鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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今年のクリスマスも番外編を書こうかな・・・・



第十一章 愛しき日々に別れを
 ― 茶会 ―


ヒュン・・・

 

女性としては長身な影が久遠の闇の中を踊る

闇に溶け込むエンジ色の乗馬服と、彼女自身のスレンダーな肢体を引き立たせる白いタイツ

そして闇の中でも微かな光を反射して、輝くクラシカルなモノクル

何もない虚ろな空間

ほんの少し前では恐怖しか感じなかったが、何度も此処を通るうちに恐怖は感じなくなった

それよりも一刻も早く、「みんな」と会いたかった

 

パチッ!

 

彼女は懐から懐中時計を取り出した

これは父親から渡された音の鳴る「ミュージカル」タイプのもので、合わせておいた時間でオルゴールのように曲が流れだすようになっている

これはサキの「タリスマン」

長く「イドの闇」に留まれば、それだけ相手の目を引く

これで「イドの闇」へと繋がる時間を管理している

タリスマンは何も目覚まし時計であればいいわけではない

例えば、ホームセンターなどで新しい目覚まし時計を買ったとしよう

それが敵が用意したモノであったら?

最悪の場合、彼女達の暗躍が露見することになる

だが、買わずともずっと持っていたものなら別だ

「夢の牢獄」は現実世界そのもの

牢獄に繋がれる前から手元にあったものを書き換えるのは難しい

「夢の世界」での記憶の書き換えはあくまで、対象の「自分の欲望」に沿ったモノ

現にサキが「さやか」と真から教えられた方法でこの世界に意図的にバグを生み出しても、それに対して「敵」は彼女の記憶の改竄や干渉は行わなかった

恐らくはそれも誤差の範囲として処理されたのだろう

 

「ちょっと遅れてしまったかな・・・」

 

数週間前、此処で出会った少年「宇佐見真」

鉄仮面を付け、白いマントを翻したまるで絵物語に出てくるような「魔法少女」

その凛々しい姿を見て、サキは全てを思い出した

サキの妹の美幸を救った恩人である、和紗ミチルが魔法少女となり仲間達のいる劇団「プレアデス聖団」から去って行った

その事をサキにも伝えずに・・・

真とその「師匠」である杏子はミチルの代役として友人の伝手で知り、そして公演初日サキ、いやプレアデス聖団は真実を知った

プレアデス聖団の皆と袂を分かった「和紗ミチル」は「魔法少女」の辿る過酷な運命を知っていた

だからこそ、聖団の皆が憧れや一時の感情で「魔法少女」とならないように、自ら身を引いたのだ

それを身を持って教えてくれたのが、「鉄仮面の魔法少女」 ― 宇佐美真 ― だった

彼は自分の身体の秘密を伝えてくれた

 

― 魔法少女となることは人として死ぬことと同じ ― 

 

それを伝える為に、彼は皆が見ている中で「死んでみせた」のだ

 

「ミチルにはちゃんと言わないとね・・・・」

 

サキは一人、そう呟くと自分の姿を見る

もはや彼女は人間じゃない

「魔法少女」だ

何者かが、彼女を「魔法少女」にした

いや、彼女達だけじゃない

プレアデス聖団の皆も同じように何者かの手で魔法少女に「されていた」

そして一人残らず、真やサキと同じく夢の牢獄へ繋がれていた

カオルは女子サッカー選手としての華々しい未来

海香は小説家として大成し、プレアデス聖団と楽しく暮らす未来

みらいも里美も皆、自分の願いを夢の中で叶えていた

それはサキとて同じだった

楽しそうに笑い、人生を幸福の中で生きる仲間達

彼女達が幸せであるのなら、今私達がしようとすることは彼女達の幸せを奪うことなのではないか?

そう自分に問いかけたこともある

でも、その都度、ミチルの面影が脳裏をかすめる

ミチルに会い、そしてこのことを話さなければいけない

怒られるかもしれない

軽蔑されるかもしれない

でも・・・・

 

「私はもう逃げない」

 

闇の中を進むサキの目に光が見えた

 

 

「って、キミ達は何をやってるのかね?」

 

イドの闇の中に作られた、「魔法少女達の茶会」

円形の巨大なテーブルと地面から生えたような椅子

テーブルの上には品よく並べられた菓子やサンドイッチ、香りの良い紅茶が並べられていた

気品溢れる茶会

しかし・・・・

 

「うっ・・うっ・・・・・みらいさんのばかぁ・・・・」

 

半裸にひん剥かれて、胸を押さえて泣く一人の少女

灰色の髪と豊かな乳房、そして青色を多用した特徴的な格好からして・・・・

 

「泣くのは止めたまえ。キミも男の子だろう?真君」

 

聞いてみると、魔法少女への変身の際少年から少女へと変わる真の身体に興味があったみらいが、ちょうど一人でお茶の準備をしていた真の背後から抱きつき、その豊かな胸を思いっきり触診していたとのことだ

 

「だって気になったもーん!」

 

クマクマ!

 

隣の巨大テディベアも頷く

 

彼女「若葉みらい」の固有魔法は複数のテディベアを同時に操ることができる魔法だ

真はそれなりに強い魔法少女らしいが、背後からしかもクマ並みの力で拘束されたら逃げることもできないだろう

 

コィーン!

 

サキがみらいの頭を叩く

 

「反省しなさい!っても、確かに気になることは気になるな・・・・特に・・・・」

 

サキが真のプリーツスカートを見つめる

 

「って!サキさんも~~~~~!」

 

「そうだよね~揉まれたり指を挿入されても減るもんじゃないしね?」

 

「そうだなみらい。でも加減しないと・・・・・破れちゃうからな」

 

二人が真をジリジリと壁際に追い詰めていく

 

「い、いやぁぁぁぁぁ~~~~~~~~」

 

 

「遅れてごめん・・・・って、何で真が白くなってんのさ?」

 

「さ、さぁ・・・・・・・・」

 

カオルの問いかけに、みらいとサキは目を逸らした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いまさらながらに「たるとマギカ」を見る
・・・・・ジャンヌダルクの時代にはまだ銃剣は存在していないんだけどな

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