鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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二人の姫騎士

「マスター、入口で哨戒しておりましたコンバットバトラーのクラウスが何者かにやられました。バイタルサインから推測するに、行動不能状態ですが生命に異常はないようです。」

 

長い丈の黒いスカートとレースのあしらわれたクラシカルなヘッドドレスを身に着けた、黒髪の女性が久臣に告げる

女性の立ち振る舞いは完璧な礼法に裏打ちされた、非常に洗練されたモノ

しかし、それと同時に「主人」を悦ばせるためだけに、獲物を駆り立て蹂躙する「猟犬」のみが持ちうる「愚直さ」をも持ち合わせていた

 

「クラウスはコンバットバトラーとしては古参。実力もそれ相応。それが為すすべもなく倒された以上、越権行為ではありますが、速やかな離脱を進言致します」

 

「了解する。ゆまに準備させておいてくれ」

 

「了解致しました、マイマスター」

 

女性はスカートにマウントされている革製のホルスターから指揮棒にも見える、銀細工の施された三十センチ程の大きさがある棒状の物体を引き出すと、それを袖のスライドホッパーに装着する。

 

「彼女はスティレットナイフ使いか。相変わらず、お前のトコのメイドは物騒だな」

 

傍らの蓮助が呟く

 

「本当は彼女達にも頼りたくはないのだが・・・・・」

 

コンバット・バトラーとガード・メイド

それぞれ執事とメイドとしての礼法を修めつつ、同時に武術のスペシャリストとしての顔を持つ、美国家を守護する存在だ

今回の許嫁披露パーティーは実のところ、敵対勢力からの何らかの妨害があると久臣はみていた

故に実力者たちを選抜し、万全の体勢を整えていた

そのはずだった・・・・

 

「彼女が離脱を進言するということは、既に穏便に済ませられる段階ではないことだ。つまりは・・・・」

 

久臣の脳裏に愛しい愛娘の「美国織莉子」の姿

 

「久臣。お前の苦悩もわかるが、お前の娘も俺の息子も魔法少女だ。心配するな、とは言わないがな・・・」

 

「大した親だな・・・・俺もお前もお互い、自分の子供を見捨てるなんてな」

 

久臣が自嘲を込めて呟く

 

「見捨てる?違うな。俺たちが居るなら二人は本気で戦うことはできない」

 

蓮助が目を伏せる

 

「親が子に出来ることは、守ることだけじゃない。信じることもだ。」

 

「マスター、準備ができました」

 

メイドの一人に連れられ、二人はバックヤードを通り最上階へと離脱する

 

 

二人の為に用意された控室

そこで二人はバックギャモンに興じていた

 

「真さん感じた?」

 

織莉子が周りに目くばせする

あれほどいたメイド達の姿が見えない

異常はそれだけではない

先程、入口の方向から二人は魔力を感じた

直ぐに消えてしまったので、それが「魔法少女」のものか、「魔獣」のものかは判断できなかった

 

「ええ。でも・・・・」

 

真が口ごもる

一般人が周りにいる以上、「魔法少女」としては戦うことができない

ここには「美国久臣」も「宇佐美蓮助」もいるのだから

 

♪~~~~♪♪~~~

 

「ごめんなさい。私の携帯よ」

 

ビィィィィィン!!!!

 

「僕の携帯にもメールが・・・」

 

 

― 今、旧友と一緒に最上階のラウンジでカクテルを楽しんでいるから、バックギャモンに区切りがついたのなら、来てくれ ―

 

 

「・・・・織莉子さんも?」

 

「ええ・・・・・・」

 

やや呆れ顔で織莉子が頷く

 

「でもまぁ・・・」

 

真と織莉子の手の中で、ソウルジェムが光り輝く

 

「「これで本気で戦える!!!!!」」

 

一人は童話の中のお姫様のように、輝くドレスとそれに見合った美貌を誇り

もう一人はその熱情を鉄の仮面の裏に隠し、銀のガントレットを鳴らす

花が咲くように、二人の「魔法少女」がそこに立った

 

「行くよ!織莉子さん!!」

 

「ええ!!」

 

二人の姫騎士は駆け出した

 

 

NGシーン

 

黒髪の少女が舞う

 

ヒュン!!!!!

 

風切り音を立て、青みがかった白刃が空間を切り裂く

 

イタリアのスティレット

 

古くはミュレットと呼ばれた短剣がその元となった、シチリア島で伝統的に使われている「決闘」の為の大型ナイフ

彼女の名前は「黒崎綺麗」

美国家を守護するガード・メイドの一人だ

長身の彼女であっても、80センチ以上もあるフルサイズのスティレットは大きすぎる

故に斬撃が大振りになるのは仕方がなかった

 

「ご覚悟を」

 

執事姿の初老の男性が銀の光を手の中から迸らせた

彼の名は「クラウス・クラウド」

彼も特別な訓練を受けたコンバット・バトラーだ

 

「ぅ・・・・・くぅ・」

 

綺麗はなすすべもなく、壁に縫い付けられてしまった

彼女の肢体を縛り付けたものは、10センチほどの小型ナイフ

 

「ラペルダガー」

 

大戦時OSSが特殊作戦員に支給していたナイフでその名が示す通り、襟首に隠すことを意図して作られている

それをクラウスは服の至る所に仕込み、ナイフの「弾幕」を張ったのだ

 

「なぜ、スティレットを投げることを考えなかったのですか?」

 

「それは・・・・・」

 

彼女の脳裏に浮かぶもの

彼女を一人前のガード・メイドに育て上げた後、失踪を遂げた「お姉様」

これは彼女の手に残った唯一の、彼女が「生きた証」

故に軽々しく投げる事なんぞ出来はしなかった

 

 

朝の模擬戦闘を終え、綺麗はその銀細工の施されたスティレットに口づけした

 

「今どこにおられるのですか?サクヤお姉様・・・・・」

 

彼女は熱に浮かされたように、愛しき「姉」の名前を呼んだ

 




東方心綺楼の秦こころちゃん・・・・無表情ロリ、ええな~~~~

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