鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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選ばれなかった「モノ」

カツカツカツ

 

舗装のされた道路を黒髪の少女が歩く

辺りを予断無く監視を続けるが、しかしその表情は暗い

 

「すべての絶望を打ち砕き、彼女達を魔法少女にさせない」

 

全ては完璧だった

時にはその手を汚したこともある

そのおかげで、彼女たちは安易に魔法少女となることはなかった

あのサキでさえ、契約を躊躇させた

だが甘かった

彼女のこれまでの行動の全ては「かつての世界」で力尽きて「魔女」となるまでの、極々限られた範囲の記憶が基になっている

故に「かつての世界」で起きなかった、この事件は予見することはできなかった

 

「全知」の魔法少女 美国織莉子

 

彼女の明かした真実

それは私が消え去った後のプレイアデス聖団の末路だった

彼女達は魔法少女の魔女化という事実に屈することなく、それを乗り越えるようとしていた

「魔法少女」にかかわる事柄に関する記憶を全て書き換えて、インキュベーターそのものを認識することができなく、端的に言えばインキュベーターを「殺す」為の「箱庭」

インキュベーターの死体を利用した、グリーフ・シードを使用しない「浄化システム」

残された彼女達は、絶望に屈せずなおも希望を捨てずに戦っていたのだ

例え、その先に倒れ伏す未来しかなくとも・・・・・

彼女達は間違いなく、ミチルが夢見て目指した「希望の魔法少女」そのものだ

 

「・・・・・でも織莉子さんは嘘つきよ」

 

「誰だ?!」

 

昇りかけの紅い月を背に、一人の少女が立っていた

先端がクルリと渦を巻くようにカールした黒い三角帽

その肢体を包む、黒革のボディースーツ

ボディースーツは所々、ジッパーが付けられていて、観ようによっては粗雑に縫った傷口のようにも見えた

 

「!」

 

少女の顔に月光が射す

 

「織莉子さんは確かに貴方に真実を告げた。でも現実は違う・・・・・。彼女は意図的に話を変えた。あのインキュベーターのようにね」

 

「お前は何者だ!答えろ!!」

 

ミチルが変身し、黒い杖を突きつけた

しかし、その杖の先端は微かに震えていた

信じたくない!

そんな・・・・

そんなことって!

 

「あら?言わないでもわかるんじゃない?私の正体が!」

 

少女が一歩近づく

 

「来るな!!!!」

 

ミチルが取り乱す

言い知れようのない恐怖がミチルを包み込む

 

「プレイアデス聖団はミチルの、いやかずみの復活もその大願としていた。魔女から摘出した心臓とニコが生み出した複製体を使ってね」

 

ミチルを少女の真紅の瞳が捕えた

 

「少女らしい考えよね?失敗した時、どうやって後始末するのか?全く考えずにね・・・・・・」

 

少女が顔を上げる

その顔はミチルのよく知っている人物の顔だった

ガーネットのような紅の瞳

猫のような癖っ毛

 

「あ・・・あなた!」

 

ミチルの瞳が驚愕に見開かれる

 

「そうよ・・・・・そうよ!私は貴方になりそこなった不良品よ!」

 

髪の色こそ違うが、目の前の少女はミチルそっくりだった

否、「そのもの」だった

 

「プロドット・セコンダーリオ!」

 

シュオン!

 

何時現れたのか、もう一人の少女がミチルを背後から拘束する

 

「クッ!」

 

ミチルが身を捩るが振りほどくことすらできない

 

「織莉子さんはあなたの為に、話をオブラートに包んで話した。あなたは事実を知る責任がある」

 

少女がその白い手を天上にかかげた

 

「見なさい!貴方の愛した悪魔達の所業を!!!!」

 

ミチル達を結界が覆い尽くした

 

 

「やめろ・・・やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

それはまさに「悪魔」の所業

彼女達の負の部分だった

 

「いいや止めない!見なさい!アイツらは常に完璧なかずみを望んだ。やれ髪の毛のツヤがおかしい、やれ料理が下手だ・・・・・そんな下らない理由で私達は不良品の烙印を押されたのよ!」

 

記録映像が変わる

 

「幸い、サキは処分するって言って彼女達から私達を保護してくれた。・・・・・・・でもそれは私達をその穢れた欲望の捌け口にするためにね!」

 

結界に映し出されたもの

それは彼女の心を打ち砕くのに十分だった

 

「うぇっ・・・・げっぇぇ・・・」

 

ミチルは吐き気を抑えることができなかった

それをミチルの複製体「水華ジュニ」が冷やかに見つめる

 

「あらあら、口では勇ましいことを言っていた癖に、意外と豆腐メンタルなのね?」

 

「嘘だ・・・・・サキが・・・・サキがそんなことをするわけがない!」

 

「あら?そうかしら。人権のない、何をしてもいい人間を手に居れたらどんな善人でも外道になるわ。特にアイツは、貴方のことが好きだったからね」

 

嘘だと信じたかった

この目の前の映像も虚構だと言いたかった

でもできなかった

感覚でわかる

これは私が消えた後、「かつての世界」で起こったことであると

 

~ 頃合かしら ~

 

「強すぎる願いはまた強すぎる呪いを撒き散らす。貴方もルールから逃げることができなかっただけよ」

 

ミチルの返答はない

ミチルは既に心折れていた

 

「トッコ・デルマーレ」

 

ミチルの身体から抵抗なく、ソウルジェムが抜き出される

 

「貴方も楽園の礎になりなさい」

 

ミチルのソウルジェムは濁っていた

かつての仲間が「悪魔」となってしまったことに、打ち砕かれていた

 

 

 




サキがやっていたこと

かずみ複製体(ロリロリボディ)に幼稚園児ルックさせて、「おねぇちゃん大好き!」と言わせる

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