鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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暑い~誰かアイスを~


来訪者

「ふぁぁぁ~~~!」

 

宇佐美邸の本館

その一室で宇佐美真は目覚めた

彼の華奢な肢体を預けるのは今では珍しい、職人の手による本物の木製のベット

名のある有名なメーカーの工場で作られた「出来合い」の商品ではない、手作業で仕上げられた本物の職人の一品だ

豪奢な装飾はないが、丁寧な仕上げが施されている

それは真が幼い時分から今に至るまで長年使用しても一切のガタがなく、またベットを修理に出すことがなかったことからも作った職人の実力がわかる程だ

真にとって今日は「非番」だ

彼の所属している「マギカ・カルテット」では細かにパトロール日程が決められ、此処に受け持ちが割りふられている

それは「親類の家で居候している」佐倉杏子など、個々の家族との兼ね合いで日々のパトロールに参加できないことも往々としてあるためだ

 

― 魔法少女として活動している限り、大切な家族との思い出を作ってほしい ―

 

悲惨な交通事故で突然両親を亡くした「巴マミ」

彼女は、ここ見滝原で最長の戦歴を誇る魔法少女であると同時に、マギカ・カルテットを率いるリーダーだ

厳しく、そして優しい

巴マミを表する言葉ならそれしかない

彼女「巴マミ」にとって、真も含めマギカ・カルテットに所属している魔法少女は大切な「仲間」であり「家族」なのだ

今現在マギカ・カルテットに所属している「魔法少女」は真も含めて四人

近隣で活動している魔法少女達はあまり魔法少女同士で協力しあったりすることは稀で一人で活動することが多く、マギカ・カルテットのように組織化された集団は珍しい

キュウベェも契約のみではなく、契約後はある程度のサポートはしてくれるが手取り足取りとはいかない

現に、真が魔法少女となって直ぐキュウベェはサポートしてくれたが、それよりもマギカ・カルテットで得たことの方が多い

真は「魔法少女」となって以来、日記を書いていた

 

真を魔獣の手から救い出した「ヒーロー」である「美樹さやか」

彼は彼女に会いたいとの思いでイレギュラーな「魔法少女」となった

だが・・・・

マギカ・カルテットに邂逅して知ったこと

彼の会いたかった「ヒーロー」は戦いの最中に戦死したこと・・・・

巴マミの計らいで、マギカ・カルテットの一員になり様々な人の思いを見てきた

それらは真にとっての財産であり、大切な思い出だ

いずれはやってくる「終わり」

グリーフシードで穢れを吸い出しても、生きていく以上穢れは溜まり続ける

そして「円環の理」に導かれる

それには一切の例外がない

彼も、そして「マギカ・カルテット」の仲間達も消えていく

雨の中の涙のように・・・・

 

パチッ!

 

真は開いた日記に再び鍵を掛けた

真もいずれは闘いの末に、ヒーローと同じように「円環の理」に導かれるだろう

だがこの日記が誰かの手に渡れば、心の片隅に覚えていてくれるかもしれない・・・

「願い」を心に戦い続けた一人の戦士のことを

 

ジリィィィィィィィィィ!!!

 

不意に真の携帯が鳴った

真が携帯を取る

ディスプレーには見覚えのある名前が表示されていた

 

「浅海・・・・サキさん?」

 

真と杏子があすなろ市で劇団の客演をした時にお世話になった人物だ

そして二人が「魔法少女」であることを魔法少女以外で知る人物でもある

 

「ごめんいきなり電話して・・・・」

 

理知的な彼女の深刻な声色に真はただならない事情があると感じた

 

「いえ、今日は非番なので問題ないですよ」

 

「もしよかったら、話を聞いてほしいんだ・・・・出来れば電話口じゃなくて会って話したい」

 

「浅海さん、今どこにですか?」

 

「見滝原行のリニア駅の前だよ」

 

「なら駅前で会いましょう」

 

「ありがとう真君・・・・・」

 

真は直ぐに着替えを始めた

何か

言いようのない「何か」が動き始めているような

そんな感覚を感じていた

 

 

NGシーン

 

「ふぁぁぁ~~~!」

 

宇佐美邸の本館

その一室で宇佐美真は目覚めた

 

むにゅ!

 

「ん?・・・・・」

 

真のベットは所謂キングサイズだ

男性の真でもかなり余裕がある

 

バッ!!!!!

 

真が掛け布団を捲ると・・・・・

 

「ん・・・・・・もう少し寝かせて・・・・」

 

赤い髪

真よりもやや小柄な肢体

黒いタンクトップと装飾の少ない黒いショーツ

髪を下した佐倉杏子が「真」のベットで寝ていた

 

「ヒィィィィィィィィィィ!!!!!!何で杏子さんがベットに!!!まさか・・・・!いやそんなことって絶対」

 

「ったく、うるせぇな・・・・こうゆう時くらい静かに寝かせろよ真」

 

真の混乱を余所に杏子は掛け布団を掛けなおすとイビキを立てて寝始めた

 

 

「おはっ・・・・なんだよこの重い空気は!魔獣が出るぜ!!」

 

「あ・・・・・杏子・・・・さん」

 

杏子が目を覚ますし、リビングに来るとそこはどよーんとした空気に満ち溢れていた

 

 

「つまりはアタシが横で寝ているんで、そのナニをしてしまったんじゃないかって?ハハッ!!!うけるぜ真!!!!!!!」

 

事の真相は昨日の晩のパトロール時に魔獣が発生して、討伐に時間が掛かってしまい近くの宇佐美邸に泊まることにしたらしい

 

「で、何で僕のベットの中に?」

 

「それはだな・・・・ソファーで寝てたんだけど寝ぼけて入っちまったみたいで・・・・」

 

頬を染め俯く杏子の姿に真の中で何かが生まれるのを感じていた

 

~ なんか杏子さんかわいい? ~

 

これが恋心であると知るには真はまだ幼かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




黒パンの利点、多少汚れても目立たない

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