「え?一晩で能力考えて、もう形になったの?」
「そそ。」「うむ。」
「なんでビスケが自慢気なんだよ。」
ゴンとキルアを起こし、4人で朝食となった。
4人顔を突き合わせて話すのは食事中ぐらいでしかない。『練』の持続訓練なら話しかけることもできるのだが、2人ともお互いの『練』のコツを真剣に話し合っているのであまり気軽に話しかけられない。
ということで、早速昨晩の頑張りをゴンとキルアに話してみた。
「へぇ!見てみたい!」
「治癒……か。
その能力なら応用も利きそうだな。」
ゴンは目を輝かせながら僕に強請り、キルアのほうは顎に手を当てて真剣に考え込んでいる。
「今見せなくても2人には後で体験してもらうわよ。
しばらくはピトーの能力の実験につき合ってもらうわ。
これからはアンタたちがぶっ倒れたら、あたしとピトーの2人でやるから。
心配せずともあたしがピトーをミッチリ扱くから疲労なんて残させないわ。」
「うん!」「いいぜ。」
「お風呂にもなるから入りたかったら言ってね。」
「はいはい!オレ一番!」「あ、オレも入りたい。」
顔を突き合わせてにらみ合うゴンとキルア。大体こうなったらジャンケンだ。出合って5日しか経ってないけど見飽きるくらいにはよく張り合ったり、いがみ合ったりしてる。どちらが勝負に負けて悔しがっても1時間もしないうちにケロっとしてる。
「なんでビスケまで入りたそうなの?
さっきまで入ってたじゃん。」
「血の臭いが落ちてないのよ。
今は2人がいるから我慢するけど、今日の夜も風呂に入れなさい。これは師匠命令。」
こんなことで師匠命令?なんだかなー。
もうほとんどお風呂が主目的になりそうだ。水流操作の向上には役立つからいいけどさ。
《
おかげで、僕らはビスケから拳骨をプレゼントされてしまった。反省。
さて、支援用の能力として《
切り札か。
僕は強化系だ。それを主軸にするなら……。
身体能力の強化で肉弾戦ぐらいしか思い浮かばない。
百式観音も思い浮かんだんだけど、すぐに却下した。
あんなたくさんの型から瞬時に必要に応じて適した型を選ぶなんてどれだけ研鑽をつめばいいのかすらわからない。能力を形にするだけでも何年かかるのやら…。
しかも、感謝の1万発正拳突きでネテロと同じ境地に至れるとは限らない。なによりも、これはないと僕が考えてしまっているから模倣するのはやめたほうがいいんだろうね。
武器を使うのはどうだろうか。
頑丈な爪ならある。それに僕が扱ってもすぐにガタがつかない武器なんてあるかな?ん~、遠距離用に武器は必要かもしれないけど、能力作るまでは保留か。
結局は速度を生かした接近戦が主軸かー。
なら、より速く動くための能力を作るのはどうだろう。
車椅子に乗った念能力者がオーラを噴出させて移動してたのを覚えてる。あれなら放出系能力だからいける?オーラを噴出するだけならば、念弾とは違ってオーラの形を保つ必要性はないから比較的簡単そうに思える。
でも、あれは車椅子を能力を使う前提で改造されてたような……。体内でオーラを練って一気に噴出するだけで本当に可能なのかな?車輪がある車椅子だからこそ能力として機能してたとかじゃ?
こうなったらビスケに聞いてみよう。
「できるわよ。
系統別修行で近いのがあるわ。」
朝食を食べた後、『練』をしているゴンとキルアを見守るビスケに聞いてみると答えてくれた。そのまま僕はビスケの座っている岩の上に座る。
「へぇ、どんなの?」
「系統別修行 放出系Lv5《浮き手》。
内容は片手で逆立ちしてオーラの放出のみでジャンプすることよ。
やってあげるから見てなさい。」
そう言うと彼女は岩から降りて逆立ちをする。実演してくれるようだ。
ビスケのスカートがめくれない。
中身は一体どうなってるんだろ?まさか固定用のワイヤー入り?
「いくわよ。
……ふっ!」
「おぉ!
……2mくらい浮いたね。」
着地するとビスケは僕の隣に腰を下ろした。
移動用にするには推進力が足りなさそう。というか明らかに足りない。
「こんな感じよ。ま、あたしは変化系だから、軽くやってもこの程度だわさ。
強化系のピトーならもっと高くいけるわよ。」
強化系なら放出系習得率は80。それなりにはいけるってことか。
《浮き手》の訓練して使えるようなら能力として検討してみようかな。
「足にオーラを集めて脚力強化するよりもオーラ消費量が多いこと。
要求されるオーラ操作の技術がものすごく高いこと。
能力とするならデメリットはこの2つ。
ピトーなら前者は気にしなくていいわ。」
「へぇ。《浮き手》かー。」
「移動に使うなら、背中・両肩・脚部の最低3か所は噴射できないと厳しいかもね。」
早速立ち上がってやってみることにした。
え~と、デコピンのイメージだったっけ?手だけ精孔をきつく閉じて、体内でオーラを凝縮する。そして、デコピンみたいに力を貯めて
――一気に噴射!
その瞬間、掌からの衝撃と体全体にかかる重力が少しだけ増すのを感じた。
―――浮けた!ていうか高っ!
浮遊感を感じて地面に目を向けると頭から落下するには高すぎる光景だった。
このまま落ちたら!?『堅』!
両手を突き出して何とか着地し、そのまま前転して座り込んだ。
「……セ~フ。
今のはちょっとヒヤッとしたよ~。」
あー、この体なら大丈夫だったかも。
気が抜けて地面にぐったり横になると3人がこちらを見ているのが目に入った。
「すっげぇ!
コツ教えてよ!」
ゴンが『練』をしながらこっちに詰め寄ってくる。朝食食べたばかりだからまだまだ元気そうだ。
「え?デコピンのイメージでやったけど……。」
「デコピン?」
ちょっと怯みながら答えると、ゴンはよく分からないといった顔で首を傾げた。
もっとわかりやすく言うなら、どう言えばいいんだろう?うーん。
「えっと、デコピンみたいに力を貯めて一気に噴射……かな?
このイメージが普通じゃないの?」
「オレがビスケから教えてもらったのは水鉄砲のイメージだった。
ねね、そのイメージの仕方詳しく教えて!
今度試してみる。」
ゴンに乞われるがまま、先ほどの《浮き手》のやり方を思い返しつつ教える。
そっかー、水鉄砲のイメージだったのか。
ゴンの真後ろにビスケとキルアが話してるのが見える。
「下手するとピトーみたいなのが追加で3体。
会長達大丈夫か?」
「くそじじぃなら引き際くらい心得てるわよ。
ピトーの《浮き手》は力技ね。タイミングがズレてたわ。」
「なのに7m近くも浮いたのかよ。
……もちっと気合入れて修行するかー。」
ゴンに説明していると二人の話し声が聞こえてきた。
今のでまだまだなのか。
オーラの消費量はそこまできついわけじゃないし、能力として作るのはありかな?
また夜にでも能力の相談でもしようか。
ゴンとキルアが力尽きたのでビスケのお風呂が済むとマッサージ講座が始まった。
僕の隣でゴンに《
「水流マッサージには2つの刺激があるわ。
1つ目は名前の通りの水流刺激。2つ目は水圧振動刺激。
この2つの刺激で人の手でマッサージされたような刺激を再現できるわ。」
いつもビスケが2人同時に《
「ピトーの《
水流マッサージのメリットは全身を同時に強弱自由自在な刺激で包み込めることよ。」
「それってかなり難しくない?」
この体ならまだまだ
「あたしのクッキィちゃんみたいに決まった動作をプログラムしてしまえば楽チンよ。
その方が操作系能力の使用が低くなるから、変化系のあたしでもできるわ。
とりあえず今は快眠効果のあるマッサージを教えるからキルアにやってみなさいな。
クッキィちゃんの手の動きもよく観察するように。」
「押忍。」
水流のプログラムか。
今考えている能力が完成したら、捕縛用の水流操作も覚えてみよう。
「プログラムさえしてしまえば操作系能力はあまり使わないんだよね?
「そうね、プログラムなら
それにしても、
うまい呼び方よね、それ。この子たちに教えてもらったの?」
ビスケが視線を僕からゴンに移す。
母親の顔なんて今でははっきりとは思い出だせないけど、ビスケの表情に母性が見える気がする。
おっと、見とれてる場合じゃない。
「記憶の劣化が激しいけど、こういう念の記憶だけならある程度無事だったからね。
嘘は言ってはいない。
「ふ~ん、どこかの流派でそう呼んでるのかしら。ま、いいか。
その
そういうこともあって
たぶん『纏』と『練』をするだけでも埋まってくんじゃないかしら。
あれって結構系統毎の基礎に関係してることがあるし。」
なんですと!?
それって修行ばかりしてたら能力作れなくなる可能性もあるってことじゃないの!?
僕が驚いているとそんな僕の様子をビスケが可笑しそうに笑っている。
「ふふ、大丈夫よ。
『纏』と『練』に至っては基礎の基礎だから埋まる量なんて高が知れてるわ。
それも覚えてる。
でも、原作では戦闘中に簡単に説明されてただけで、自分なりの解釈になっちゃうんだよね。
「
合ってるか不安になりビスケの顔を伺ってみると満足そうなビスケの顔をしていた。
どうやら合っていたようだ。
「正解よ。
『練』をすればするほどその
そして
だから念の基礎修行である『練』を怠らなければ心配することなんてないわよ。
それに系統別修行はバンバンやっちゃったほうがいいわ。
能力作るならそれぞれの系統別の基礎くらいは固めておいた方が得意の系統の伸びがいいの。」
「それは聞いたことがある気がするなー。」
原作の中でビスケがそんなこと言ってたかな。
「類稀な才能を持ってる奴や成長期の子供は、四大行するだけでも
増えていくわ。ゴンとキルアはどちらでもあるから余計に基礎が大事よ。
2人には前々から四大行は疎かにしないように厳しく指導してる。
もしかしたらピトーも今が成長期の可能性もあるから四大行はしっかりやりなさい。」
今どれだけ基礎修行をするかで今後の伸び代が決まっちゃう可能性もあるのか。
「肝に銘じとくよ。
「昔から色んな流派やハンター協会が調べてはいるんだけど、結論が出てないのよねー。
そもそも
だけど、
……話が長くなっちゃったわね。ビスケちゃまの念講座はここまで♪
そろそろキルアに集中しなさい。」
「押忍。」
でも、基礎修行していけば
『練』は
ビスケの《
結局は日々の積み重ねかー。
ゴンとキルアが起きたので、みんなに提案してみることにした。
「そろそろみんなでマサドラ行かない?」
「うん、オレは賛成。
ピトーの手伝いに来たんだから一緒に行くよ。」
ゴンは賛成してくれた。キルアは悩んでるようだ。ビスケはキルアの判断に任せているみたい。一番ゲーム経験が豊富なのはキルアだから、自然とそうなるのかな。
「……ビスケとピトーのフリーポケットはもうランクD以上の怪物カードで埋まってるし換金だけでも
しといたほうがいいな。ついでに
ピトー、半径20mは目視でわかるか?」
「目視だと……。
これくらいで20mってところかな!?」
ある程度離れてキルア達に聞こえるように少し大声で伝えると3人が顔を見合わせてうなづいた。
「うし、合格!
なら、
ついでにノートと筆記用具が欲しいな。ビスケが地面に水流操作の図を書いてくれるんだけど、イマイチわかりにくいんだよね。
遠目でマサドラを眺めて思ったことは1つ。カラフルすぎ。チェック模様の丸みがある建物ばかりが見える。その上を数個のタコっぽい気球みたいなのがホワンホワンと音をたてながら浮いている。
マサドラに続く道を歩きながら浮遊物も見上げるとすごい違和感。
「なんというか……思ってたのと違う。
あふんっ!」
キルアに肘打ちされ、くすぐったくて変な声が出ちゃった。
抗議しようとすると首元つかまれて屈ませられる。
「何々!?」
「(そういうことは心の中に閉まっとけ。
このG・Iがゴンの
ゴンは
あと変な声出すな。)」
「あぁ、そうなんだ。
そういえばジンさん関係だと5割り増しで目が輝くもんねー。
気をつけるよ。」
小声だけど妙な気迫があるキルアの忠告を受ける。
言われてみれば、そうだった気がする。キルアもゴンを馬鹿にされたみたいで怒ったのかな。
「友達だけあってよく知ってるねー。
あ、親友だっけ?んふふ。」
「うっせ。」
「アタッ!」
おおおぉぉ。
オーラで強化されたデコピンは頭全体を揺さぶるということをはじめて知った。
悶えているとキルアは顔を背けて先に行ってしまった。キルアの耳がちょっと赤い。
僕にも……。
マサドラに入ってみると建物の下部はそこまで奇天烈ではなかった。背の高い建物は、屋上にだけ球体上のモニュメントがくっついてるだけだった。ただし、マサドラの
さっそく
店員が毎度貯金口座の説明しようとするのが煩わしー。
換金したお金のほとんどは、
「ネフェルピトー様の貯金額は全部で4139万
「すごっ!
怪物カードでも結構儲かるもんだね!」
「こんなもんだろ?」「いつもこのくらいだよね。」
「まずまずといったところかしら。
でも、こういうの見る度に
金銭感覚がおかしくないかな!?プロハンターってみんなそうなの!?
お得意様になったので残りはみんなでカウンター前で整理してまとめて売却した。お得意様になったら店員から様付けされる仕様らしい。さっきまでは対応がフランクだったのに今では敬語だ。
Cランクで売値が100~140万。それが僕とビスケで合わせて11枚。初っ端からかなりの儲けだ。Dランクだと売値が50~90万だった。
「Bランクだと売値はいくらになるんだろ?」
「Bランクは500~900万くらい。指定カードなら最低でも1000万になるんだ。
あ、《聖騎士の首飾り》は買っておいたほうがいいよ。
プレイヤー同士の
指定カードなら一気にランクCの売値の10倍になるってことね。
ゴンの言うとおりに《聖騎士の首飾り》は買っておこう。指定カードの中で一番安いし、指定カード用と装備用に2枚買っとけばいいか。
「じゃ、《聖騎士の首飾り》を2枚頂戴。」
「毎度お買い上げありがとうございます。
《聖騎士の首飾り》2枚で1000万
高いなー。指定カードの中でも一番安いと言っても1枚500万か。
他の指定カードは3000万は超えてる。買値は売値の3倍くらいなのかな。
《聖騎士の首飾り》は装備プレイヤーにカードに掛かった呪いを解く効果を付与させる。その上、攻撃
指定カードの中では《聖騎士の首飾り》の使用頻度はかなり高い。だからなのか、《聖騎士の首飾り》のランクは指定カードの中で唯一Dランクだ。
《聖騎士の首飾り》を一つアイテム化させるとキルアが僕の横に来てカウンターに寄りかかってきた。
「ついでに地図買っていこーぜ。
買うのはこっちの高いほうな。」
キルアがカウンターの上に置いたのは65万の地図カード。
地図にはプレイヤーが情報を集めたり、実際に行ったりすることで埋めていくタイプとすでに全部記載されてるタイプの2種類ある。キルアが持ってきたのは後者の地図カードだった。
「えー?また埋めてけばいいじゃん。
そのほうが地理も覚えやすいよ。」
僕とキルアの間からゴンが頭をつっこんでカウンターを覗き込む。
「なんでだよ。面倒くせー。
お前どこまでポジティブなんだ。」
「そのほうが楽しくない?」
「くない!こっちのほうがお得情報も載ってるから便利だろ。
手伝いでもあるんだからこれでいいんだよ。
ほら、ピトー。さっさと買っちまえ。」
「それじゃコレください。
支払いは貯金口座からで。」
「毎度お買い上げありがとうございます。」
買ったその場でアイテム化する。
あれ?普通の地図にしか見えない。
どこにもお得情報が載ってないんだけど、どゆこと?
「地図はねー。」「こうすんだよ。」
地図を開いて首をかしげていると両サイドから二人が地図を覗き込んできた。
二人が地図上をタップすると懸賞都市アントキバが拡大されて右端に情報欄が出てきた。
タッチパネル式!?時代を先取りしすぎじゃない!?
「うわぁ、コレは便利だ。」
「あとは自分で色々いじって覚えてけよ。
じゃ、次は
地図から目を離すとビスケが僕たちから距離をとって静かにしていた。
「ビスケ?」
「こういうのはあんた達に任せるわ。」
ビスケに呼びかけても両手を交差させて拒否を示す。
「ビスケはこういうの苦手なんだ。」「(なんか
「確かに。」
ついキルアの問いかけに頷いてしまう。
やばっ!
気づいたときにはキルアが吹き飛ばされ、ビスケが後ろに回りこんでいた。
遅いのに早いとか意味わかんないっ!
「ふんっ!!!」
―――ガシッ!
「いだだだだだ!尻尾で背負い投げしようとしないで!
オーラで強化して引っ張るのはやめてえぇええ!!」
しかも僕の足を踏んでいらっしゃるぅううう!!
「大惨事?ちゃんと繋がってる?」
開放してもらうとすぐさまゴンとキルアにパーカーをまくって尻尾を見てもらう。
「大丈夫。血は出てないよ。」「平気平気。ギリ繋がってるって。」
「ギリ!?ギリってどういうこと!?」
たとえこの体が丈夫でも『絶』してる状態の僕では全力で『堅』をしているビスケに尻尾を引っ張られたら痛いのは当然だった。口は災いの元だと身に染みたよ。
「次はその尻尾を文字通り引っこ抜くわよ。」
「すいませんでした!」
この体になっての初めての土下座だった。
次は本命の
「バッテラが依頼取り下げたにしても、列が少ないな。」
「《離脱》が当たりやすくなって人がいなくなってるとか?」
《離脱》は対象プレイヤーを
ゴンとキルアの反応を見る限り、いつもは違うらしい。今ショップ前に並んでる人は5人。これでも少ないようだ。
戸惑っている僕のためにキルアが説明してくれた。
「今日は定休日……なわけないか。」
「そんなの、このショップにないわよ。
年中無休で午前10時から午後9時までやってるわ。
きっと
僕が当てずっぽうに聞いてみると、隣で歩いていたビスケが答えてくれた。
「あ、なるほど。
まだ捕まったって情報が出回ってないんだ。」
「そういやショップ利用したプレイヤーを手当たり次第に襲ってたとか聞いたっけな。
1週間以上も立て続けにプレイヤーが襲われればそりゃ警戒するわ。」
ゴンとキルアも合点がいったようだ。
そういえば原作でいたね、そんなの。
知ってるプレイヤーは利用者減って買いやすいから黙ってるだろうし、被害にあったやつは移動
となると、並んでる人は移動
あれ?なんか微妙な人たちしかいないような……。
「(なんかあんまり強そうに見えないんだけど。)」
「(そりゃアンタに比べれば、大部分がそうでしょうよ。
今まで会ってきたプロハンター達も上から数えれば早い奴らばかりなのよ。)」
最後尾に並んで他の人に聞こえないように小声で話すとビスケが答えてくれた。
「前までの上位プレイヤーは
あ~、しくった。
「あ!そうだね。
今から戻る?」
ゴンもうっかりしてたようだ。
今から二手に別れるのもいいかもね。
「(
防御
今のところ攻撃呪文を跳ね返せるのはピトーだけなんだから。)」
「うん。」「オッケー。」「じゃ、それで。」
ビスケが顔を寄せて小声で提案し僕ら3人共賛同した。
「本来ならもっと行列が並ぶんだよね?
それって並ぶだけでも一苦労じゃないかな。
もうそろそろ2時間経つよ。」
「しゃーないって。
プレイヤーなら誰だって時間いっぱいまで粘りたいものだろ。」
暇つぶしに『練』でもでればいいんだけどなー。
あと少しで順番というところで、ゴンがいきなり列を離れて走り出した。
「おい!?」「どうしたのよ!?」
「いたんだ!」
キルアとビスケが大声でゴンに問いかけると、ゴンはそれだけ答えて裏路地に飛び込んでいった。
いたって何が?
「チッ!
待てよ、ゴン!」
僕がさらに問いかけるが、もうゴンには聞こえないみたいだ。ゴンを追いかけてキルアも裏路地に駆け込んでいく。
「はぁ、手が焼けるんだから。
あたし達も行くわよ。」
「せ、せっかく並んだのに~。」
「
ほら、ついてきなさい!」
ゴンめぇ、あとでデコピンしてやる!
それにしても一体何を見つけたんだろ。……ジンとか?なわけないか。
「ゴレイヌさんはどうした!?」
ゴンを追いかけ裏路地に入ると少し奥の行き止まりでゴンが誰かと対峙しているところだった。フードつきの外套を纏っていて辛うじて男だというのが遠目でわかる。
ゴンに追いついたキルアが彼を宥めている。
「落ちつけって!
てか、知り合いか?」
「
フードから少し顔が見えたんだ。
あいつらを見間違うわけがない。」
目の前の男から目を離さずに話すゴンの言葉にキルアとビスケが臨戦態勢に入る。
えええぇ!なんでここにいるの!?
「待ってくれ!違う!違うんだ!
俺じゃない!人違いなんだ!」
ゴンと対峙していた男がフードを脱ぎながら弁解した。だけど、どう見てもゲンスルー組の黒髪の男だった。僕ですら分かるほどだ。
「俺の名前はモタリケ。
………誰だっけ?