鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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ちなみにこの作品の「聖カンナ」は「オリジナル」で、暴発事故が起きなかったおかげで結構活動的な少女に育っています



消えない記憶

~ 畜生・・・・なんだアイツは? ~

 

人ごみに紛れながら、聖カンナが背後を振り向く

一人の少女が一定の距離をとって彼女を尾行していた

深紅の瞳

白銀のシルバーブロンド

誰もが振り向くような美貌を持っているが、しかし周りの誰も少女に関心を払うことはない

カンナが気付かれない程度に魔力を解放して彼女を見ると、薄い魔力の膜が少女を覆っていた

 

― 認識阻害魔法 ―

 

彼女は間違いなく「魔法少女」だ

ではなぜ彼女 ― カンナ ― を尾行する?

カンナの脳裏にニコからの警告が過る

 

― いい?あすなろ市には、そこを縄張りにしている魔法少女が既にいる可能性があるわ。そういった場合、トラブルになることもよくある。だから何かあったら連絡して ―

 

「あんなヤツ、ニコに連絡する必要なんてないよ」

 

彼女は「魂の姉妹」であるニコとともに魔法少女となって以来、故郷のカルフォルニアで魔法少女として活動していた

不思議なことではない

地球上、遍く町々に「インキュベーター」はいる

そして人々の絶望から生まれる魔獣も・・・・

 

 

カルフォルニア

光り輝く太陽に包まれるこの地は、しかし同時に深い闇に付き纏われていた

麻薬の売人に娼婦、そしてギャングと癒着する汚職警官たち

この地での少女の「願い」は非常に安い

少女達は「当たり前」の生活を願い、そして・・・・・・

戦いの最中に消えて行った

 

カンナの手の中には一人の少女

少女の願いは「綺麗だった昔のママに戻して」

少女は知らない

母親がドラッグに溺れて、身を持ち崩していることを

そしてドラッグを買うために毎夜見知らぬ男を相手に売春していることを

ニコがそれを突き止めた時は既に遅かった

「綺麗になった」少女の母親は客の一人に殺されてしまったのだ

男の「自分のモノにしたい」という独りよがりの理由で・・・

 

「自分の願い」が母親を殺した

母親を綺麗にしてほしいと願ったばかりに・・・

少女が絶望するにはそれだけでよかった・・・

 

「カンナおねぇちゃん・・・・ティオ頑張ったよね?」

 

少女が微笑む

その笑みは痛々しくて・・・・カンナは目を背けた

ここはダウンタウンの裏路地

カンナの手の中には彼女よりも幼い少女

彼女のソウルジェムは既に危険域を超えていた

 

「ああ頑張ったよ!!きっと貴方の助けた子達はきっと感謝しているさ!だから気をしっかり持つんだ!!グリーフシードはニコが持ってきてくれるから・・・・」

 

少女が何もない空間に手を伸ばす

 

「ティオ・・・・ずっと世界は嘘つきだと思っていたの・・・・でも最後に女神さまが迎えに来てくれたの・・・」

 

「もういいんだ・・・・もういいんだ!ティオ!!!」

 

カンナが叫ぶ

 

~ またなの?また助けられる命を失うの? ~

 

「女神さまがティオを呼んでいるの・・・・・もう苦しまなくていいって・・・・」

 

カンナがティオの見ている闇を見るが、そこには饐えた臭いが纏わりつく裏路地が広がっているのみだ

 

「そいつは悪魔だ!ティオの魂を奪い取ろうとする死神だ!!そいつの声を聴くなティオ!!!」

 

「ううん・・・悪魔でもいいの・・・・こんな暖かい気持ちになったのは生まれて初めてなの・・」

 

何の前振れもなく、少女の身体からすべての力が喪失した

 

「逝くなティオォォォォォォ!!!!!!!」

 

少女の慟哭が闇を切り裂いた

彼女には泣くこと

それしかできなかった

 

 

「このカンナ様が平和ボケした魔法少女に倒されるかよ!」

 

彼女は「甘かった」

今、カンナを追っている狩り人は普通の「魔法少女」ではないことを知らない

たった一人を葬るために研鑽した文字通りの「殺人マシーン」であることすらも・・・

 

 

 

NGシーン

 

薄暗い書架が並ぶ部屋

一心不乱に過去の事件記録を調べている男性にブルネットの髪の女性が声を掛ける

 

「宇宙人の次は魔法少女?モルダー、あなたは疲れているのよ」

 

モルダーと呼ばれた男性が振り向く

 

「僕はいたって正気さスカリー。ただ人より好奇心が強いだけさ」

 

スカリーが手に持っていたファイルをモルダーに手渡した

 

「興味深いね。身体機能には異常は無し、脳にも異常は見られない。でも・・・・・二人は目覚めない」

 

「主治医の話では二人は夢を見ているそうよ。永遠に目覚めることのない夢を」

 

「夫妻には確か、娘さんがいたね。彼女は今?」

 

「日本の見滝原にいるわ。確か名前は聖カンナって・・・・」

 

クリップで留められた写真にはレモン色の髪を二つに分けた少女が映しだされていた

 

「彼女も、貴方の言う魔法少女という存在なの?」

 

「可能性は高いね。でも探る手段はもうない」

 

「?」

 

「正式に捜査の中止を告げられたよ。何でも上院議員の一人からの要請らしい。例の奇跡の大佐様さ」

 

「たった一人で一個大隊を逃がしたっていうあの?」

 

「ああ。彼には孫娘が一人いる・・・・・彼なりに孫を守ろうとしているのだろう」

 

数日後、大佐は自殺した

突然の「心臓発作」で孫娘が急逝した直後だった・・・・

 

「・・・・・」

 

「この世界には奇跡なんてない。あるのは冷徹な現実だけだ・・・・・大佐は借りを返そうとしたんだろう」

 

 




「Xファイル」にはハマったけど、あの最終話のオチはどうかと・・・・

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