鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下します


希望と絶望の根源

見滝原中学校 中央図書室

 

此処には珍しい洋書や学術書や過去10年間の新聞のデータ、果ては指紋認証が必要となるが中学校に在籍していた学生の名簿まで収められている

ちなみに、なぜ此処が中央図書室と呼ばれるかといえば、向かって反対側の別棟にこことは毛色が違う第二図書室が備え付けてあるからだ

まぁ、第二図書室に置かれている書物の大半は、こういった学校の図書室にありがちな、ブラックジャックや火の鳥といった比較的PTAが許せる範囲の漫画や、ラノベといった娯楽書が主であり、今の真にとっては関係のない場所ではあったが

 

中央図書室は閉室間際ということもあり、真とさやか以外に生徒はいなかった

 

「えっと・・・・赤い髪で八重歯、背は私よりも低くて、真と同じくらい・・・うんで処女と」

 

「処女だなんて言っていないですよ!!!」

 

「え?!まさか非処女とか!そうだよね~真も男の娘だし・・・・ワイルドな女の子に誘われたらホイホイついて行ってケツを差し出しちゃうよね~~」

 

「もう・・・・どうすればいいのかわからないよ・・・・・」

 

「うそうそ!ちゃんと検索してるってば!」

 

さやかがコンソールに真から聞き出した記録を打ち込んでいく

今彼女が見ているのは全生徒の名簿

過去10年間の記録が記入されている

無論、それには転校した学生の記録も入力されている

最初に真から「赤い髪」と聞いた時は、どこかのアイドルなのか?とも思ったが、真が芸能風俗といったことに全く疎いことを考えるとまずそれはない

なら、テレビか新聞か、もしくは学校で少女を見たことになる

 

「あ、出た出た」

 

さやかがキーを叩くと空中にホログラムが浮かび上がった

 

「えっと・・・・佐倉杏子・・・」

 

赤い髪で、八重歯が覗く口元

それは真の夢に出てきた少女そっくりだった

 

「なぁ、真。こいつか?」

 

「うん。間違いないよ」

 

すぐさま、真が自分のスマートフォンに表示された住所をダウンロードする

 

「ありがとう!さやかさん!」

 

真は荷物を纏めると、図書室を飛び出した

 

「ったく、折角目の前に美人でテクニシャンの恋人が居るのに・・・・・ん?」

 

一体なんのテクニシャンなの?と突っ込みたくなるが、さやかが表示された記事に更に続きがあるのを見つけた

そこには・・・

 

「そんなことって!」

 

さやかの瞳が驚愕で大きく見開かれる

 

 

真は琥珀色に染まる街を走っていた

走りながら、そっとスマートフォンを見る

見れば見るほど、ここしばらく彼の夢に出てきた少女そのものにしか見えなかった

データによると彼女の住まいは学校から意外と離れていなかった

 

「・・・・・・此処?」

 

真が住所を確認するが、スマートフォンの住所に間違えが無い

彼の目の前、そこには火事で焼け落ちた教会が立っているのみだった

 

「そんな・・・・・」

 

真が再度、データを確かめている時だった

 

ガラッ!

 

教会の奥の暗がりから微かな物音が響いた

 

「誰か居るんですか?」

 

真は教会の暗がりへ足を踏み入れた

 

 

「これは・・・・・・・」

 

中は酷い有様だった

雨水で汚れ、判別不能になったなんらかの宗教的なスローガンが書かれたビラが散乱し、そしておおよそ宗教とは関係ないであろう大小様々な種類の酒瓶が無数に放置されていた

その中央

焼け焦げた祭壇に蝋燭が灯されていた

その前には一人の青年が祈りをささげていた

不意に青年が振り向いた

 

「ここは廃墟とはいっても、一応は個人資産だよ?」

 

よく通る「女性」のような声だった

 

「す、すいません!」

 

真が頭を下げる

 

「キミは・・・見滝原の子かい?」

 

「いえ・・その・・・」

 

「学校に通報なんてしないさ。ここには盗まれるものなんてないからね。食べる物さえなかったのだから・・・・」

 

青年が目を伏せた

その時、真は青年の目の端に涙の筋があることに気が付いた

 

「あの・・・涙を拭いてください」

 

真は懐からハンカチを取り出すと青年に渡した

 

「ありがとう・・・キミは優しいんだね」

 

青年は真からハンカチを受け取ると目元を拭いた

 

「ここは夢破れた男の墓標さ・・・」

 

「墓標・・・・?」

 

「そうさ・・・」

 

青年は辛うじて残っていた長椅子にゆっくりと座る

 

「君も座るといい・・・」

 

「失礼します・・・」

 

真が座るとギシッと啼くような音が響いた

 

 

「新しい時代に新しい信仰が必要、言いたいことはわかる。だが、アイツは世界を幸せにする前に自分の家族を幸せにしなきゃいけなかった。挙句の果てに、本部から破門されて一家心中さ・・・・」

 

「それじゃぁ・・・・」

 

「長女の杏子も一緒さ。杏子は中学生になったばかりだったんだ。俺は何度も助けようとした!でもアイツは俺の援助を断り続けた。本当はアイツを殺してでも、杏子やももを助ければよかったんだ!!!」

 

焼け焦げ、まるで墓標のようになった十字架が、長椅子にすわる青年と真を静かに見つめていた

 

 

「また此処に来てもいいですか?」

 

「ああ・・・その方が杏子も喜ぶよ・・・」

 

真は青年に別れを告げると、教会を出た

既に外は夜闇に包まれていた

教会の外では青い髪の少女が彼を待っていた

 

「さやかさん・・・・」

 

「帰ろう真」

 

「うん・・・」

 

もやもやとした思いが真の頭の中を渦巻いていた

なぜ死んだ少女が夢に?

その答えはいくら考えても出そうになかった

 

 

 

 

 

 

 

 




京騒動画がTV化
WEBアニメの頃から見ていただけに、内容が気になるところ

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