鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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今回はちょっと短いです


第八章 愛しき者は全て去りゆく
第八章 愛しき者は全て去りゆく


 

 

ザァァァァァァァァ

 

冷たい雨が一人の少女を包み込む

少女は真珠のように輝く白いドレスを着ていた

しかしその瞳には光はない

少女の目の前には灰色の髪をした少年の遺体

目を瞑り、まるで寝ているかのようにも見える

だが、揺り起こしても彼は目覚める事はない

 

 

その日はいつもと変わらない「はず」だった

私は何時ものように真さんに「ゆま」を預けて、探偵としての依頼をこなしていた

本当に変わらない一日だった

 

「ゆま、きょーこは嫌なの!マコトお兄ちゃんと一緒に行くの!」

 

「おい!少しは真の都合もだな・・・」

 

ゆまの深い緑色の目が杏子を刺し貫いた

 

ドクン!

 

心臓が早鐘を鳴らす

 

― 何なんだコイツ!なんて目をしてやがるんだ! ―

 

そして・・・

 

バタッ!!!

 

「杏子さん!どうしたんですか!!!」

 

真が杏子を起こした

まるでゴム人形のように彼女に力はない

 

「杏子さん、すみません!」

 

真は杏子の胸に手を入れる

身体に異常は見られない

しかし、杏子の力は非常に弱弱しかった

なら、ソウルジェムに何らかの異常があるとしか考えられない

 

ペンダントに固定された真紅のソウルジェム

 

「・・・・どうして!」

 

固まりかけの血のようにどす黒い光を放っていた

明らかにソウルジェムの穢れが溜まっている

それも危険な段階だ

 

「マコトお兄ちゃん・・・これで一緒にお買い物に行けるね?」

 

少女「美国ゆま」は微笑んだ

 

 

灰色の髪の少年

彼との出会いは、偶然出会った一人の少年を絶望から救うために、二人で協力した時以来だ

彼は優しい

故に一人の少女を救う為に自らの「能力」を限界まで使った

 

「穢れを魔力に相転移させる」

 

理論上、ゆまの穢れを全て吸い込むことができるはずだ

だからこそ、彼は「ゆま」を救い出そうとして・・・・その生を終えた

彼が救い出そうとしたゆまも自らの結界の中で、蘇った記憶に押しつぶされて消えた

 

「う・・・うぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

少女の慟哭は降り続ける雨音に消えていく・・・・

 

 

「・・・・・・・・ごめんなさい」

 

黒い闇に包まれた織莉子の部屋

クィーンサイズの豪華なベットに横たわるのは灰色の髪の少年

白いドレスの少女はベットの周りに、金色の円盤を幾つも浮かべる

これからすることは禁忌の呪法「死者蘇生」

死んだ「少年」の身体に「生きていた時の情報」を直接書き込み、それを魔力で安定させる

彼女は聡明だ

この方法で少年は戻ってこない

成功しても、それは「過去の記憶」と「過去の行動」をなぞるだけの肉人形が生まれるだけだ

でも

彼女は聡明である前に「一人の女」だった

愛しき者が去りゆくのを黙って受け入れることはできなかった

彼女にはそれを行う権利と能力があったのだから

 

「現実創造!!!!!!」

 

ヒュオォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

空中の円盤が高速回転する

 

「戻ってきて!!!真さん!!!!!!!」

 

少女の名は美国織莉子

またの名を「全知」の魔法少女という・・・

 

 

 

 

 

 

 




では八章を始めます

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