鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下します


閉じた世界

「でさ、あの教師また振られてやんの!!!」

 

聖カンナ ― ニコの「生みの親」 ― が上機嫌に話をしている

 

此処は二人のマンション

中学生である二人がマンションを買うことはできない

しかし、カンナが「操り人間」を再生成の魔法で作り、それをニコのコネクトで操ることで難なく、あすなろ市での拠点が出来上がった

無論、購入の際に必要となる資産はカンナが金塊を生み出すことで賄ったが

 

植物人間と化した両親

カンナが束の間であっても、笑顔を見せたことを喜ばなければならないが、しかし、ニコの心中は穏やかではない

昼間出会った「牧カオル」と「御崎海香」

この二人とどう向き合うべきか?

思考の渦に飲み込まれつつあったニコに不意に声が掛けられる

 

「ねぇニ~コ~聞いてる~」

 

「ごめん。少し考え事をしていた」

 

ニコが弁解する

だが

 

「ふ~ん?ここあすなろに来て以来、ニコはいつもそうじゃん!!」

 

今日に限ってカンナは許してくれないようだ

 

「ごめんな・・・・」

 

「それで収穫は?」

 

「いやない。だけど・・・」

 

「厄介な連中に会った」

 

「厄介?」

 

「ああ。魔法少女のことを知っている」

 

ニコはカンナに、カオルと海香に遭遇したことを伝えた

ニコが「コネクト」を使って、校内を探索していることはカンナも知っている

「自分」が二人いるのなら、それを有効に活用すべきだ

彼女はそう考えている

無論、「かつての世界」についてはカンナには伝えていない

「かずみ」のことについては、固有魔法で入手した情報であるとだけカンナには伝えてある

 

「直接確かめたわけではないが、あの二人の魔法少女としての素質はかなりのモノだ。もし魔法少女にでもなったら・・・・・」

 

「この街のアガリが減るって事?」

 

「ああ・・・」

 

本当はそれだけではない

だが、カンナに「かつての世界」のことを伝えずに済むにはそれだけしかない

 

「魔法少女になりたいなら、そうすりゃいいじゃん。結果、魔獣に殺されても、魔力切れを起こして野垂れ死んでも全ては選んだ自分自身の責任なんだし・・・」

 

カンナは淡々と話す

彼女は魔法少女となって以来、カルフォルニアで多くの「絶望」を見た

かつては絶望し、死に向かって行こうとする「魔法少女」達を救おうともした

だが・・・・・

二人の力をもってしても救うことはできなかった、誰一人も・・・・

それ以来だ

カンナは周りに同調し、周りの望む答えを出し、そして周りの望む人物像を「演じる」ようになったのは・・・・・

いずれ別れるのなら心を開く意味はない

彼女は「自分」を守る為にそう「変わって」いった

 

「いいカンナ?私達の目的はかずみを見つけ出して、パパとママを目覚めさせることよ?」

 

「そうだよニコ」

 

「なら、今はどんな情報でも欲しいところよ。たとえ、魔法少女の事を知った一般人でも」

 

「で、二人を救うことがどう繋がるわけ?」

 

「カンナ・・・・しばらく観察させてもらったけど、貴方には人脈がない」

 

「私はニコが居ればそれだけで・・・・」

 

「それじゃ駄目よ!いい?魔法少女は基本目立たなく過ごしていることが多い。だから、一辺倒のアプローチではうまく情報が集まらないのよ。だからこうして人脈をつくる。実際、私達は帰国子女だから警戒されている。」

 

ニコがカンナを見る

ややむくれている

 

「ニコは私には荷が重いっていうの?」

 

「いやそうじゃない。実際、カンナは良くやっていると思うわ。でも、チェスはキングとクィーンだけではプレイできない。手駒は多いに越したことはない・・・でしょ?」

 

ニコがカンナを抱き寄せる

 

「・・・・許さない」

 

「へ?」

 

「ニコがお風呂で体を洗わせてくれなきゃ許さないんだから!」

 

カンナはニコに依存している

「演じる」ことは辛い

だから、ニコに依存するのだ

 

「わかったよカンナ」

 

「ニコ大好き~~~~~~~~!」

 

カンナはニコを抱きしめた

 

 

 

 

NGシーン

 

双子の相違性

これは双子に生まれた姉妹や兄弟が意図的に片割れと違う行動、嗜好を身に着けることを言う

主に自意識が芽生える上で、自分自身を定義するための「自己防衛」行動ともいえた

 

ニコは悩んでいた

彼女と生みの親ともいえる「聖カンナ」は双子のように似ているが、厳密には双子ではない

ニコの正体、それは「かつての世界」で愛を渇望して死んだ一人の少女の魂

そしてカンナの両親を助けるために「合成魔法少女」として、この世に生み出されたのが「神那ニコ」

それが彼女だ

故に、彼女とカンナが違う思考を持っていてもおかしくはない

 

「ねぇねぇ、ニコ!コーヒーはブラックだよね!」

 

「ああ、そうね・・・・」

 

ニコは知っている

カンナの「一部」として見ていた時、彼女は間違ってもコーヒーはブラックでは飲まなかった

でも、両親が「植物人間」になって以来、彼女は徐々に「ニコ」に似てきた

カンナのような思春期の少女に両親の不在は大きい

だからこそ、ニコに依存する

自分と「ニコ」が魂を分けた存在であると信じたいのだ

 

ニコは苦しんでいる

もし・・・・私が「消えてしまった」ら彼女はどうなるのだろうか?と

 

 




湿度が高くて、髪が爆発中・・・・

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