そのまま?それとも解除されてしまうのだろうか?
あすなろ市住宅地 「ビストロ・タチバナ」
「でさ、師匠に連れられて此処のクラシック・オムライスを食べたら、それが絶品で!!!!」
~ ユウリってこんなに騒がしい娘だっけ・・・・・? ~
街角で出会った少女 ― 飛鳥ユウリ ― に連れられて、神那ニコは少々困惑していた
「かつて」の世界で「模倣」の魔法少女「杏里あいり」の話でユウリがどういう少女だったかは聞いていた
曰く、死に瀕していたあいりを助けるために魔法少女となった、友達思いの少女であること
曰く、「願い」で得た「魔力を分け与える」魔法を使い、あいりと同じ難病の子供たちを助けた、慈愛の少女であること
「かつて」の自分は結果として魔女化してしまうことになったユウリを馬鹿なロマンチストと蔑んでいた
だが、目の前の少女はどうだ
良く笑い、よく食べる
その輝くような金色のツインテールも合わさり、太陽のような少女との印象をニコはもった
~ そうだね・・・私は余りにも知らな過ぎたんだ・・・・・ ~
あの日、合成魔女「ヒュアデスの暁」の材料にしてしまった少女達はどうだったのだろか?
この世界は「あの世界」とは違う
魔法少女が「魔女」となることはない
しかし、彼女のしたことは許されたわけではない
「どうしたの・・・?ニコちゃん」
見ると、ユウリが心配そうに彼女を覗き込んでいた
「いや・・・少し疲れただけだよ。アメリカから越してきたばかりだから・・・?!」
ガシッ!!!
ユウリがニコの手を握る
~ まさか・・・魔法少女ってバれた? ~
今、彼女のソウルジェムは指輪にして指に嵌めている
無論、魔法少女であることを隠すためカンナの「再構築」の魔法を使い、それとわからない様に偽装しているが
「ニコちゃんって帰国子女なんだ!!!!あたし外国生活に憧れているの!!!ねねっ!アメリカでの生活を教えて!!」
輝くような笑顔で顔を近づけるユウリ
~ この能天気さは一体何! でも・・・ ~
ユウリの顔を見つめる
~ でも何だか心が暖かいな ~
自分が「紛い物」であると知ったあの夜
太陽も月も、夜の闇でさえ、全てが自分を嘲り笑うように感じた
「本当」の私は母親から生み出されたわけではない
愚かで、独りよがりな一人の少女が「合成」した存在だった・・・
私はふらふらとカッターナイフを手にして・・・自分の手を突き刺した
脳が痺れるような痛みが私を覆う
手からラズベリーソースのような鮮血が飛び散る
だが・・・・・
私にはそれすらも偽物のようにしか見えなかった
不意に、恐ろしい考えが私を包む
― スベテヲニセモノニスレバイインダ ―
友も兄弟もいらない
私が「アイツ」の書き割の中で踊るマリオネットなら、この世界全てを変えてやる
世界を「ニセモノ」にしてやる!
でも・・・・
私に全てを受け入れてくれる友人がいたなら?
紛い物を愛してくれる人がいてくれるたなら?
そうすれば私は私の人生を生きていけた?
絶望の物語は変わっていたかもしれない
「ああ、探していたビストロ・タチバナを教えてくれたんだ。お返しに何でも聞いてよ・・・・・ユウリ」
ニコはそう言うとユウリに微笑んだ
そこに「かつての世界」の影はない
今彼女は自らの人生を歩み始めた
自らが起こした災禍は尚も彼女を絶望へと引き込もうとするだろう
だが、希望を知った彼女が絶望に染まることはない
NGシーン
あすなろ市
「カンナ」と「ニコ」のマンション
以前は「入居する度に自殺者出る」とその筋では有名な呪いのマンションだった
「準備はいい?カンナ」
ダークグリーンのボディースーツと同じ色の外套、帽子を着用した少女が傍らの少女を見つめる
「オールグリーン!」
そう言うと、「双子」以上にそっくりなニコが輝くような笑顔を見せる
「魔獣」は人の暗い感情から生み出される
つまりは自殺の名所とか、呪いのマンションとか呼ばれる場所には確実に「湧いている」のだ
二人はまるで手慣れたように戦いの口火を切った
数日後、あすなろ市内コンビニ
「ありがとうございました~」
明るい髪の少女が手に胡散臭い雑誌を抱えてコンビニから出てくる
「呪い」だの「幽霊」だの、そういった胡散臭いネタはこういったコンビニ売りの雑誌に載っていることが多い
今後の「魔獣」狩りを行うためにはこういったことも大切だ
「ニコ~なんかこれ、アノ映画みたい」
「アノ映画?」
「ほら、ウィルスミスと宇宙人ジョーンズが宇宙人をしばくヤツ」
マンションの一室で二人は熱心にタブロイド誌を読んでいた
「?!ニコ・・・・これって」
「どうしたのカンナ?・・・・ゲッ!!」
二人の視線の先にはタブロイド誌の見出しがあった
顏や髪型など細かな所がハッキリと写っているわけではないが、その姿は間違いなく魔法少女形態の「カンナ」と「ニコ」に間違いなかった
[怪奇!廃墟に踊るレズカップルの幽霊!]
― 怪奇研究家のフゥーディーニ田中さんの霊視によると、この幽霊は貝合せ中に腹上死したレズビアンのカップルで・・・・ ―
無論、この雑誌の編集部が謎の襲撃を受けたのは言うまでもない
「バイオショック・インフィニット」クリアァァァァァ!!!!!
娘に殺されてBADENDかと思ったら・・・・・
個人的にはハッピーエンドだったと思います
ただ・・・・「オチ」が若干このSSに被る