鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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飲む過ぎて頭が痛い・・・・


暗き情念

ずっと「特別」になりたかった

父が輸入雑貨を商う会社を設立し、私達家族は「セレブ」と言われる階級へとランクアップした

でも、世間からは所詮「成り上がり」としてしか見られなかった

それも理解できる

ただ金儲けしか頭にない「父」

父が稼いだ金を自分の為しか使わず、挙句の末に愛人と交通事故で「心中」する羽目になった「母」

思春期を超え、私は父の「金儲け」の道具として有名政治家の秘書として「販売」された

であったのは美国家当主の「美国久臣」

私は「高級娼婦」として生きる覚悟を決めていた

でも・・・・・

彼は本物の紳士であり、現代に生きる「貴族」だった

だからこそ、私は彼の為に生きることを望んだ

しかし、その思いを遂げることはできなかった

彼の中には何時も「亡き妻」と、その面影を宿す「織莉子」がいた・・・・

 

 

コンコン!

 

「真様。モーニングコールに参りました」

 

艶やかな黒髪をした、長身のメイドが客室のドアの前に立っていた

 

「ありがとうございます・・・・」

 

久臣と蓮助の酒宴の翌日

既に夜も遅くなっていた為、二人は久臣の勧めもあり美国邸に泊まることになった

 

 

「ダイニングにて朝食の準備が整っております。真様はお嫌いなものはございますか?」

 

「いいえ。お気遣いありがとうございます。準備ができたら行きますね」

 

「では、失礼致します」

 

メイドが静かにドアを閉めた

真はキングサイズの来客用ベットから身を起こすと、クリーニングの終わったスーツに袖を通す

ノリがきいていてパリッとしているが、着心地はすこぶる良好だった

 

「すみません。遅れてしまいまして・・・・」

 

ダイニングでは既に真以外の全員が席に座っていた

 

「真君昨日はよく寝れたかな?」

 

「ええ。泊めて頂きありがとうございます」

 

「そう固くならなくていい。君はたぶん覚えていないだろうが、幼い頃君は私と織莉子に会っているのだよ」

 

「そうだったんですか。覚えていなくてすみません」

 

「昔の思い出話だよ。気にしなくてもいい」

 

久臣は昔を思い出すかのように、静かに目を瞑る

 

「さあ、食事にしようか」

 

朝食は質素でありながら完璧だった

焼き上げられたバケットからは上等のバターの香りが立ち上り、スクランブルエッグも添えられたおろしたてのパルメザンチーズがアクセントとなり卵本来のしつこさがない

真はこの「芸術品」を生み出したシェフに人知れず賛美を送った

 

「真、食事の後少し話がある」

 

「父さん・・・・?」

 

「悪い話ではない。だが・・・・少し受け入れるのには時間が必要な案件だ」

 

真の父親である「宇佐美蓮助」が胸の前で手を組む

彼の父が何か考える時の癖だ

 

 

「僕が織莉子さんの許嫁に・・・・?」

 

久臣の書斎

父、蓮助と真の目の前には久臣と織莉子

織莉子も驚きが隠せない

 

「急な話で申し訳ない。だが、あのスキャンダル騒動以来、様々な勢力から圧力を掛けられているのだよ」

 

久臣が目を伏せる

 

「野心に満ちた政治家なら、二の句を告げる事無く了承するだろう・・・・だが、私は自分の野望の為に織莉子を犠牲にしたくないのだ」

 

「お父様・・・・・」

 

「旧友の蓮助の息子である、真君なら織莉子を任せられる。既に婚約しているとなれば、奴らも諦めるだろう」

 

「無論、これには強制力はない。織莉子も真君もこれが形式上の物であると考えてくれていい。」

 

~ 織莉子さん・・・・僕はどうすれば・・・・? ~

 

真が織莉子に念話を飛ばす

 

~ 確かに合理的だわ。私はいいわよ。真さん、ひょっとして・・・・好きな人でもいるのかしら? ~

 

「好きな人」

 

その言葉が真の脳裏に響く

浮かぶのはぶっきらぼうでいて、寂しがり屋な少女の姿

 

~ 好きな人なんて・・・・・ ~

 

~ なら断る理由はないわよね? ~

 

織莉子が小悪魔のように、口元に笑みを浮かべた

 

 

 

ネェ・・・・・アナタをシバッテイル、スベテヲタチキッタラ、ワタシヲアイシテクレル?

 

暗い闇の中、女性的なシルエットを持つクモのような「何か」が胎動していた

 

 

 

 

NGシーン

 

私の名前は桑島桂子

美国久臣の元秘書にして、現役代議士だ

絵に描いたようなサクセスストーリー

私をただの「金儲け」の道具にしか見ていなかった父も、ホクホク顔であろう

・・・・・脳出血で「曖昧」な状態になった現在の父の頭脳に、それを理解できる能力があるかは別だが

 

身体全体を移すことのできる、曇り一つない特注の姿見で私は入念に身支度を整える

「あの人」に会うのだ

現代を生きる貴族である彼に会うのに、髪の乱れはおろかチリひとつ許されない

身支度が整ったのなら、次は一瓶10万円以上する一品モノの香水を振りかける

これには私からとったフェロモンも配合されている

つまりは媚薬としても使えるのだ

 

齢四十を超えてもなお、雄としての魅力にあふれる久臣様・・・・

あの方はどんなふうに私を愛してくれるのかしら

ワイルドに衣服をひん剥いて?

それとも、オーソドックスに裸にブーツ?

 

「うふ、うふふふふふふふ!!!!!」

 

鏡の前で発情期の蛇の如く、肢体をクネクネと動かす桂子

生粋の妄想女子である彼女が、実は今だに処女だと知る者はいない・・・・

 

 

 

 

 

 




そういえば、リキュールのクレーム・ド・ヴァイオレットって元々が媚薬だったんだそうだ

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