鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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前話は今話は繋がっています
でも前話は「あくまで」別の世界線でのお話です



激情

 

ぼんやりとした視界

ゆっくりと真の精神が覚醒する

そして覚醒するにすれ、徐々に周りが見えてきた

 

~ ・・・・・此処は? ~

 

真が周りを見る

真の部屋は一変していた

白い海を思わせるような、シミ一つない清潔なシーツ

真のベットのシーツは黒色だ

こんな上質のシーツは使ってはいない

おまけに、彼のベットはこんなにも大きくはない

自分の置かれた環境を確かめる為に真が立ち上がろうとする

しかし、彼の身体はまるで石のように重く、自分の身体なのに指一本動かすことすらできなかった

唯一、動かせるのは二つの瞳だけだった

 

「・・・ハァ・・・ハァ・・ハァ・・・・・アァァァ・・・」

 

何処からか艶やかな女性の嬌声が聞こえる

それと同時に水っぽい、何かを掻き回すような音も・・・・

真でもそれが何を意味するのかは理解できる

でもなぜ?

彼の疑問に答えたのは月光だった

不意に厚い黒雲の合間から、青白い月明かりが見慣れない部屋に差し込んだ

月光は部屋の中を包み込み全てを曝け出した

 

~ ?! ~

 

彼の見慣れた人物がベットに横たわる真の上に座り込んでいた

 

~ 織莉子・・・・さ・・ん? ~

 

ギシ・・・・ギシ・・・・ギシ

 

織莉子はその肢体全てで、物言わぬ彼を「愛して」いた

彼女の表情は羞恥とも、恍惚ともとれる表情で彼を見つめる

その激情は彼の心を貫いた

 

~ やめて!織莉子さん!そんなことをしてはいけない! ~

 

真が身動きのできない身体であることを忘れて叫ぶ

しかし、彼は呻き声さえ出すことはできなかった

ただ彼女を見つめることが彼にできる全てだ

 

「ごめん・・・なさい・・・真さんを引き戻したのは私の罪・・・・」

 

更に強まった月光が織莉子自身を照らす

 

~ ?! ~

 

かつては老若男女が恋する美貌を誇った「美国織莉子」

しかし、彼女の白銀のシルバーブロンドは色褪せ、痛み果てぼさぼさになっていた

凛とした彼女の表情も、心労故か疲れ切っていた

彼女に何が起こったのか?

真は静かに耳を澄ました

 

「本当は戦いを終えた貴方を理に委ねなければいけないのかもしれない・・・でも!」

 

織莉子は泣いていた

その情念を

自らの内に滾る激情を吐き出すように

 

「刹那の刻でもいい!私の身体に貴方の生きた証を刻み込んで!!!!!」

 

彼女の動きが更に激しくなり、「彼女自身」の熱に真の「男性自身」が飲み込まれた

そして二人の「繋がり」から強い麝香の香りが漂うとともに、真の意識は闇に包まれた

消えつつある最後の視界

それは泣きじゃくる織莉子が真の身体を抱擁する姿だった

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

真が目を覚ますと、そこは見慣れた真の部屋

ベットのシーツの色は黒色で、昨日眠りに就いた時のままだ

 

「・・・・夢?」

 

夢にしては現実感があり過ぎた

身動きできない彼を強制的に「愛した」織莉子

今でも「男女の営み」の麝香にも似た芳香がまだ鼻に残っていた

 

 

今夜は土曜日ということもあり、「マギカ・カルテット」が集まっての討伐が予定されていた

だから本当は身体を十分に休ませていなければならない

だが、今は部屋で休む気にはならなかった

父の蓮助は「大事な用」があるというので、ここ数日家を空けている

予定では月曜日に帰宅することになっているので、真が今回の討伐に参加するのは問題がない

とはいえ、暫定的に「マギカ・カルテット」の本部は巴マミの自宅マンションに戻っている

巴マミの部屋に招かれたのは今回が初めてだ

悪い事とはいえ、ついつい周りを見渡す

今は亡き両親の趣味か、高価なアンティ―クの調度品が置かれていた

それも嫌味にならないよう、さりげなく置いてあるところに巴マミの性格を現していた

 

「おや?何まじまじ見てんだよ真。あ、今夜のオカズに使うつもりなんじゃないか?え?」

 

「杏子さん何言ってんですか!!」

 

「叔母さんが言っていたぜ!童貞は匂いでもオカズにして、猿のようにオナ・・・・」

 

「復活のマスケット突っ込み!!!」

 

コィーン!!!!

 

久方ぶりの巴マミの「マスケット突っ込み」が杏子に炸裂する

 

「・・・・・自業自得ね」

 

さらに暁美ほむらの「養豚場の豚」を見るような目で杏子を見る

 

「・・・・きっと杏子さんの所為であんな夢を見たんだ・・・そう!そうに違いない!」

 

真はとりあえずそう結論づけた

 

 

「かつて古代人は夢を別の世界へ干渉する手段と考えた・・・・」

 

金色の髪の少女が見滝原を一望できるホテルの一室で一冊の本を紐解いていた

 

「ブエノスアイレスの盲目の司書」こと、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの著作「伝奇集」

その一篇「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」

ある知識階級が「お遊び」として作り出した「架空の古代国家」

それが現実を侵食し始める、という筋書きの幻想小説だ

 

「では、夢と現実を分けるモノは何かしら?ジュ二」

 

ジュ二と呼ばれた白い髪の少女が真紅の瞳で彼女を見つめながら答える

 

「起こしてくれる人がいるかどうか?」

 

「ええ、その通りよ。現実にはそれほどしか価値がない」

 

少女が手を広げる

 

「ならば私が導こう!全ての魔法少女を楽園へと!」

 

少女が慈愛に満ちた笑みを階下の街へと投げかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて今章では話の根幹に関わる設定も多いので、NGシーンはないです
決して、ネタがなくなったとかでは・・・・

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