叛逆の物語って「始まりの物語/永遠の物語」→「叛逆の物語」で考えてみると、「始まりの物語/永遠の物語」が悪魔さんの回想って解釈もあるかなと思った四回目の午後
ギィ・・・・・・
重々しいドアが軋む音が響き、夜空に小柄なシルエットが浮かぶ
「ちょっと持っててくれ。今蝋燭に火を点けるから・・・」
小柄な少女が懐中電灯を傍らの同じ背丈の少女に手渡す
シュッ!
暗闇に一瞬光が踊ったかと思った瞬間、儀礼用の燭台に光が灯った
光がしっとりとした闇を払い、その場所を照らし出す
整然と並べられた長椅子
幾つも置いてある儀礼用の燭台
そして天井を見上げると、古風なステンドグラスが目に入った
此処は風見野にある、杏子の父親の管理していた教会
一応は教団の持ち物ではあったが、杏子の父親が建てた教会である為、彼ら家族が破門されても法律上はその権利は杏子の父親のものとなっている
一時期は教団の本部から、しつこく教会を教団に寄付するよう言われていたが、杏子の父親が海外修行の旅に出た後は急に静かになった
なぜ静かになったか、それはわからない
ただ本部で何人かの幹部が「急に」引退したことが原因だろう
その為、妹のももと母親と一緒に風見野から見滝原へ転居しても教会の鍵を杏子が持っていた
「大分埃が溜まってンナ。今、座れるようにするから」
杏子が掃除用具を取りに行こうとしたが、それを長身の女性が止めた
「私は大丈夫よ。それよりも私達に話したいことがあるのでしょ?杏子さん」
「織莉子・・・・そうだ」
白い髪の少女が傍らの少女 ― 佐倉杏子 ― を見つめる
今しがた、彼女達は潜入していた「あすなろ市」から脱出してきた
予想していたような追撃は無かったが、それよりも皆に暗い影を落とす出来事があった
魔法少女として、そして魔法少女を統べるリーダーとして皆の規範であり理想でもあった「巴マミ」の離反
それは三人の少女の心に傷を残した
「なぁ・・・あんたはいつからマミが裏切るってわかっていた?」
「・・・・・可能性は大分前からあった」
織莉子が淡々と話した
それには怒りも侮辱も含まれていない、冷徹までに感情を押し殺した話しぶりに杏子は感情を抑えることができなかった
「じゃぁ・・・なんであたしに言わなかったんだ!そうしてれば・・・・!」
「杏子・・・アンタね!」
呉キリカが身を乗り出す
彼女の怒りはわかる
呉キリカ、佐倉杏子は目の前の白い髪の少女 ― 美国織莉子 ― の機転で命を救われた
それに感謝することはあっても、怒りをぶつけられる云われはない
杏子が目を瞑る
わかっている
これは子供じみた、ただの「八つ当たり」だ
信じた仲間に裏切られる
それも姉のように慕っていた「巴マミ」にだ
杏子にとって、今の状態を理解するには誰かを悪人にしなければならなかった
結果、それで殴られても構わない
むしろ、彼女はそれを望んでいた
痛みがこの「心の痛み」を消してくれることを
何時まで待っても、望んだ痛みは与えられなかった
杏子が恐る恐る見ると、織莉子がキリカの手を止めていた
「杏子さん・・・、心が痛いのはわかる。でも、あたりかまわず喧嘩を売るのは良くないわ」
エメラルドのような織莉子が杏子を見つめていた
「じゃあ、どうすればいいだよ!マミはあたしたちを裏切った!操られたとか、洗脳とかじゃない!あたしにはわかる!自分から裏切ったんだ!!!!!」
「ならどうする!ただいじけて何もしないの?ただ当たりかまわず喧嘩を売って歩きたいの?杏子!貴方はどうしたいの!!!」
織莉子の気迫に杏子が気圧される
だが・・・・
「あんたはどうなんだ!裏切るってわかっていたのに何もしなかったあんたは!!!」
「可能性よ。裏切る確率があったとして、それを断罪するわけにはいかない」
織莉子の脳裏に自分が「かつての世界」で犯した凶行が過る
「じゃあ、なんであたしに伝えなかった!」
「伝えたとして、マミが考えを改めるように見える?むしろ、最初から私達を攻撃してきた可能性もあるわ。でもわたしは・・・・」
織莉子が一呼吸置く
「私はマミを信じたかった・・・・・・」
今でも後悔する
あの時、もっと早く「暁美ほむら」と出会ったのなら「運命」は変わっていたのだろうか?と
もっと人間の可能性、いや人を信じることができたなら「ワルプルギスの夜」もあるいは・・・・・
「織莉子・・・・」
夜の教会に沈黙が訪れた
「巴マミの気持ちは理解できる。だって人は一人では生きていけないから・・・・か」
杏子は一人そう呟く
結局のところ、三人は見滝原へは戻らなかった
人探しの基本は、家族や友人を見張る事
三人が戻った瞬間、相手が彼らを人質に取らないとは限らない
少なくとも、夜が明けるまではこの教会で潜伏していた方がいいと三人は考えた
杏子の管理している教会は一応、暖房や毛布はあるから一晩いても問題ない
「でもまぁ、お前に恋人が居たなんて初めて聞いたぜ?キリカ」
傍らには黒髪の少女
織莉子の言葉で二人とも怒りは収まったのか、古いダルマストーブの周りで暖をとっていた
「・・・・イウナヨ・・・・・」
あの時、怒りにまかせて言ってしまったとはいえ、自分に恋人がいると白状してしまったキリカの顔は赤く染まっている
「いいじゃんか。待ってくれる恋人が居るなんて・・・・」
「そういうアンタは真がいるじゃん!」
今度は杏子が顔をピンク色に染めていた
「真はだな・・・その舎弟で・・・織莉子の・・・」
「私がどうしたって?」
振り向くと、幾つものコンビニの袋を手にした織莉子が仁王立ちしていた
ヴァルヴレイヴ・・・・・・
どうやらギアスと同じく、OVA&パチスロで食っていくつもりだな
エウレカセブンAOと同じく、もうコードギアスなんて見もされていないのにね・・・・