鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下

マミと真琴は「ブランデーシロップ」で酔ってます
そう見えなくてもそうです


こどもの時間

― 思考がまとまらない ―

 

飲み干したティーカップを手に巴マミは考えに耽った

「助かりたい」、その一心で全てを捨ててやってきた「あすなろ市」

マギカ・カルテットのリーダーとして、皆を騙しながら・・

「男の娘向上委員会」を始め、少なくない協力者を裏切ってまでここへ赴くことを選んだ直接の理由はあの夜、宇佐美蓮助の告白を聞いたことだった

「巻き戻し」の固有の魔法を使い、20歳まで生きた魔法少女「宇佐美命」

彼女の存在は大きかった

マミにとって、それまで手の届かない願いにしか思っていなかった「女性の幸せ」を手にした真さんの母親

愛する者に出会い、結ばれてその胎内に彼との愛の結晶を宿した

そして子の命を助ける為に魔力を使い、彼女は満足してその身を「円環の理」へ委ねた

・・・・女として

羨ましかった

妬ましかった

悔しかった

私も「女性」として愛されたい、そして愛したい

この身を咲き誇る花の様に愛でられたい

野獣が哀れな犠牲者を貪るように弄ばれたい

でも・・・・

でも、私は「彼女」のように「巻き戻す」ことはできない

自分の手から零れ落ていくモノをただただ眺めることしかできないのだ

一度希望の味を知った彼女が堕ちるのに時間はかからなかった

汚れた感情は彼女を包み込み、その誘惑は留まることを知らない

愛、ひたすらにそれを求める彼女を責めることは誰にもできない

所詮、人間の忌み嫌う「欲」も、人が尊ぶ「愛」も突き詰めれば同じものだ

その時、あの夜に囁きかけられた「彼女」の声が脳裏を過った

彼女が言う通りに「人間」に戻せるのかどうかわからない

でも、今は彼女の言葉はマミがいつも口にする「言葉」よりも説得力があった

私は・・・・・

外道と罵られてもいい

裏切り者と蔑まれてもいい

私はただ「生きたかった」

 

 

「これを飲みたいかしら?」

 

目の前で真琴がブランデーの瓶を振ってみせる

ダークグリーンのフロスティーボトルの中で茶褐色の液体が揺らめき踊っていた

 

「・・・いいえ」

 

「そう?適量のブランデーは毒じゃなくて薬よ、実際一昔前ではブランデーは薬用として用いられたものなのよ。それにブランデーを用いれば、頑なな相手の心の内を見ることもできるし、初めて出会った人物と親友と呼べるまでに打ち解けることもできるわ」

 

巴マミは少し思案すると、彼女にブランデーを頼んだ

 

「今時、バルーングラスで揺らしながら飲むなんて柄じゃないわよね?一応、リーデルのスニフターグラスも用意してあるけど・・・どうする?」

 

「・・・・・ブランデーの飲み方なんて知らないわよ」

 

「なら淑女らしく、ブランデー・ジンジャーにしようかしら」

 

マミは静かに頷いた

 

 

真琴が作ったブランデー・ジンジャーは甘く、それでいてブランデーの芳香を失わずゆったりとリラックスできた

あまり、彼女はこういったモノを飲んだことはなかったが、間違いなく美味しいと言える

 

~ ・・・・・ ~

 

マミはそっと真琴を見る

彼女の作り出した「理想郷」

そこには魂を火にくべた「魔法少女」も、暗い感情に悩み苦しむ人間を救済する「魔獣」もいない

替わりに「魔女モドキ」がいて、魔力の宿った武器で戦う「少女」たちがいる

 

「教えて・・・・この街、いいえ・・・・・」

 

マミが意思を込めた瞳で真琴を見据えた

 

「この世界のことを」

 

「ええ」

 

真琴はマミのその一言を待っていたかのように答えた

 

カラン・・・・

 

テーブルの上で飲み干したグラス鳴った

 

 

「彼女達のことを私達は量産型魔法少女と呼んでいる・・・・」

 

彼女というのは、あの「魔女モドキ」の結界内で戦っていた少女のことだろう

確かに変身前は全く魔力を感じなかったが、変身してからは「魔法少女」と読んでも差し支えない程の魔力を感じた

しかし、量産型というのは・・・・・?

 

「量産型?それじゃあ、まだ何人かこの街にいるの?」

 

「ええ。魔獣程に魔女モドキが発生しないとはいっても、この街は見滝原並みに広大だから・・・」

 

そう言うと真琴は目を伏せた

 

「巴さんの知りたい量産型魔法少女の種明かしは簡単よ。貴方も知っていると思うけど、私達の使う魔力は特定の器物に宿らせることも可能。ついでに言うと、条件のあった一般人がそれを武器として扱うこともできるわ」

 

― 魔力を込めた武器 -

 

「魔力が無かった」のはもとから「無かった」から

それなら先程の疑問のつじつまが合う

魔力を貯蔵して、バッテリーのように扱えるのは真さんの母親が生成した「魂の欠片」で実証済みだ

どこかで誰かが同じことを考えてもおかしくはない

「魔女モドキ」とやらの強さはわからないが、現に一般人が魔力を込めた武器で倒している

しかしそれは・・・・・

 

「でもそれじゃあ!一般人を危険に晒しているだけじゃない!」

 

魔法少女は非常に危険が伴う

巴マミも魔法少女として戦う上で、普通なら死んでいるような怪我を受けたことは一度や二度ではない

異臭と、自分のお腹にヌメった「何か」が乗っていると感じて、コルセットを外してみると身体の中から腸がはみ出ていることさえあった

それなりに実力がある自分でさえ、そうなのだ

魔力のない一般人なら即、「死」に繋がる

 

「やはり巴さんも見抜けなかったわね」

 

真琴は愉快そうに眼を細めた

 

「この街は私達が管理している。そこにある絶望も希望すらも」

 

 

 

 

 




仮面ライダー鎧武

・・・・・面白れーじゃねーか

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