鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下します


少女達の休暇

 

ザザァ・・・ザァ・・・・

 

暑くもなく、寒くもない気候

そして子守唄のように穏やかな波音

空を見上げると、満点の星空が見えた

ありがちなヒーローものの映画やアクション映画なら、グリーンベレーだとかフランス外人部隊に所属していた元兵士のコックといった人物が都合よく表れて、星の関係からこの島の位置を特定して脱出している頃だろう

もしかしたら、敵の親玉となぜか素手でファイナルファイトしているかもしれない

生憎と、料理には自信があるがナイフ一本でアサルトライフルと互角に渡り合える自信はない

しっかりとした二本のヤシの木の間から渡したハンモックに横たわりながら、金色の髪の少女が静かに物思いにふけていた

彼女の敬愛する師匠である「和紗ミチル」、親友の言葉を借りるなら「かずみ」からの協力要請

ここあすなろ市で、何者かがプレアデス聖団に所属している少女達を拉致している、その魔の手から逃れた二人 ― 「若葉みらい」と「宇佐木里見」 ― を護衛して欲しい、と

私は怒りを覚えた

敵にどんな理由があっても、その目的の為に何も知らない少女達を利用するなど「邪悪」に他ならない

そしてそれは親友の「杏里あいり」も同じだった

私とあいりがそれぞれ、襲われる可能性のある「若葉みらい」、「宇佐木里見」に張り付き、師匠と師匠の呼んだ仲間が後方で援護する

彼女達、見滝原からやってきた魔法少女達は一目でかなりの実力者とわかった

童話に出てくるお姫様のような恰好をした「美国織莉子」

学校の女子制服のような服を着た「暁美ほむら」

そして私の師匠であり、別の世界の記憶を持つ「和紗ミチル」

恐らく、師匠が呼んだということは他の二人も師匠と同じ、別の世界の記憶を持っているのだろう

しかしそれは推論に他ならない

私達が織莉子さんやほむらさんに会ったのはこの時だけだったんだから・・・・

 

 

完璧に練られた計画だった

しかし、その「穴」に気付いている人間は師匠も含め、誰も居なかったのだ

警護の基本は警護対象の安全を第一に考える

しかし、もしその警護対象が敵の仲間だったら・・・・?

プレアデス聖団を拉致している姿の見えない相手は、二人を拉致し損なっていたわけではなかった

拉致して、その上で警護対象を人間と見分けのつかない複製品「シュミクラ」に入れ替えていたのだ

私達がそれに気づいた時には全てが終わっていた

目の前に迫る巨大な光の玉

もう既に回避行動はとれる段階にはなかった

身体全体から力が抜け、私はただ木偶の坊のように立っているだけ

幸い、失禁するようなことはなかったが、身体は鉛の様に重かった

私は死を覚悟し、目を硬く瞑った

 

~ 生まれ変わっても、あいりは親友になってくれるかな・・・・・? ~

 

光の中、私は「お守り」として持ち歩いているスプーンを強く握った

 

 

気が付いた時には一人っきりでこの島の森に倒れていた

あまりにも現実離れした状況に、私は前に観た海外ドラマみたいだと思った

 

~ アレって、結局「あの島」はあの世ってオチだったよね・・・・ ~

 

急に怖くなった

もしかして・・・・ここはあの世なのではないか?

私は何とか森から逃げようと、歩き回った

急に視界が開けた

何処までも広がる空、エメラルド色の海

熱くもなく、寒くもない

テレビや映画の中から抜け出したかのようなリゾート

そして、そのビーチであいりと出会った

最初は目の前の親友が、あの夜に出会った「シュミクラ」かとも思った

でも、彼女は私の知っているあいりだった

「ホテル・カルフォルニア」で姿を現した敵 ― 宇佐美真琴 ― 

彼女は言った

暫くの間、このホテルで過ごして欲しいと

正直・・・・私はほっとした

敵が私達と同じ人間であったこと、そして「戦わなくてよい事」に

目の前の「真琴」と名乗った少女は、底の見えない不気味さがあった

相手がこの島に私達を閉じ込めたのは、恐らくは他に手の離せない事情があったからだ

私達は所詮、そのくらいの価値しかなかった・・・・

そのことはあいりと一緒に脱出方法を探している時も脳裏を過った

あいりは私の親友で・・・別の世界の「記憶」を持っている

それは師匠である、和紗ミチルさんも一緒だった

その「別の世界」では、私は魔力を失って・・・・「魔女」という化け物に変わってしまった

つまりは、あの時私が「助からなかった」未来もあった

ミチルさんと一緒に居て、その事は考えないようにしていた

無論、ミチルさんと一緒に修行したおかげでそれなりに戦えるようになっていたこともある

そして起こるべくして起こった「あいり」と「ミチルさん」の決闘

全ての因果を知った

私は・・・・・二人を導く「光」になることを選んだ

二人は許されたかった

「もう、大丈夫だよ」と言ってもらいたかった

だから・・・・・

 

 

日々の日常を忘れ、与えられた幸福

私はそれにずっと浸かっていたかった

でも・・・・・

この世界の何処かで、誰かの身勝手な考えで理不尽な目に遭わせられている少女達がいるのは事実だ

雛が卵を割るようにこの「幸福な生活」に別れを告げなければならない

あの日の自分を裏切りたくないから

 

 




蒼き鋼のアルペジオ・アルスノヴァ

原作無視の展開だが、マヤが壊れて「カーニヴァルだよ!」を繰り返しながら、コンゴウの周りをくるくる回るシーンは結構良かった

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