IS -僕は屑だ-   作:屑霧島

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あぁ、とっくに犯して殺して燃やしちまったよ


       解脱した自分から嫌われた人


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目が覚めた一夏は久しぶりに夢日記に夢で見た出来事を書いていく。

 

「こんなところか」

「…一…夏?」

「あぁ、シャル、おはよう。もしかして、僕の独り言で目がさめちゃったかな?」

「うんうん、大丈夫」

 

目を擦りながら、シャルロットは起き上がった。

シャルロットの足取りがおぼつかない、寝ぼけているようだ。一夏は机の引き出しの中に日記を入れ、立ち上がり、制服に着替える。

 

「いよいよだね」

「うん」

 

そう、今日は学年別トーナメントの当日である。

一夏とシャルロットは制服を着ると、食堂へと向かい、途中でセシリアと鈴に会った。

話題は自然と今日の学年別トーナメントとなった。セシリアは相川さんと組むらしい。鈴は自分の組にあまり知り合いがいないため、同室の子と組むらしい。学園別トーナメントでは専用機持ち同士が組を作り、戦力が偏らないようにするために、専用機は専用機と組むことができないという規定が出来たため、一夏はシャルロットと組むことができず、セシリアは鈴と組むことができなかった。

セシリアと鈴は一夏が誰と組んだのか気になっていたらしく聞いてきた。

 

「箒だけど」

「あんた、箒に何か言われたんでしょ?」

「何かって?」

「箒が優勝したら、つ…付き合うとか?」

「あぁ、了承したよ」

「付き合うって…何に?」

「?買い物にだけど?」

「はー」「ふー」

「ん?どうしたんだい?」

「何もありませんわ」「何もないわよ」

「……」

 

食後、教室へ向かい、朝のSHRを受けると、学生は皆アリーナへと移動となった。

男子の更衣室へ一夏とシャルロットは向い、ISのスーツに着替える。先に着替え終わった一夏は学年別トーナメントのトーナメント表を見る。トーナメント表の左端には織斑一夏&篠ノ之箒、その隣は凰鈴音&ティナ・ハミルトンと書かれていた。

 

「一夏の一回戦は鈴とだね」

「シャルは?」

「……ボーデヴィッヒさんだね」

「僕とシャルが当たるのは二回戦か」

「そうだね。じゃあ、一夏、二回戦で会おう。……負けないでね」

 

シャルロットは手を上げると、更衣室から出て行った。

一夏と会場が違い、更衣室から遠かったため、少し早めに出なければ時間に間に合わないからだ。一夏は更衣室から会場が近いため、ゆっくりできる。軽く柔軟をすると、一夏は箒との待ち合わせの場所へと向かった。

 

「遅いぞ、一夏」

 

箒は既に待ち合わせの場所で腕を組んで待っていた。尖った口調で言っているが、箒の表情は何処か嬉しそうだった。想い人である一夏と組めて嬉しかったからである。

箒と合流した一夏は鈴との試合の作戦会議をしながら、アリーナへと向かった。

コックピットからアリーナにでると、観客席がほぼ満員であることに二人は気づいた。織斑千冬の妹で世界に唯二人しかいないIS男性操縦者の内の一人である織斑一夏と、ISの開発者篠ノ之束の妹である篠ノ之箒、中国の代表候補生であり第三世代のISを専用機とする凰鈴音の三人がぶつかる試合は注目度が高かったからだ。

外部から観戦に来たIS関係者や政府の役人も特別観客席からこの試合を見ている。

 

「この間の試合は中断されちゃったから、ここで決着をつけるわよ。一夏」

 

双天牙月を鈴は手にしている。相方のティナはラファールを展開している。

一夏は雪片二型を、箒も打鉄専用の刀を展開する。

 

「何?二人とも前衛なわけ?」

「どうだろうね。そう思わせるために見せているのかもしれないし、実際に二人とも前衛かもしれない。いや、実は二人とも距離を取って射撃武器を使ってくるかもしれない」

「一夏、アタシを騙そうたってそうはいかないわよ。その白式は雪片二型以外持てないんでしょ。だったら、二人とも後衛はあり得ないわね」

 

ドヤ顔で鈴は一夏を指す。

その直後、試合開始のカウントダウンが始まる。カウントダウンが始まると、箒は緊張し刀を握る手に余計な力が入ってしまう。彼女は剣道の試合に出場したことはあったが、観客が少なかったため、観客が多いISの試合に場馴れしていなかった。

一夏は箒の肩に手を置き、箒を落ち着かせるようとする。

その様子を見た鈴の額に青筋が立つ。

 

「3…2…1…試合開「イチャイチャしてんじゃないわよ!」」

 

目のハイライトを失った鈴が双天牙月を振り回し、一夏に襲い掛かってきた。

一夏はそれを雪片二型で受け止めようとしたが、鈴の突進は重く壁際まで押し切られた。

ティナはこの時点で不味い展開になったと焦る。鈴とティナは戦う前に、鈴が一夏と箒を同時に相手し、ティナが後ろから援護射撃をするという計画を立てていた。ティナが近接戦闘を苦手としたからだ。一方、一夏と箒の立てていた作戦を実行しやすい展開となったと一夏と箒は喜んだ。何らかの方法で鈴を一夏が引き付け、その間に箒がティナを叩くという一対一×2という構図を作り、勝った方が残っている方を助けに行くという作戦を二人は考えていたからだ。この方が、下手に連携を取るよりかは良いと考えたからだ。

一夏としてはどのように鈴を引き付けようかと悩んでいたため、勝手に鈴がキレたのは驚きを隠せなかったが、棚から牡丹餅だと、すぐに気持ちを切り替えた。

 

「箒はなんとか強引に懐に入り込んでハミルトンさんの射撃を封じることができている。向こうの心配はなさそうだ。…こっちは引き付けたのは良いけど、どうしようかな」

「ぶち殺す ぶちぶちぶっち ぶち殺す」

 

一夏は瞬時加速で何とか距離を取ることができたが、鈴は双天牙月を振り回し、衝撃砲を乱射しながら、追いかけてくる。その姿は血に飢えたバーサーカーだった。

鈴の隙を一夏は探す。鈴に隙はあるのだが、鈴の攻撃が激しいため隙を突くリスクが非常に高い。白式の燃費の悪さやIS操縦の技術の差も考慮すれば、通常の武装では甲龍のシールドエネルギーを半減させるのに、白式のシールドエネルギーの約4分の3を消費してしまうだろう。

 

「でも、逃げ回るだけは格好悪いよね」

 

だが、それはあくまで零落白夜をしようしないという前提での話である。零落白夜を使えば、一度で倒すことは出来る。成功すれば一発で終わらさせることができるが、成功する可能性は低く、かなりの運が必要である。

だが、今の一夏が鈴に普通に勝利するにはこの手しかなかった。一夏は零落白夜を発動させると、反転し、鈴へと向かった。衝撃砲を何発か受けた白式はシールドエネルギーを失う。だが、思った以上に受けた砲弾の数は少ない。鈴との訓練を通じて、鈴が衝撃砲の撃つタイミングを一夏は体で感じることができるようになったからだ。

零落白夜が甲龍の胸部に突き刺さり、甲龍のシールドエネルギーを奪っていく。

だが、鈴は攻撃を黙って受けるようなIS操縦者ではない。甲龍のシールドエネルギーの残量が3割を切ったところで、双天牙月で雪片弐型を弾き、零落白夜から逃れることに成功した。そして、雪片弐型が弾かれたことで無防備になっている一夏に、鈴は衝撃砲を数発叩き込んだ。衝撃砲を受けた白式のシールドエネルギーは半分以下となり、衝撃砲を受けたことで吹き飛ばされ、鈴との間に距離が出来てしまう。

 

「一撃で決められなかったか」

 

一夏にとってこの状況で距離を取られるのは非常にまずい。

零落白夜による奇襲攻撃であったため、さきほどの攻撃はうまく行ったが、今の鈴はこちらの攻撃に対して注意を払い、敏感になっているため、さっきの攻撃をしたところで迎撃されてしまう。だからこそ、一夏は先ほどの一撃で試合を決めたかった。

零落白夜を閉じ、一夏は何か策はないかと考えながら、鈴を引き付け、時間を稼ぐ。時間を稼げば、箒がティナを倒し、二対一の有利な試合が出来ると考えたからだ。

 

「箒、そっちは大丈夫か?」

「何とか、最初はこちらが押していたが、距離を取られて厄介なことになっている。すまない。そちらの援護にはもう少し時間が掛かりそうだ」

「分かった。じゃあ、僕一人で鈴を何とかする。箒は僕のことを気にせず自分のペースで戦ってくれ」

 

箒は時間が掛かると言っているが、チラッと見た感じでは箒が押されており、かなり不利な状況にあると一夏は分かった。箒がティナの中に入り込みある程度のダメージを与えることに成功していたようだが、仕留めるに至らなかったようだ。その結果、距離を取られてしまい、箒はティナの射撃の的となっている。ダメージは現段階では少ないが、いずれシールドエネルギーの残量が0になるのは目に見えていた。この状況が続けば、箒はティナに負けてしまい、一夏対鈴&ティナという不利な試合展開となってしまう。

 

「仕方ないね。これは使いたくなかったけど……黒円卓の聖槍!」

 

一夏は黒円卓の聖槍を展開し、左手で持つ。

 

「ようやく出したわね」

「あぁ、どうやらこれを出さないと勝てない状況みたいだからね」

「ずいぶんな自信じゃない。それがあったら絶対に勝てると思っているの?……残念だけど、その奥の手使う必要ないわよ……アタシが叩き潰すから!!」

 

鈴は衝撃砲を最大出力で乱射し、一夏の反撃の機会を潰す。

一夏は黒円卓の聖槍と雪片弐型の二刀流で衝撃砲の砲弾を防ぐ。白式のシールドエネルギーは削られ、残り少なくなるが、0になる寸前で鈴の甲龍にある異変が起きた。

 

「『エラー』!なんでこんな時に衝撃砲が使えないのよ!後ちょっとな…のに……」

 

衝撃砲を見た鈴は絶句した。衝撃砲が黒紫色に変色し、所々錆びていたからだ。

数分前はメンテナンス直後であったため完全な状態であった。だが、今の姿はまるで何十年も雨風に晒されたボロい車のようで、今にも朽ち果ててしまいそうな姿をしていた。

衝撃砲が原因不明の故障を起こし使用不可能となったため、鈴は射撃による中距離線を諦め、双天牙月による近接先頭に切り替える。双天牙月の柄を繋げ、鈴は斬りかかった。

だが、その双天牙月も黒円卓の聖槍に触れた瞬間急激に劣化を始めた。

 

「嘘……なによ、それ、チートじゃない!」

「だから、使いたくないんだよ」

 

一夏は零落白夜を発動させた雪片弐型で鈴に反撃する。鈴は双天牙月で防御を試みるが、触れただけで折れてしまうような武器など何の意味も無かった。

零落白夜を受けた鈴の甲龍はシールドエネルギーが無くなり、鈴は敗北した。

 

「あーあ、負けちゃった。アンタ、あんなチート持ってるんだから、絶対に勝ちなさいよ」

「そのつもりだよ。千冬姉との約束を果たさなくちゃいけないからね。……ラウラ・ボーデヴィッヒに勝つって約束をね」

 

その後、一夏は箒と合流し、ティナに勝ち、一回戦を突破した。

 

 

 

その頃……

 

「……嘘、嘘だって言ってよ。ねえ……なんで貴方がそれ持っているのですか。違う物ですよね。私の見間違いですよね。お願いだから、そうじゃないと私は……」

 

一人の女性がモニターを見ながら、泣いていた。


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