鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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ギャグ分が足りない


一生分の願い事

リニアの駅から階段を下りてくる一人の少女

その人物は真が知る人物から大きく変貌していた

凛とした瞳にはクマができ、輝くような紫かかったシルバーブロンドはくすみ、そしてその表情は焦りと苦悶が張り付いていた

とても、一週間前に会った「浅海サキ」と同じ人物のようには見えなかった

 

「いきなり押しかけてごめん・・・・」

 

サキが消え去りそうな声で話す

 

「今日は非番だったので、問題ありませんよ。気にしないでください」

 

「ありがとう」

 

― 危うい ―

目にしたサキの姿に真はそう感じた

恐らく、切っ掛けがあれば全てを捨て去ってしまうような・・・・サキには、言うなれば安全ピンの抜かれた手りゅう弾のような不安定さがあった

 

「喉が渇きませんか?ちょうど美味しいコーヒーを出してくれる喫茶店が近くにありますから、そこで少し休みませんか?」

 

「・・・・・優しいね真君は」

 

今必要なのはゆっくりと疲れた身体を休める場所だ

真はサキを案内し、駅前の喧騒の中を進んでいった

 

 

「劇団のみんなは元気ですか?」

 

駅前の喫茶店

その奥まった席に二人はいた

古びたレコードからジャズのスタンダードナンバーである「テイクファイブ」が流れている

空調も暑すぎず、それでいて寒すぎないように調節され、非常に快適だ

周りを見ると大学生や初老の男性など、まばらな客たちが思い思い自分の時間を楽しんでいた

 

「・・・・・みんな稽古に熱が入らなくてね」

 

「すみませんでした・・・」

 

「なんで君が謝るんだい?私はキミに恨みなんて持っていない。もしろ感謝しているんだ」

 

「感謝?」

 

「キミが居なければきっと私は・・・・・」

 

宇佐美真が浅海サキを見つめる

その表情は真剣そのものだ

 

「ミチルさんにはあの後会いましたか?」

 

サキは真から目を逸らした

 

「会っていないんですね?」

 

「ああ・・・そうだ」

 

消えそうな声でサキはそう呟いた

 

 

真の知る限りでは彼女は「魔法少女」となることを諦めたはずだった

ではなぜ、彼を呼んだのだろうか

 

「何かあったんですね?」

 

「夢を見たんだ・・・・・」

 

「夢ですか?」

 

「ああ。一週間前に見たんだ・・・・ミチルが黒い樹のような化け物に一人で立ち向かって・・・死んでしまう夢を」

 

サキは寂しげに笑った

 

「可笑しいだろ?君よりも年上なのに、悪夢のことが頭を離れないって・・・・・」

 

「いえ・・・・そんなことは・・・」

 

「その日以来なんだ・・・・もしミチルが私の知らない場所で死んだら、そう思うと・・・・」

 

「まだ・・・諦めていないんですね?魔法少女になることを」

 

サキは静かに頷く

 

「私は怖いんだ。ミチルが一人で消えてしまうことが・・・」

 

「でも魔法少女になっても現状は変わらない、違いますか?」

 

「・・・・・・・・」

 

サキは沈黙する

あの日、ミチルから全てを打ち明けられた

そして同時に「魔法少女」になったら全てを失うことを

人としての幸せも

女としての幸せも

ミチルとの関係も

 

「ミチルさんはきっと魔法少女となったサキさんを受け入れることはないでしょう・・・・・」

 

「でもどうしたらいんだ!!!私は無力だ・・・・・・無力なんだ!今でもミチルは苦しんでいるかもしれない、でも私はその傍らにはいない・・・!」

 

浅海サキは叫ぶ

その瞳からは一筋の涙が光っていた

 

「サキさん・・・・・魔法少女とならなければ、貴方はミチルさんの隣に居られないんですか?」

 

真はすっかり温くなったコーヒーを飲んだ

上質の豆をつかっているのだろう

温くなっても酸味は感じなかった

 

「私は・・・・どうミチルに会えばいいんだ?どんな顔をすればいいんだ」

 

親友が人外の存在へと変わってしまったのだ

例え中身が同じであっても、それを受け入れるには時間が必要だ

 

「まずは話すことです。実際、ミチルさんはサキさんを否定したわけではありませんでしたから・・・」

 

魔法少女は孤独に生きる

そして孤独に死ぬ

望む望まぬに限らず・・・・

 

「本当に否定するなら、きっと真実を伝えることもしなかったはずです」

 

「私に・・・できるのだろうか?」

 

「たった一人でもミチルさんのことを知っている。それだけでもミチルさんは救われます」

 

サキは静かにコーヒーを飲み干した

 

 

「ありがとう真君。ミチルと話してみるよ・・・」

 

真は喫茶店から出ると、サキをリニアの駅まで送った

 

~ ?! ~

 

真が振り向く

背後から微かな魔力を感じたからだ

しかし、振り向いてもそこにはいつもと変わらない風景が広がっていた

 

 

― モウスグアエルヨ、オトウサン ―

 

 

 

NGシーン

 

「美幸・・・ちょっと出てくる」

 

サキちゃんはそういうと、玄関の戸を開いて出ていく

私と姉は一つくらいしか歳が違わない

だから、私はサキちゃんのことを姉と思うことはあまりなかった

サキちゃんも私のことを美幸って言ってくれる

私達は「双子」に最も近い姉妹だった

でも・・・

 

サキちゃんが演劇を始めて・・・・・だんだんと距離が遠くなっていった

距離が遠くなった、といっても何もサキちゃんに遠ざけられたとか、邪険に扱われたってことじゃない

サキちゃんはいつもと同じように触れ合ってくれる

でも・・・・・

サキちゃんの心の奥に、もう私はいない

今日も劇団に行くの?

今日もみんなと笑いあうの?

今日も・・・・

ミチルさんには私は感謝している

交通事故

悲惨な事故だったけど、私もサキちゃんも目立った怪我はなかった

けど、そのショックで私は声を失った

ミチルさんはその演技で私に笑いと失った声を取り戻してくれた

でも・・・・

 

「私って最低だ・・・・・・」

 

姉妹同士の閉じた円環から抜け出した姉の姿に妹は自らの気持ちに振り回されていた

彼女が自分の本当の気持ちに向き合える日は来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヴァルヴレイヴ・・・・・なんで200年後?

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