女の魔法で記憶を書き換えても・・・・

 

 

 

 

 

 

 




ダンガンロンパ・リロードを貸した友人(年末年始でクリアーしたそうだ)曰く

「風紀委員を縛り付けて大和田バターを塗ったパンを無理矢理食べさせる・・・・・最高やん?」

・・・・・・私は一人の少女の人生を狂わせてしまったかもしれない

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