鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下します


パフォーマンス・ガール

見滝原市 

再開発の著しいこの地では、見滝原中学校の様に近代的な建築物とクラシカルな建築物が入り混じっていた

そのなかでも異彩を放つのは緑化地区と住宅地の狭間にある「宇佐美邸」

大学で教鞭をふるう文化人類学者の宇佐美蓮助教授の邸宅はヨーロッパの貴族の邸宅を移転したことで有名であった

しかし、ここがある組織の拠点であったことを知る者は少ない

 

「マギカ・カルテット」本部 宇佐美邸別館

 

「魔法少女」になれる少年、「宇佐美真」の厚意で、別館を本拠地にしていたが、真の父親である「宇佐美蓮助」が帰国して以降は、暫く以前のように巴マミの部屋を本部にしていた

今日此処に集まったのは止むにやまれない理由からだ

幸いにも、真の父親は「止むに止まれぬ事情」で今、見滝原にはいない

真の機転で以前のように別館を使用できるようになっている

今回話し合う内容が内容だけに、魔法少女と関わりあいのない人物とはできるだけ接触したくないのが本音だ

しかし、別館のテーブルには同じ見滝原の魔法少女である、「美国織莉子」と「呉キリカ」も同席している

彼女達はマギカ・カルテットに敵対はしていないが、参加していない

つまりは「部外者」だ

彼女達が呼ばれたのは今ある全ての戦力で情報を共有しなければならない状況だからだ

ここに二人の人物が欠けていた

 

「暁美ほむら」と「宇佐美真」

 

あの巨大な結界にあすなろ市が包まれた日に、同時に失踪した

この二人には、同じマギカ・カルテットに所属している「魔法少女」であることと、同じ中学校に通っている以上の共通点はない

最初は「ほむらと真がデキてたなんて知らなかったぁ!」とか、「これはラブホでしっぽりずっぽりパコパコだぜ!」とか、軽口を叩いていた佐倉杏子ではあったが、ボロボロになりながらマギカ・カルテットに合流した美国織莉子からあすなろ市で起こった「魔法少女の連続失踪事件」を伝えられるとその表情は変わった

そして、二人が失踪した日の深夜12時にあすなろ市で展開した強大な結界

その魔力は膨大で、間違いなく魔獣ではなく彼女達と同じ「魔法少女」がその結界を生成させたものであることは疑いようがなかった

 

紅い髪の少女「佐倉杏子」は物憂げにシルバーブロンドの少女を見つめた

 

「全知」の魔法少女「美国織莉子」

 

老若男女全てを虜にする美貌の持ち主

彼女に出会ったのは、失踪した「美樹さやか」の調査で彼女達が乗り込んで来た時からだ

 

~ そういえば真が本気であたしと決闘したのもさやか絡みだったっけ ~

 

基本的に、佐倉杏子は非常に直情的な行動をとることが多いが、それは何も彼女が単に暴力的なわけではない

一見ぶっきらぼうにも見えるその態度は傷つきやすい内面を隠すための仮面であり、マギカ・カルテットに入ったばかりの真を「舎弟」という形で弟子にしたのは、彼女なりに真を心配しての行動だった

その根底にあるのは彼女なりの優しさ

あの夜、織莉子の魔法を使って円環に消えた「美樹さやか」の記憶を移植して、恭介に会いに行った真に決闘を申し込んだのも

あすなろ市で、真の決意を踏みにじった里見に吊るしあげて怒りを露わにしたのも

全ては、彼女が誰よりも大切に思う「仲間」達を守る為だった

でも・・・・

 

― 守れなかった ―

 

杏子が歯を食いしばる

あの日、いつもよりも瘴気が薄いから分散してパトロールを行おうと言わなければよかった

少なくとも真と一緒に居ればこんなことにはならなかった

また・・・・「仲間」を守ることができなかった

 

「だめよ佐倉さん・・・・・」

 

杏子が顔を上げると、そこに織莉子が立っていた

彼女の深い、エメラルド色の瞳がまっすぐに杏子を見ていた

有名議員の娘で、通っている学校も私立の名門校だ

白いプラチナのような髪に、輝くような白い歯

女のアタシが見ても織莉子は美人だ

同じ中学生なのにこれはあまりにも卑怯だ

それに・・・

それに「真」の許嫁だ

 

真から織莉子と許嫁の関係であると告げられて以来、杏子は真とはあまり会わないようにしていた

杏子は自分の感情というものをよくは理解できていない

ましてや男女が普通に抱く「初恋」という感情も経験していないのだ

彼女が真と織莉子が許嫁であることを聞いた時に感じた、頭の中に湧き上がったもやもやとしたアイマイナ気持ちが一体何を示しているかすらも・・・・

 

「これを使いなさい」

 

杏子の複雑な心境を知ってか知らずか、織莉子は懐から数個のグリーフシードを取り出すと杏子に渡した

 

「お、おい!」

 

本当は無償でグリーフシードをもらったことに対して、礼を言うのが普通ではあるが、感情が入り組んで思考の迷宮の中にいる彼女はただそれだけしか言うことができなかった

 

「いいから持っておきなさい」

 

織莉子からの言葉は少なく、しかし有無を言わせなかった

 

 

「皆さん、ここに集まって頂いたのは今後の活動を考えるためです」

 

巴マミが皆に声を掛ける

その表情に浮かぶのは焦燥

既に織莉子からことのあらましは伝えられている

だからこそ、自分の頭にある情報の重さに潰されないように、巴マミは必死に自らの役割を演じているのだ

 

「頼れるリーダー」巴マミを

 

 

 

 




「おりこ☆マギカ 別編」

どうにかしてSSに組み込めないかな・・・・

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