鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下

優希紗々はやっぱりゲスじゃないと


シアワセナオニンギョウ

 

あすなろ市

その高級ホテルの一室

レモン色の髪を上等なシーツに投げ出し、一人の少女が眠りについていた

 

「しっかし、アンタもやるね~。一服盛って、意識を失わせるなんてね」

 

オレンジ色の髪をして、道化師のような恰好をした少女が愉快そうに顔を歪ませて、傍らの少女に話しかける

このスィートルームには珍しいことに、簡単な料理が可能なキッチンが備え付けられていた

有名デザイナーの手によるテーブルの上には、まだ暖かな湯気を立てているチキンリゾットが二人分置かれていた

 

 

― チキンリゾット ―

 

この世界において、何気ない料理見えても他人には大きな意味を持つことがある

それは、或る天才料理人が恋人を治すために命がけで作った「クロアワビの特別料理」であったり

頑なに死んだ仲間を食べることを拒んだ船乗りが食べた「ウミガメのスープ」であったり

彼女「達」にとってはそれがチキンリゾットだった

少女が目を瞑る

まだ両親が健在だった頃、母親がよく作ってくれた料理だ

母親は「マカロニ・チーズ」が好物だったが、日本人の父親の方は苦手だった

そこでマカロニチーズにチキンと米を加えたのが、このチキンリゾットだ

カンナの好物はニコの好物でもある

そしてそれを作ったのが、彼女の魂の同胞である「聖カンナ」であるのなら、「神那ニコ」は警戒などするワケがなかった

 

 

「でしょ?、聖カンナちゃん」

 

「・・・・」

 

ベットで眠る少女と同じ顔の少女が傍らの少女を睨む

 

「そう怒るなって!もうアンタはアタシたちの仲間なんだから、それくらい許してよ~~~」

 

傍らの少女はその姿も相まって道化師のようにおどけて見せる

サーカスの道化師なら、多少は可愛げがあろうが彼女からは邪悪さと下種な感情しか見えてこなかった

 

「おまえ友人いないだろ?優木紗々」

 

カンナが紗々に皮肉を言うが、当の紗々はそれを鼻にも掛けていなかった

 

「フフッ!いないよ友人なんて。でもそんなのが苦になるほど私は弱くはないよ?カンナちゃ~ん?」

 

恐らくは、紗々の言うことは嘘ではないだろう

正直、彼女が友人と仲良く話す姿なんて想像もできない

きっと学校でも一人に違いない

彼女にとって重要な人物なのは「自分」以外に存在しないのだから・・・・

 

「・・・・・洗脳はどれくらいもつ?」

 

カンナは話を変えた

紗々にいくら皮肉を言っても、効果がないことはわかっている

今は彼女「神那ニコ」の事を優先するべきだ

 

「御崎海香から精製した魂の欠片を使った記憶書き換えと、アタシの洗脳もかなり強力に掛けてあるし大丈夫だよ。それにアンタの死もサイコ・ポップなくらい相当派手に演出してあるからね。誰でも穿り出されたくない思い出くらいはあるでしょ?」

 

「つまりはトラウマになっているってこと?」

 

「私が行ったのは、あくまで記憶の上書きと矛盾が起きないようにニコの思い出をカンナの思い出に書き換えてあるってことだけ。問題は固有魔法の違いだけど、アメリカでの魔法少女仲間は一人残らず死んでいるんだろ?」

 

カンナは静かに頷いた

基本、カンナとニコは二人っきりで活動していた

仲間がいたこともあるが・・・・・魔法少女の知り合いは殆ど死んでいる

生きた人間では誰も二人の固有魔法を知らない

 

「人間のトラウマってのはかなり強い楔だよ。それこそ、一か八か、自分の命を賭けようってくらいじゃないと解けないからね」

 

カンナは紗々の言葉に少し引っかかりを感じるが、紗々は少なくとも契約通りの結果を残した

後は彼女が契約を履行する番だ

 

パチッ!

 

カンナは自分のイヤリングを外すとニコの手に握らせた

 

「何してんの?」

 

「遺品の一つも無いとおかしいでしょ?そうは思わない?」

 

「じゃあ、好きにすれば~」

 

カンナと紗々は静かに部屋を後にした

 

 

カルフォルニア

聖邸

日本人の父親とアイルランド系アメリカ人の母親、そして・・・・

 

「パパ、ママ!行ってきます!!!!」

 

母親譲りのレモン色の髪を揺らし、ひとりの少女がカルフォルニアの陽気に照らされて歩きはじめる

幸福な人生

一年前のハロウィン前日に起きた不幸な事件で、ギャングに撃たれた両親が植物人間になった

八方尽くしても、身体的に異常は見られない

だが一向に両親は目覚めることはなかった

それもそのはずだ

彼女の両親は魔力を使って、少々強引な手段で現世に引き留められたようなものだからだ

再生成の魔法を持つニコと接続の魔法を持つカンナ

ニコが二人の身体を修復し、その身体に精神を繋ぎ止めた

しかし、それが彼女達の限界だった

彼女達は両親を目覚めさせることのできる魔法少女を探し求めて、旅に出た

「奇跡」的に彼女の両親は目覚めた

しかし、その奇跡に対価があったことは誰も知らない

 

 

~ カンナ・・・・カンナ・・・・ ~

 

「カンナ!」

 

聖カンナが目覚めると、目の前には友人のアマンダが立っていた

 

「アマンダか・・・」

 

「アマンダか・・・じゃないわよ!ジョーイの誕生パーティーの予定を決めよって、言っていたじゃない!」

 

「ごめん・・・・」

 

「日本から帰ってきてから、大変なのはわかるけど・・・・・」

 

両親を目覚めさせることができる魔法少女と一緒にカンナは帰国した

その隣に彼女の片割れである「ニコ」はいなかった・・・・・

彼女は一人の少女を助ける為に、命を失った

ニコのことは忘れるべきなのかもしれない

思い出せば思い出すほど、心の中がギリギリと締め付けてくる

 

~ また・・・・濁っちゃった・・・・・ ~

 

彼女の名前は「聖カンナ」

二つ名は「接続の魔法少女」

 




キルラキル

奏の装の二段目、ロリーな体型も加わってかなりエロい

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