鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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風邪ひいてダウン中・・・・


赤い川

あすなろ市

紅い月が「アンゼリカ・ベアーズ」を照らしていた

その不気味な光は、普段は「かわいい」と形容されるテディベアを恐ろしげに見せていた

その地下

幾人の少女が忙しなく動き回ってい

その中の一人

オイルに汚れたツナギを着て、蒼い髪をポニーテールにまとめた少女が叫ぶ

 

「ジュ二!そのバルブを閉めて!!」

 

「はい!」

 

キュッ!

 

「紗々はそこのメーターを見ていて、圧がレッドラインに達したら赤いレバー、グリーンラインに達したら緑のレバーをそれぞれ引いてね」

 

「あいよ!!!」

 

明るい金色の髪の少女が景気のいい返事をする

彼女の人となりを知っているのなら、彼女がこのような態度をとることはないと知っている

紗々の心の奥にあるのは強烈な劣等感

だからこそ、彼女は魔法少女となり常に他人を追い落とすことしか考えていなかった

だが今はどうだ

彼女からはかつてのような劣等感は見られなかった

それどころか、紗々は年相応の笑顔を見せていた

 

アンゼリカ・ベアーズ地下 「フリズスキャルヴ」

北欧神話における主神「オーディン」が座る玉座であり、より高みにある為それに座れば地上の全てを見ることのできる代物とされている

とても広く、光に満たされた円卓のような場所には「8人の少女」と「1人の少年」が椅子に座っていた

皆、魔法少女であることはその目の前に固定されたソウルジェムから容易に想像できる

少女達はある目的の為に、「魔法少女」にされてここに拉致されている

「転生者」和紗ミチルが見たら怒りに震えているであろう光景だ

しかし、そのミチルとて、「装置」を形成する部品の一つとして椅子に座らされていた

少女達の瞳は硬く瞑られ、その手足からは生命の息吹すら感じられなかった

だが彼女達は確実に生きていた

それは弱弱しいながらも彼女達の魂である「ソウルジェム」が明滅していることからも明らかだ

ただ、目の前の少女達に例え抵抗する意識や力があっても、その手足を拘束するクローム製の拘束具から逃れられるものはいないだろうが・・・・

 

「お父様・・・・」

 

中央の小高い玉座に座るのは一人の少年

灰色の髪が特徴的な彼もまた、クロームの拘束具に固定されていた

そして少年の前には7人の少女達同様、オパールのような輝きを放つ卵形の宝石が鎮座する

少女が少年の頬をなぞる

その滑らかな肌は少年の肌触りよりも少女の肌触りに似ていた

 

「お父様、私が憎いですか?」

 

少年は答えない

なぜならば少年は先程の少女たちと同様の「処置」が行われていたからだ

今から少女がすることは少年にとっては「死」と同じ

かつて、魔獣の結界に飲まれた時、「ヒーロー」に助けられ、彼女と同じヒーローとなり「魔法少女」として戦うことを選んだ

故に、彼から戦う力を奪うことは彼を「殺す」事だ

だが彼女はそれを行わなければならない

インキュベーターの魔の手から人々を、いやこの世界を守るためにはどんな要素でも利用する。

そして犠牲が必要ならば、それを捧げる

例えそれが彼女の「父親」であっても・・・・

 

「お父様、お別れです・・・・・せめて優しい夢を・・・」

 

カッカッカッ・・・

 

少女が足早に円卓から離れる

少年の背後には一人の少女が座っていた

真琴は知っている

彼女「千歳ゆま」がいることで、真が死ぬ運命にあることを

最初は憎くて、とある世界線ではゆまを殺そうとしたこともある

だが・・・・できなかった

彼女が悪いのではない

悪いのは彼女を虐待し続けた両親とインキュベーターだ

だからこそ、彼女も「救済」せねばならない

彼女にも「楽園」へ行く権利があるのだから

 

カッカッカッ・・・・

 

「愛華・・・・」

 

真琴の仲間の一人「秦愛華」が出迎える

少女「宇佐美真琴」が言葉を紡ごうとするが、声がうまく出せなかった

 

「わかっているよ真琴」

 

蒼い髪をポニーテールにした少女が手元の操作盤を動かす

 

「救済の魔法少女の魂の欠片を作動させるわ!皆離れて!」

 

ヴィィィィィィィィ・・・・

 

高周波音が微かに響き、円卓にすわる少年少女達に付けられたクロームの拘束具が微かに光り始めた

その光はだんだんと強くなり、その場を柔らかなスカイブルーの光が包み込んだ

 

「意識レベルは安定、脳波、ソウルジェムからの魔力供給量も異常なし!」

 

紗々がメーターを見ながら、皆に報告する

傍らのジュニが真琴を見る

ジュニでも分かる

あの少年がは真琴にとって大切な人物であると

皆が少女の決定を待っていた

 

― 今なら「発動」を止めることができる ―

 

ドクン!ドクン!

 

真琴の体の中で、血潮が急激に巡りはじめる

彼女は知っている

この身体はインキュベーターの手によって既に死んでいて、それを魔力で無理やり動かしているのと同じであることを

そっと胸に手を当てる

例え、そうであってもこの動いている心臓は「嘘」ではない

 

「起動する!」

 

そして、ボタンを押した

 

 

その日、あすなろ市を包み込む謎の電波障害が発生した

原因は不明

ネットでは、アセッションだの、宇宙人だの、面白おかしく話を作る輩も大勢いたが、その真実を知る者は誰一人いなかった

 

 




頭イテェ・・・・・・・・・・

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