鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下


蓮助の告白

真の奴が消えた

アタシに「さよなら」も言わずに・・・

 

「何が消える時まで一緒に居ますだ!!!馬鹿野郎・・・・真の馬鹿野郎・・・・」

 

あすなろ市を見下ろす公園

そこには赤い髪を活動的なポニーテールにまとめた一人の少女が立っていた

彼女の名前は「佐倉杏子」

見滝原で活動している魔法少女であり、「宇佐美真」の師匠でもあった

数日前、彼女の弟子だった「彼」は、正体不明の敵に拉致された

 

「・・・・・・・・・・」

 

杏子が頭を上げる

そこには魔力で作り上げられた一つの街全てを覆いつくす結界が嫌でも目に入る

織莉子は言っていた

あの結界は「世界」を救うものだと

あのキュウベェが「宇宙」の熱的死を阻止するためにアタシたちに魔獣を狩らせているのは分かっている

それは「願い」を叶えてもらったアタシが払う対価だ

魔獣で殺されても誰もアタシは恨まない

でも、あの結界を作った奴はそうじゃない

そいつはこの世界からアイツらを追い出すためにアレを作ったのだそうだ

あの結界に入れば、魔法少女はインキュベーターの事どころか、自分が魔法少女であることすら忘れる・・・・・・・・・

 

また救えなかった

救うことができなかった

 

ヒュオォォォォォ・・・

 

アタシの目の前にはあすなろ市を覆う結界「楽園」

アレが起動して・・・・あすなろ市から魔法少女は消えた

織莉子が教えてくれた事は信じられなかった

だから、私は確かめに行った

 

「おや?アンタも同業者かい?」

 

アタシが見滝原市とあすなろ市の境界から内部に侵入しようとした時に別の魔法少女と出会った

彼女の名前は「三目綾」

アタシもマミも知らなかった風見台の魔法少女

彼女もこの「結界」が何なのかを調べに来たようだ

 

 

「・・・・・!ホントにか?」

 

アタシは綾に全てを教えた

織莉子からは別に情報を隠ぺいしろとは言われていないし、言われていたとしてもそれを守る道理はない

正直、今回はマミに黙っての行動だ

できる限り協力者は多く居た方がいい

アイツ、真ならこういうだろう

 

~ 情報は隠ぺいするよりもお互いにそれを共有した方が、全体が理解できる ~

 

ってな・・・・

 

アタシは綾に食べていたチョコの付いたクッキーの箱を差し出した

 

「お近づきの証さ」

 

 

 

「これがアンタの武器か!」

 

綾が出したのは鎧を付けた化け物みたいな馬だった

 

「そうさ!これがあたしの相棒、イダルゴさ!!!」

 

魔法少女の武器や魔法は魔法少女の願いによって決まる

マミの話では特大のロリポップ・キャンディーを鈍器みたいに使う奴や、縁がカミソリのように鋭い特大のスプーンで魔獣の首を狩る魔法少女もいるみたいだ

そう考えると、この馬からは強力な魔力を感じる

綾の願いは足の骨を折って「薬殺」を待っていたコイツを治すことだった

残酷にも思えるかもしれないが、馬は体重がかなりある

だから馬が足の骨を折れば完治することはなく、それどころか足から広がった壊疽が全身に広がっていって・・・・苦しみ悶えながら死ぬことになる

乗馬クラブで乗っていたイダルゴを助けたい一心で綾は魔法少女になった

与えられ魔法は「絶対防壁」

綾の愛馬にして武器でもあるイダルゴは綾が乗っている限り、ありとあらゆる攻撃を無効化できる

なんでもこの馬は、物や人を透過して結界にも入り込むことが可能なんだそうだ

 

「なぁ・・・・綾も、誰かを探しに行くのか?」

 

綾のショートボブの桃色の髪が揺れる

 

「友達が・・・・帰ってきていないんだ」

 

彼女の話によると、友人と一緒に風見台で活動していたそうだ

なんでも相方の武器はトランペットで、「あの日」は有名なジャズトランぺッターの演奏を聴きにあすなろ市に行って・・・・それで・・あの結界に取り込まれた

 

「じゃあ行くね」

 

綾は黒い毛並のイダルゴに跨った

 

「ちょっと待ってくれ!すぐ準備するから・・・」

 

アタシがソウルジェムを翳して魔法少女に変身しようとするが、綾がそれを静止した

 

「杏子はそこで待っていて・・・・」

 

「お、おい!」

 

「この結界は異常だよ。入った瞬間、何が起こるか判らない」

 

「なら尚更二人の方が!」

 

「二人とも行動不能になるなら意味はないわ。私の魔法は話したでしょ?」

 

そういうと、綾は杏子に数個のグリーフシードを手渡した

 

「私が侵入して、一時間たっても戻らないようだったら、杏子も此処から離れて」

 

「・・・・・・」

 

綾の瞳は澄んでいた

既に決意していた

 

「行くよ!イダルゴ!!!!!」

 

綾は武器であると同時に相棒でもある「イダルゴ」と共に結界に消えた・・・・・

 

 

「結局、綾も戻ってこなかった・・・・」

 

アタシの目の前には結界があり、それは少しずつ周囲を飲み込んでいた

 

「ここに真がいるのなら・・・・もうたった一人生き残るなんてやだよ・・・」

 

もう相棒が消えていくのを見たくない

ならいっそ・・・・

 

「いっそのこと安楽の園へ、かい?」

 

振り返ると黒髪の大柄な男が立っていた

その男にアタシは見覚えがあった

そいつは・・・

 

「真のおやじ・・・・?」

 

「いかにも宇佐美真の父親、蓮助だ。そして・・・・」

 

蓮助は言葉を止め、目を伏せる

 

「魔法少女を娶った男でもある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そんな・・・真の父親が救いようのないロリコンだったなんて!!!!!!!

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