鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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隣の家の少女
・・・・軽くトラウマになりました


白い家の少女

私が生まれたのは白い家

たった一人だけの家

私以外の人間の姿は見えない

でも、朝昼晩の食事は欠かされることなく用意されていた

それも何時の間にか・・・・

まだ私が「運命」に触れることができなかった幼い頃は、食事を用意してくれる人間を探ろうとしたこともある

でもその姿を認めることはできなかった

たった一人の生活

私を慰めるものは無数、いや無限にある「本」

男女や同性の性愛を描いたものから、難しい技術書、哲学書の類も用意されていた

ここは監獄ではない

現に外に家から出ることもできる

しかし、その先には何もない

あるのは暗い森

寂しさの中、私が黒い森を抜けようとしたことも何度もある

だが、それは何度も失敗した

何度も遭難し、その都度この白い家に戻ることになった・・・・・

そして

 

 

私は12歳になった

なぜわかったのか?

それは私宛に送られたプレゼント

そこには12歳になったことを喜ぶバースディカードが同封されていた

そして私自身の「名前」も・・・

プレゼントは理解できない文字の書かれた分厚い「本」

文字の見た目はドイツ語の「装飾文字」を反対にしたようなものだったが、それの意味はよくわからなかった

でも、私は嬉しかった

私の成長を喜んでくれる人が何処かにいることが堪らなく嬉しかったのだ

この気持ちを誰かに伝えたい

たった一人の為に・・・・

でも・・・・

 

窓を見る

 

相変わらず、黒い森が広がっていた

 

 

14歳の誕生日

私の元に同居人がやってきた

白いふわふわの毛に覆われた猫やウサギくらいの生き物がいつもの白い箱に入っていた

不思議なことに耳にあたる部分には触腕のようなものが生えている

私は書架から、絶滅した動物の図鑑から古代の生物を網羅した学術書まで広げるが、箱の中の生物に該当するものはなかった

死んだように眠り続ける「それ」

首には何らかの器具が付けられていた

私は好奇心の赴くままにそれに触れた

 

ビリィ!!!!!

 

「ヒィ!!!」

 

私がその首の器具に触れた瞬間、強力な電流が指先から頭まで抜けた

これは電流を流し、対象の行動を抑制する物らしかった

対処法は簡単だった

私が拘束具を外すとその生き物は声をあげた

 

『やあ!僕はキュウベェ」

 

「きゅうべえ?」

 

目の前の生物が何であるか?

そんなことはどうでもよかった

言葉を交わせることが嬉しかった

 

『ここは?』

 

「ここは私の家。私以外の誰もいない・・・・」

 

その生物は私をじっと見る

 

『キミはなかなかの素質をもっているね。僕と契約して魔法少女になってよ!!!!』

 

こうして私は「運命」に触れた・・・・

死神の手から全ての魔法少女を助ける、その「運命」に

私はその為に生まれたのだから

 

 

 

白い家に現れた新たな同居人

「キュウベェ」と名乗るソレは自らをインキュベーターと呼ばれる種族であると説明した

 

「なぜあなたは此処にいるの?」

 

『それは僕にもわからないよ。急に背後から何者かの魔力を感じた瞬間、この家に居たんだから』

 

「魔力?」

 

『説明がまだだったね。僕は願いを一つだけ、どんな願いも叶えることができる。でも対価として、願いを叶えてもらった少女は魔法少女となって魔獣を倒す運命を背負うことになる』

 

キュウベェの話は驚きに満ちていた

人の暗い感情から瘴気が生まれ、それが魔獣へと昇華する

魔獣は人の感情を狙い、それを喰らう

 

「食べられた人はどうなるの?」

 

『有体に言えば廃人になる』

 

「こんな・・・何もできない私でも人が救えるというの?」

 

『もちろん!君の素質は僕が保障するよ』

 

「・・・・・・契約は今すぐでないとダメなの?」

 

『そんなことはないよ。一生の問題だからね、人によっては一年以上考えて契約することもある。君の名前は?』

 

「私の名前は宇佐美真琴」

 

『じゃあ真琴。契約したくなったら呼んでよ』

 

そういうとキュウベェは開けられていた窓へと駆け上がり、外へと消えた

 

 

一人ぼっちの夜

寂しさが募る

私は何時ものように、古い蓄音機のネジを巻き古いレコードを掛ける

擦り切れて、時折ノイズが混じるが私にはそれが心地よかった

 

「やぁ」

 

不意に声が聞こえた

私がベットから身を起こし、声のした窓を見ると小柄な影が月光に照らされて浮かび上がっていた

 

「キュウベェ?」

 

『うん。真琴入っていいかい?』

 

キュウベェの話によると、やはりキュウベェもこの森で迷ったらしい

 

『この僕が道に迷うなんて、ワケがわからないよ』

 

「ふふっ貴方も万能じゃないのね」

 

そう言うと私は笑みを浮かべた

 

 

『いいのかい?』

 

「うん」

 

翌朝、私は契約することを決めた

 

『それじゃあいくよ。願いを心に浮かべて』

 

願いは決まっていた

 

「私は外へ行きたい!どこまでも無限に!!!!」

 

キュウベェの触腕が私の胸に吸い込まれる

チクリと鋭い痛みが走り、私の胸から何かが飛び出した

 

『それが君の願い、魂の結晶ソウルジェムだよ』

 

「ソウルジェム?」

 

『そう。さあ解き放ってごらん、その力を!』

 

私は願った

私の成長を喜んでくれた人の所に行きたいって

天の河を思わせる、ブラックオパールのような私のソウルジェムが輝いた

光が私の身体を包んで、着ていた装飾のない白いワンピースは消失し代わりにローマ風の丈の長いワンピースに変わる

それを赤いローブが包んだ

その姿はまるで、タロットカードの「賢者」を思わせた

 

「魔法ってどう使うの?」

 

『それは個々で違うからなんともいえないけど、強く願ったら発動するのが殆どだね』

 

私は心を落ち着け、強く願った

私の中から何かが弾けたように感じた瞬間、全てが消失した

 

私は世界を巡る

全てを知るために・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あつい・・・・・
何もしたくない~~~

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