「プロジェクト・A」の主題歌ネタは卑怯だ!
「キミは?」
目の前には真琴が会いたかった「父親」である、「宇佐美真」が立っていた
顔を覆う鉄仮面のおかげで、彼の表情はわからないが警戒は怠らずいつでも戦闘に移行できる体勢だ
まさか「自分はお父さんに会いたい一心で来た未来の子供です」とはいえない
しかも彼には「全知」の魔法少女である「美国織莉子」がいる
「この世界」の織莉子が同じとは限らないが、ヘタな嘘は見抜かれてしまうだろう
なら・・・・
「わたし・・・私を弟子にしてください!」
「えっ?!」
真の鉄仮面で表情は分からないが、その仕草はから驚愕が見えるようだ
そして織莉子の方は真ほどの感情は見えないが、彼女も彼女なりに驚いているようだ
「お二方の息のあった戦闘を見て感銘を受けました!だから、私を弟子にしてください!!!!!」
真自身、他の魔法少女と戦うことは初めてではない
織莉子のバディになり、幾つもの戦いを真は経験してきた
自分の欲望の為に魔力を使い、追いつめられた魔法少女は獣にも劣る
だからこそ、手を抜いてはならない
はずだったのだが・・・・
~ ううっ・・・・この娘は・・・・・ ~
真の目の前には雨に濡れた子犬のような瞳で真に無言のプレッシャーを与える少女
獣のように戦う連中を御する方法は幾つもあるが、このような方法をとられては、真には打つ手なぞない
真は必死に織莉子に助けを求める
織莉子は真の教師であり、血の繋がらない姉ともいえた
真が魔法少女となり、こうして戦っているのは彼女が魔獣から真を助けたからだ
後に、彼女が「許嫁」であるとお互い知ってからは、真は進んで彼女のサポートをかってでた
そしてインキュベーターからの提案で彼は「魔法少女」となった
タッ!
白いドレスのような魔法少女形態をとった「美国織莉子」が真琴の目の前に立っていた
シュオン・・・シュオン・・・
混乱し、戦闘形態を解いてしまった真と異なり、織莉子は先ほどの魔獣を攻撃した時のように幾つもの水晶球を浮かべていた
真琴が裏切って攻撃しても、その攻撃が二人に届くよりも先に彼女は滅殺されてしまうだろう
下手に動くことは死を意味する
真琴ができることは、石のようにその場に立っているしかなかった
「・・・・・場所を変えましょう。貴方名前は?」
織莉子は静かでありながら、しかし有無を言わせぬ迫力があった
「茉子っていいます。師匠!」
「いいわ茉子、詳しいことは私達の本拠地で聞きましょう。・・・・・貴方にその勇気があればだけれど?」
真琴に恐怖心はない
辞典を読むにつれ、彼女達は無意味に戦いをすることはない
力の意味と力の本質を理解しているからだ
「はい!よろしくお願いします」
真琴は二人と一緒により深くなった闇の中に消えていった
「ここは・・・?」
「私達の本拠地よ」
目の前には日本では、なかなかお目にかかれないような西洋の洋館が立っていた
「驚くのも無理はないわ」
辞典にあった通り、彼女達の本拠地は父の家の別館だった
とはいえ、こんなに大きな洋館であるとは思っていなかった
「さぁ、お入りなさい。お茶くらいなら準備できるから」
二人に手を引かれ、真琴は宇佐美邸に足を踏み入れた
「で、貴方は何を望んで魔法少女になったのかしら?」
変身を解いた織莉子が真っ直ぐに茉子 ― 宇佐美真琴 ― を見る
二人の目の前には暖かなミルクティー
真が準備したものだ
粗さはなく、その作法も味も完璧だった
「私は・・・・全ての世界を見たいと願いました」
「全ての世界?」
「ええ。この世界には綺麗な事もあるけれど、でもそれと同じくらい恐ろしく汚いこともある。だから、自由に世界を見る能力があれば、私の小さな手でも救える人々もいるんじゃないか?そう思ったからです」
「そう・・・・・」
織莉子は静かに目を閉じた
「全知」の魔法少女「美国織莉子」
彼女は絶望の縁に追い詰められつつあった父親を救う為に、「全てを知る事」を望んで魔法少女になった
それ故、彼女の理由に嘘は見えなかった
「魔法少女は楽じゃないわよ?」
「ええ!だから弟子になって実力をつけたいんです!誰でも守れるように!」
「・・・・・認めるわ。弟子入りを」
織莉子が表情を緩めた
「よろしくお願いします。茉子さん!」
真が彼女に手を差し出す
「はい!真さん!」
真が怪訝な表情で彼女を見る
~ あれ?僕は名乗ったっけ ~
「あれ?織莉子さんの方でしたか?」
真琴は誤魔化した
幸い、二人に気付かれることはなく、その夜は終わった
その日から私は二人の「弟子」になった
・・・・・・幸せだった
二人に実の「娘」であることは言い出せなかったが、それでも二人は私に色々なことを教えてくれる
きっと・・・・本当の親子の関係もこんなふうなんだろうな・・・・
私が生まれた理由「使命」を忘れ、自らの幸せに浸りきった頃それは起きた
「そんな・・・・・・!」
私の目の前には一人の少年が倒れていた
その瞳には光はなく、その身体もゴムの塊のように生命力の欠片も感じなかった
私の父である「宇佐美真」は私を守って死んだのだ
お盆過ぎても暑い・・・・