IS -僕は屑だ-   作:屑霧島

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私は認めない。だから足掻く。なんだってする。
泣いて祈れば起きるような奇跡なんて、要らないのよ。



      語尾に”ツンデレ”を付けさせられそうになった残念な人


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一夏がラウラに止めを刺した後、箒は一夏と連携を取り、静寐を追い詰め、試合に勝利した。その後、一夏は零落白夜と許許太久禍穢速佐須良比給千座置座を乱用したことで、一夏と箒の組は順調に勝ち進んでいった。

その後の試合は相手の機体が訓練機であったため、数分で一夏と箒の勝利という形で終わった。

この試合を見ていた観客たちは、二種類の単一仕様能力を使う一夏に対し、関心を示し、決勝戦直後の一夏をスカウトしていた。だが、スカウトしてくれた会社をよく見てから決めると一夏はスカウトを断り、スカウトマンから会社のパンフレットを幾つか貰っていた。箒にもスカウトマンは接触してきたが、箒は重要人物保護プログラムにより政府の保護を受けているため、何処かの会社に属することができないと断っていた。

スカウトが一通り終わり、一夏と箒はそれぞれ更衣室で着替え、アリーナの廊下で合流し、寮の食堂へと向かった。

 

「一夏、お前に聞きたいことがある。お前のあの剣術は何だ?」

「“何だ”って、どういうこと?」

「あれは篠ノ之流剣術ではない。動きがシュシュシュシュシュスパーンではなく、バキーンドッカーンゴッシャーンな感じだ。持っていた刀が大剣だったということを考慮しても、あのような動きは篠ノ之流剣術にはない。我流かと思ったが、それにしては動きに無駄が無い。…あの剣術をどこで、誰から学んだ?」

 

すこし棘のある口調で箒はジト目で一夏を睨む。

同じ道場で学んだ一夏との繋がりを無くしたくないという理由で剣道を続け、箒は他の流派の道場に属することはなかった。だからこそ、一夏が他の流派の剣術を使うことに、怒りや嫉妬のような感情が箒の中から出てしまい、口調がきつくなる。

 

「分からないんだ」

「分からない?」

「あぁ、何故か、最初から、この時はこう動けばいいって知っていたんだ。誰に教わったのか覚えていない。だから、既知感っていうのかな」

「要するに、体が勝手に動いたようなものなのか?」

「うーん、そんなところかな」

「それなら、仕方ないということにしておいてやろう。……話は変わるが、試合前の約束を覚えているか?」

「約束?もしかして、優勝したら、付き合うっていうのか?良いよ」

「本当か?」

「あぁ、買い物ぐらいだったら、付き合うさ」

「……だろうと」

「え?」

「そんなことだろうと思ったわ!」

 

箒は右足で強く大地を蹴り、素早く腰を捻り、右拳を一夏の腹に叩き込んだ。

篠ノ之流は剣術を教える際に、古武術の動きを教えている。刀を持たない時に襲われた時のための護身術と、剣を振る際の基本的な動きを知ってもらうためだ。篠ノ之流剣術の後継者候補である箒は、この古武術を体得している。そして、箒の怒りにより、箒の拳には本気以上の力が加わったため、人体に向けて放つことを法律上禁止されるほどの威力へと昇華した。

結果、一夏の鳩尾に入った箒の拳は、一夏に気絶させるほどの痛みを与え、横隔膜と肺への衝撃により呼吸のペースを乱させる。呼吸のペースを戻そうとするが、箒の拳により脳が重大なショックを受け、停止してしまったため、呼吸のペースが戻らなくなってしまった。そのまま、一夏はせき込みながら、倒れる。

意識が朦朧としている一夏は箒が早歩きで去っていく足音を聞きながら、安堵した。

 

「これしか、この選択肢しか…僕にはない」

 

その言葉を最後に一夏は気を失った。

 

 

それから、数時間後、一夏は医務室のベットの上で目を覚ました。

気を失い中庭で倒れていた一夏を見つけたシャルロットと真耶が運んでくれたらしい。何故倒れていたのか、事情を聞かれた為、箒にデリカシーの無いことを言ってしまったため、鉄拳制裁を喰らったと所々濁しながら、自分の責任だと伝えた。

その後、数分間真耶から説教を受けた一夏は真耶から大浴場を使っても良いということを聞かされた。大浴場は今後男子のIS操縦者が増えた時のことを考えて、広く作られているらしい。これまで、自室のシャワーで済ませていたため、風呂に入れるのは風呂好きの一夏にとっては嬉しい知らせだった。数時間寝たことで痛みが無くなった体を起こし、真耶に礼を言うと、シャルロットを連れて食堂へ向かい、夕食を終わらすと、自室に戻った。

 

「シャルロット、風呂はどうする?」

「僕はお風呂苦手だから、自室のシャワーにするよ」

「そうか。じゃ、僕はゆっくり入っているよ」

「一夏はお風呂好きなの?」

「日本は温泉が多いからね。多くの日本人は温泉やお風呂は好きだよ」

「温泉って病院の施設じゃないの?」

「あぁ、確かヨーロッパの方じゃ、温泉は湯治のために使われていて、観光資源じゃなかったね。日本人にとって、お風呂はお酒を飲んだり、外の景色を眺めたりしてリラックスする娯楽施設なんだよ。だから、気が向いたら、お風呂に入ってみたら、どうかな?男子の大浴場は女子とは別だから、時間は気にしなくて良いんだし」

「そうだね」

「じゃあ、僕は行くから、たぶん一時間ぐらい戻らないと思うから、よろしく」

 

一夏はそう言い残すと、大浴場へと行った。

数十分後、大浴場に興味が湧いたシャルロットも大浴場に行き、一夏と混浴をし、女性としてIS学園に通いたいと伝えたところ、一夏から応援されたため、決心した。

この一夏とシャルロットの混浴が原因となり鈴がISを展開した状態で一年一組に乱入し、それに乗じて、ラウラが一夏を兄にするという問題発言したりと、トーナメントの次の日の朝は慌ただしいものとなった。

 

 

 

IS学園一年一組で騒動があった日

 

「ハルフォーフ先生は休みなんですか?」

 

クラリッサが授業になっても教室に現れないことを心配した簪は担任に尋ねる。

 

「えぇ、有給を使って、図書館で本を探しているって聞いているわ。何か用なの?」

「はい。個人的に話があるので…ありがとうございます。では、図書館に行ってきます」

 

簪は頭を下げ、担任の菜月に礼を言うと、速足で図書館へと向かった。

そんな簪の後ろ姿を菜月は穏やかな表情で見送っていた。簪は社交性が無く、クラス代表であるが、クラスメイトからの人望があるわけではなかった。人望が無いため、人との関わりが減っていく。結果、簪に話しかける人も、簪が誰かに話しかけている姿を菜月は見たことがなかった。そのため、菜月は簪のことを気にかけていた。だが、簪が誰かのことを気にかけ、その誰かのために時間を割いているということが菜月にとって嬉しかった。

楯無を連れて図書館に来た簪は司書にクラリッサが居るかどうか聞いた。

 

「居ますよ」

「どこにいるか、分かりますか?」

「蔵書検索の履歴を見ますと、一番奥の書庫の古書のコーナーですね」

「古書ですか?」

「えぇ、刀匠の書物の検索をしたようですので」

「刀匠ですか。分かりました。ありがとうございます」

 

簪と楯無は古書のコーナーの位置を確認すると、図書館の奥へと歩を進めた。

IS学園の図書館は武器に関する書物が多い。何故なら、IS武器の拡張のために、参考にする資料を学生たちが必要としているからだ。だが、学生が好んで読む書物は銃火器に関連する物であり、刀剣に関する書物を読む者は少ない。そのため、刀剣に関する書物が置かれたコーナーは人気が無かった。だが、そのコーナーの近くに十冊以上本を山積みにして読みふけっている人物を更識姉妹は見つけた。

 

「ハルフォーフ先生ですか?」

 

急に声を掛けられ驚いたクラリッサはビクッと背筋が真っ直ぐになり、手から本が離れ床に落ちてしまう。クラリッサのリアクションに更識姉妹は驚いてしまう。

 

「すみません。読書中に」

「えぇーっと、更識さんのお姉さん…楯無さんで良いですよね?」

「はい。先生、私は生徒なんですから、敬語は止めていただけませんか?」

「ごめんなさいね。ちょっと動揺して、それにこの口調が板に着いちゃってね。それで、何か私に用ですか?」

「はい、私たちが仲直りできたのは先生のおかげだと妹から聞かされたので、お礼に」

「「ありがとうございます」」

 

更識姉妹は並んでクラリッサに頭を下げる。

 

「そんなこと気にしなくて良いですよ。なんたって、私は先生なんですから」

「それでも礼を言うのは当然です。ところでハルフォーフ先生、何か本を探しているのですか?」

 

有給を取って、図書館の最深部といっても過言でない人気のないコーナーで刀剣に関する書物を読み漁るなど普通のIS学園関係者ではありえない行動である。楯無はクラリッサに何か訳があるのだと察し、クラリッサに恩返しをしようと考えた。

そして、簪も同じ気持ちだった。

 

「気持ちは嬉しいですが、これは私の問題なので…」

「ですが、ハルフォーフ先生、お急ぎなのでしょう?でしたら」

「それでも、貴女達を巻き込むわけには…」

「でしたら、なおのこと、私たちに頼っていただけませんか?」

「どういうことですか?」

 

更識家が対暗部用暗部であり裏社会から表の社会の日本を守り続けて来た一族であり、自分がその長であることを楯無はクラリッサに簡単に説明し、危険なこともこれまでやってきたを伝えた。

 

「分かりました。私の手助けをしてくれることは大変うれしいですが、信じられない話をします。それに、一度でも危ないと思ったら、もう私には手を貸さないでください。それだけは約束してください」

 

クラリッサは二人にある話を聞かせた。


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