夜更け
今夜のパトロールを終えたマギカ・カルテットの面々は本拠にしている宇佐美邸別館へと戻った
日程を調節して、各員の負担を分散させてはいるが、時として個人で対応できない場合がある
そういう場合は瘴気が濃いことがおおく、そういった場合は個人でのパトロールではなくこうしてマギカ・カルテットでの全体活動が主となる
「あ~あ、疲れたぁ~~~~~」
佐倉杏子が背伸びする
今回は魔獣の数が多かった上に、複数に分散していた為、真をはじめ前衛型である杏子も前線に立ち続けていた
「帰ったら、疲れがとれるように生姜と蜂蜜をたっぷり入れた紅茶を入れてあげるわ」
「やっぱりマミはいい奴だな!!!」
「現金なものね。どこぞの見慣れないおっさんに飴一個でほいほいついていきそうだわ」
漆黒の黒髪をいつものように掻き揚げながら、暁美ほむらが呟く
「ったく、久しぶりに顔を出したらそれかよ!!!!」
「事実を言ったまでよ。真さんもそう思うでしょ?」
「なんで僕にふるんですか!暁美先輩」
相変わらず、弄られやすい真であった
「まぁまぁ、明日は休日だからゆっくりと休み・・・・・」
宇佐美邸別館へと向かうマミの歩みが止まる
「ねぇ、真さん。私達は出た時鍵を掛けたわよね?」
「そ・・・そうですよ。どうしたんですか?」
「鍵が開いてるのよ・・・」
真が確認すると、確かに別館のドアが開いていた
ガチャ・・・
少しドアを開けて確認する
別館の内部は荒らされていないようだ
しかし、玄関の一角に置かれているモノが真の視線を捉えた
「・・・・・?!」
真の顔が強張る
「・・・・皆さん、中に鞄以外の私物ってありませんよね?」
「何だよ真、藪から棒に・・・・・」
「答えてください。中には・・・・・」
真が言葉を紡ぐよりも早く背後から声が響く
「父が中に居て都合が悪いのか?真」
ぎりぎりと効果音が聞こえてくるかのように、ゆっくりと真が振り向く
ブランド物の「吊るし」ではない、本物のテーラーの手によるクラシカルなスリーピースのダークスーツを着た偉丈夫が立っていた
「父さん・・・・」
宇佐美家当主「宇佐美蓮助」
文化人類学者であり、現在はフィールドワークに出ているはずだった
「真・・・・うるさい父親がいないからと言って多人数での不純異性行為は許せんな」
「違うよ!!!先輩たちは・・・」
しどろもどろになる真
彼のその姿を見たマミが助け舟を出した
「あ・・あの!!」
「キミは?」
「見滝原で演劇部の部長をしている巴マミといいます。真さんに頼み込んで、別館を使わせてもらっていて・・・・」
「それは・・・・挨拶を忘れて失礼した。私は宇佐美蓮助。息子がお世話になっているようで・・・・」
「?」
「ああ、真も含め、みんな同じ指輪をしているからてっきり同じ部だと思ったんだが、違ったかな?」
「ッ!!!!」
蓮助の表情は明るかったが、その瞳には底が見えなかった
~ 真さん聞いている? ~
~ はい!巴先輩すみません!僕の所為で嘘を吐かせてしまって・・・ ~
~ 真さんも知らなかったんでしょ?なら嘆いても仕方ないわ ~
二人が念話で話し合っている中、蓮助が声を掛けた
「立ち話もなんだし、別館で休んでいかないかな?何にもおもてなしできないが」
「ええ、ありがとうございます」
宇佐美邸別館
蓮助が土産に買ってきた菓子と真が用意したコーヒーを飲みながら、少女達はゆっくりと寛いでいた
「父さん、いきなりどうしたの?」
真が父、蓮助に声を掛けた
「ん?まぁ旧友から久しぶりに会って話したいって連絡があってな。2、3日程こちらに戻ってきた」
「旧友?」
「美国代議士のことだ」
「「「へ?」」」
余りの事態に真とマギカ・カルテットの面々が見事にハモる
美国代議士
「全知」の魔法少女 美国織莉子の父に間違いはない
「真、明日は確か休みだったな。明日、会いに行くから真も用意しなさい。」
淡々と告げる蓮助
「ちょっと・・・!!!」
~ 真さん、聞こえる? ~
巴マミから念話が届いた
~ 今はお父さんの言うとおりにして。貴方のお父さんは所見で私達が仲間だって見抜いたわ。なるべく波風は立てずにしておかないと ~
~ わかりました・・・・ ~
~ 織莉子さんによろしくね。日程も調節しておくから ~
大広間にド・マリニーの時計が静かに時を刻んでいた
NGシーン
宇佐美家当主である宇佐美蓮助
貴族の家を移転したこの屋敷には、普段は倉庫として使われている別館が存在している
帰国した蓮助は本館に行かず、真っ先に別館へ赴いていた
此処には彼がフィールドワークで収集した珍品や奇品が置かれているが、今彼が気にしているのはそれではない
ガチャッ!
ケルトの土着宗教の儀式で使用された「双頭の山羊のはく製」や、八つ頭のコブラを漬けた薬酒など長男の真でも入りたがらない倉庫のドアを開く
彼の手はドア止めに偽装されたボタンを押す
ガシャ!ガシャ!!!!
自動的に陳列棚がズレ、ドアが開いた
蓮助は周りを確認し物音を立てずに中に入る
そこには・・・
「くりぃ○レモン」、「ポップチェイサー」、「媚・妹・BABY」etc・・・・
かつてのチェリーボーイたちを滾らせた「エ○アニメ」
その完璧なコレクションが犇めいていた
その一つをおもむろにビデオデッキに差し込むと・・・・
宇佐美蓮助は独り者である
父が時折、このようなモノを見ているのを見て見ぬふりをする情けが真にも存在した
ウチのバイト先でも意外と人気のある「エロアニメ」
昔懐かしのビデオでも売れるってどうよ?