鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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またガキどもの万引きを取り締まる仕事が始まるお
うつうつします


オニゴッコ

 

「え?!何!」

 

背後からの声にサキは振り向いた

その瞬間だった

 

ジュュォォォォォォォォ!!!!!!!

 

シュウ・・・・・シュゥゥゥゥゥ!!!!

 

腐敗する植物特有の悪臭が立ち込める

サキは思わず、えづきそうになるが口を覆う

 

「これ・・・・・何が起こっているの?」

 

植物園の誇る様々な植物がみるみる萎れ、そこからは見たことすらない異常な植物たちが生え育ち、辺りを埋め尽くす

以前テレビで放映された、植物の成長を早回しの映像を見ているかのようだ

ただ以前見たような感動的な映像ではなく、ただただ嫌悪感しか感じない

しかも、植物たちは脈動し、散策ルートや窓を塞いで行く

サキが背後を見る

もうすでに植物が退路を塞いでしまっていた

その光景はまるで「緑の檻」

 

「逃げなきゃっ・・・・・・・!」

 

サキが荷物を忘れ駆け出した

 

タッタッタッ!!

 

サキは何も運動部に所属しているわけではないが、劇団でのトレーニングの成果か、彼女はカモシカのように滑らかに緑の闇を走る

途中、得体のしれない根が触手のように彼女を捉えようとするが、それを難なくすり抜けていく

だが既に此処は彼女の知っている植物園ではなかった

ガラス張りの壁を見るが、そこには見慣れた外の風景は映っていない

ただ無限の闇が広がっているだけだったのだ

恐怖に駆られたサキがいくら走っても走っても、出口はなくただただ暗い緑の森が広がっていた

 

「これって・・・・・!」

 

サキは逃げながら、この湿った墓場の空気のような感覚を思い出した

それは、あの日サキが魔法少女となった「和紗ミチル」を見つけた空間

「魔獣の結界」のようだった

なぜ私は魔獣に襲われている?

逃げながら周りを見渡す

あの日に見た顏の輪郭がぼやけた恐ろしげな「白い巨人」の姿は見えなかった

それどころか・・

 

「まるで私を奥に誘導しているみたい・・・・・」

 

バシィィィィィィィィィ!!!

 

バキ!グシャァ!!!

 

緑色の枝が鞭のようにしなって看板を切り裂き、ツタは飢えた頭足類のように壁に絡みつき粉砕する

サキの周りを埋め尽くす、この得体の知れない植物たちは彼女の障害になりそうな物をあらかじめ破壊し、その進む先を開けていた

サキは暫し、足を止める

別のルートを進むこともサキは考えるが、既に植物が埋め尽くして彼女が進むことのできる道は自ずと限られていく

もはや彼女に退路はなかった

 

「進むしかない・・・・・」

 

この先にあの「白い巨人」がいるのか?

それはわからない

今彼女にできることは自分が、この「何者か」に従っているように見せかけて、隙を見てもてる手段を尽くしてなんとか脱出するほか方法はない

 

「待て、而して希望せよ、か・・・・・」

 

ミチルと劇団「プレアデス聖団」を結成しての初めての公演演目「岩窟王」

サキは、その主人公「エドモン・ダンテス」が口にしていた言葉を呟いた

 

 

サキは注意深く、そして観察しながら暗い森の道を進む

奥に進むにつれて、濃くなっていく闇に怯えながらも彼女は周りの状況を観察する

今の状況を打開する手立ては何かないか、それを探るためだ

とはいえ、ミチルと友人であるだけの、何の力もない彼女に人を害する悪意の塊である「魔獣」と戦うすべは何もない

だが、彼女には「希望」があった

魔法少女「和紗ミチル」

彼女がもしかしたら助けに来てくれるかもしれない

そんな淡い期待が、ともすれば心折れる寸前の彼女を支えていた

 

「結局、私はミチル無しでは生きていけないか・・・・」

 

サキが何の気なく、そう呟いたその瞬間だった

 

ギュァァァァァァァァァァァ!!!!!

 

周りの植物が一斉に叫び出した

それどころか、茨がついた枝がサキを縛り付けるかのようにあたりを動き回る

身の危険を感じたサキが走り出した

恐怖に足が竦むが、ここで歩みを止めたらこの植物に蹂躙されるに違いない

手足を引き裂かれるか、それともバラの茨が幾条の血の線をサキの白い肌に刻むのだろうか

どちらにしてもサキに危害が加えられることは間違いない

 

「出口?」

 

通路の先に光が見えた

先に何があるのか、それはわからない

 

「ええい!!!」

 

覚悟を決めたサキは目を瞑り、何も感じず光の中に飛び出した

 

「・・・・・・・?」

 

清涼な水と光に溢れた場所にサキは立っていた

あの日見たような荒涼とした砂漠はなく、同様にあの「白い巨人」もその姿を現さなかった

巨大な池の中心から生えた巨大な蕾

それはサキの目線の高さまでの大きさで、全体はもっと大きい

そして、その下には茨を編んで作った鳥かごが備え付けてあった

その茨はまるで意思を持っているかのように蠢いている

その悍ましさにサキが怯える

 

ガラッ・・・・

 

サキが瓦礫を踏んでしまった

 

「!」

 

蕾が開き、巨大な瞳がサキを見つめる

その瞳は、まるで「愛する者」出会えた恋人のように潤んでいた

 

ビュルゥゥゥゥゥゥゥゥン!

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ツタが伸びサキを捉え吊り上げる

 

『助かりたいかい?』

 

「へ?」

 

何時の間に現れたのか

サキの目の前に白いウサギと猫を掛け合わせたような生き物が現れ、サキを赤いルビーのような瞳で見つめていた

 

 




「ガッチャマン クラウズ」

戦闘服(赤と黒のゴスロリドレス)に着替える累きゅんがエロい

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