魔法少女リリカルなのは 『神造遊戯』   作:カゲロー

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おひさしぶりです。
勢い任せで仕上げたので荒い部分もあると思いますが、とりあえず日常編の開始です。



『日常』編 その3
新たな仲間


『神造遊戯』が終焉を迎え、新たなる極神の加護を得た第十二根源次元宇宙。

《神域》とも《天空龍神城》とも呼ばれる聖域から、物語の再演が始まる。

 

「はぁーっはっはっは! ルビーさん、降☆臨!」

 

《新世黄金神》と《破壊神》による模擬戦(じゃれあい)が終わり、中庭のオープンテラスで一同が花梨お手製のプリンを堪能するまったりタイムに突入した時、『どばーん!』 という効果音と彩り鮮やかな爆発を演出しつつ現れた『天災』ルビー・スカリエッティ。

「ああ、いつものアレか」とスルー仕様とした一同の反応にちょっぴりむくれるものの、即座に悪女チックな“あくどい笑み”を作って、皆が腰を下ろしているテーブルの真ん中に完成ホヤホヤの発明品を置く。

叩き付ける様に乱暴な取り扱い方をシュテルが注意するが当然のように耳を貸さず、発明品……長方形で透明のクリアケースに納められたタロットカードに全員の視線が向けられたのを確認してから得意気に語り始めた。

 

「ふふ~ん♪ これぞ、ボクの発明した新機軸の契約アイテム。その名も、契約型魔法兵装【アルカナフォース】だよっ」

「契約アイテム? もしかしてポケモンのモンスターボール的なアイテムなの?」

「アリシア、カード状なのですから仮契約(パクティオー)カードの方が適切かと」

 

アリシアとシュテルがルビーの発言を考察している横で、自分の分のプリンを完食したヴィヴィオが好奇心に目を輝かせながら【アルカナフォース】を取り出して眺めていた。

二十一枚からなるカードは不思議な感触を持ち、手触りは紙のようなのに、鋼鉄の板でも仕込んでいるかのように強度が高く、折り曲げることも出来ない。

表面は数字が刻印されているだけの黒一色。

裏面には光り輝く三つ首龍を中心に魔法使いや天使、ドラゴンなどのデフォルメされたキャラクターが描かれている。

 

「ん……。コレ、内側にかなりの魔力が籠められてる。悪魔の駒(イーヴィルピース)と似た感じ」

 

自分の知るタロットカードとは違うんだと角度を変えながらまじまじとカードを見つめるヴィヴィオの真似をするように覗き込んだオーフィスの呟きに、ルビーの笑みが深みを増す。

彼女の指摘通り、【アルカナフォース】は魔法使いと従者間に結ぶ仮契約(パクティオー)の術式を参考に、埋め込んだ対象を下僕悪魔へと転生させる悪魔の駒(イーヴィルピース)のシステムも参考に組み込まれている。

この魔法兵装は『契約』という目的のために存在する複数の術式の優れた部分を抽出し、組み合わせることで、全く新しい結果を産み出すことを目指して創造されたのだ。

通常の『契約』とは、精霊や悪魔などの高次存在と結びつきを形成し、彼らの異能の恩恵を契約者側の人間でも行使できるようにすることを指す。

例えば仮契約(パクティオー)

あれは、主となった魔法使いの魔力を従者に与えることで身体能力の強化や能力の発言などを行う術式だ。

【アルカナフォース】はそれをペースにしているので、(マスター)……この場合はNo.“21”《世界》の契約者であるダークネスから“0”~“20”のカードを与えられた眷属に黄金神の加護をダイレクトに与える事が出来るようになる。

無限に等しいチカラを得た彼の眷属になると言う事は、万能の異能たるその恩恵にあやかれると言う事に他ならない。

しかも【アルカナフォース】で眷属契約を結んだ存在は、アリシアたちのように守護天使へ転生するという変化も起こらない。

両者の意志によって契約を破棄することもできる安全設計なのだ。

 

「危険じゃないの、ソレ? 下手に力を譲渡して、悪い方向に行かないとも限らないでしょ」

「いえいえ。そうとも言えませんよ、花梨嬢」

 

力の危険性を説く花梨に待ったをかけるのは、我関せずとプリンを貪り喰らう《破壊神》の付き人であり師匠、ウィス。

食べ終えたプリンの容器を片付け、口元をハンカチで拭っていた彼は、いつものように「ホホホ……」と、うさん気な微笑みを浮かべて言葉を続ける。

 

「私もビルス様の付き人をさせていただいておりますが、ある意味で眷属という扱いにならない訳ではないのです。そもそも、古来より《極神》を筆頭とした神々には直轄の僕や従者が存在してきました。実際、《創造神》なんて力を持った精霊に《神》の称号を与えて従えているでしょう?」

「それは、まあ……そうですけど」

 

脳裏に浮かぶのは、三幻神や三邪神、三幻魔を始めとする多種多様な精霊たち。

彼らは皆、《創造神》により産み落とされた子どもであり、眷属でもある。

他にも例を上げれば、《光の巨神》には自身の力の一部を与えた奇跡の戦士を始めとする同種族の光の戦士たちがいるし、《機械猫神》を参考に製造された黄色い妹やちっさい奴らなんかは彼の眷属と言えなくも無い。

神話を紐解いていけば、神に仕えし眷属という存在は、さほど珍しくないのだ。

 

「そもそも、あなたたち自体が彼の眷属的な存在なのだと理解した方がいいですよ? そんなに難しく考えず、絆が形になったように考えればよろしいかと」

「絆、ですか……はい」

 

そう締めくくったウィスに頷きを返したところでダークネスを見やると、ちょうどあちらも花梨の事を見ていたらしく視線が重なった。

 

「花梨」

「あによ」

「俺はコイツを使ってみようと思うんだが……反対するか?」

「あら、意外ね? 身内の風呂敷を広げる様な真似は嫌がるものだと思ってたんだけど」

 

花梨の指摘は正しい。

ダークネスという男は、基本的に身内に優しく、敵には苛烈。その他大勢には無関心というスタンスをとり続けている。

その理由の一つに、万能の願望器と成りうる異能を秘めているが故に、誰彼かまわず願いを叶え続ける様な行為は避けるべきと本人が認識しているからだ。

自分が身内に甘いことを理解しているからこそ、所縁の無い他者を懐に受け入れることを危惧していたはずだ。

それなのに、新しい身内を作る様な発言をするとは、どういう心境の変化があったのだろうか?

花梨の疑問を察したのだろう、ダークネスはサービス残業を命じられたサラリーマンの如き深いため息を吐きつつ説明を始めた。

曰く――、

 

「新米なんだからどんどん仕事して慣れて貰いましょうね……とか、《創造神》がぬかしやがってな。他の《極神》共から、昔無くした神具の回収とか、綻び始めた世界の修復とか……とにかく、色々な雑用を押し付けられそうなんだ。断ろうにも、ニコニコ笑顔で距離を詰めてきやがって……くそっ、デカババアめ」

「あ~……わかるよ、ソレ。僕も昔、神の仕事に慣れましょうね~って便利屋みたいな扱いされたことがあったなぁ」

 

昔を懐かしむように虚空で視線を彷徨わせるビルスを意外そうに見るダークネス。

子どもじみた性格のビルスが大人しく言う事を聞いていたのか? と疑問を浮かべたのが分かったのだろう。

悪戯っ子な表情を浮かべたウィスが、事細かく説明してくれた。

何でも、純粋な戦闘力では《極神》で最強の《破壊神》ではあるが、《創造神》は力ではなく言葉と威圧感でぐいぐい押しこんでくるのが得意技なのだとか。

《極神》のトップに君臨し、発言力も実力も最高位に位置する彼女の言葉を蔑ろにすることは流石のビルスでも敵わなかったようで、物凄くめんどくさそうにしながら小間使いのような真似をさせられていたのだと言う。

 

「なんて言うか、妙な威圧感があるんだよね~……あのオバサンには。こう、なんてゆーの? ――そう! オカン属性って奴だ!」

『ああ~』

 

納得してしまう一同。

以前に、とんでもない大喧嘩へと発展した《新世黄金神》と《破壊神》のガチバトルに、世界が壊れると怒鳴りながら強制介入し、ダメージを負って疲労困憊状態だったとはいえども、ワンパンで二人を沈めたあの時の迫力は幼い頃の母親にお説教を受けた記憶を呼び覚ます。

当人たちも思い出したらしく、でっかいたんこぶをこさえた脳天を擦っている。

 

「あ~……ン、ゴホンッ! とまあそんな訳で、これからいろいろと忙しくなりそうなんでな。手駒は多いに越したことはないってワケだ。それに、以前からルビーが眷属を作るアイテムを作ってると聞いてたからな。渡りに船と言う訳ではないが、メリットもデカい」

「……なるほどねぇ。ま、アンタが決めたってんなら、反対はしないわ。それじゃあ、眷属探しを開始するってことでOK?」

 

全員を見渡しながら花梨が締めると、本件には無関係であるウィスと、最後のプリンを巡って醜い争いを繰り広げているビルスとオーフィスを除いた面々が同意の頷きを返した。

花梨としては、親しくなったオーフィスに眷属にならないか問いかけようとしたが、機先を制するようにダークネスが首を振ったので大人しく従う事にした。

ダークネスにとって、オーフィスは『約束』を交わした相手であり、娘 ヴィヴィオの親友でもある。

死者を蘇生させて己の目的に利用するのではなく、生者を眷属にすると言う事は、ある意味で相手の意志を曲げる事にも繋がる。

本人が口癖のように呟く『静寂を取り戻したい』という願いを尊重するからこそ、ダークネスは軽々しく契約を提案出来ない。

己の眷属契約を結べば最後、静寂とは真逆の賑やかで喧騒溢れる日常を送る事になるのだから。

 

――次元の狭間に郷愁のようなものがあるんだろうしな。騒がしい場所に無理やり引き込んだから、返って苦しませることになるかもしれん。

 

実際は、賑やかな日常も悪くない……というか、寧ろ楽しいとすら感じ初めており、グレートレッドを倒すために参加した『禍の団』という組織にも最近は顔を出さなくなってきている。

団員たちは利用価値のある『無限の龍神』がふらりといなくなるたびに血眼になって探しているものの、結局発見には至っていない。

……まさか、並行世界の友達の家に遊びに行っているとは夢にも思うまい。

もしこの場で「眷属にならね?」 と問われたら、即決で「ん!」 とドヤ顔&サムズアップのコンボが返ってきた事だろう。

しかし残念なことに、以前交わした『約束』を大切にするが故の気遣いが、『無限の龍神』参入フラグをポキッ、と叩き折ってしまったのだ。

――まあ、数週間後には友情という名のアロンアルファで補強されたかのごとき強度を得て復活する訳なのだが、今は関係ないので割愛する。

 

「よし、それじゃあまずはここにいる俺たちに専用のカードを割り当てるとするか。カードはタロットと同じ二十二枚。俺が《世界》を持つのは決定しているとして……お前たちはどれがいい?」

 

言いながら《世界(ワールド)》のカードを引き抜くと、ダークネスの胸元から淡い燐光を放つ魔力が放出、カードに吸い込まれていった。

蒼い輝きを纏う黄金の魔力を吸収し終えると、黒く塗りつぶされていた表面に変化が起こった。

闇色の黒がどんどん薄れていき、その代わりに何者かの肖像が浮かび上がってきた。

現れたのは、どこまでも広がる宇宙に浮かぶ蒼き星……地球。

それをまるで、我がものだと言わんばかりに凶悪な笑みを浮かべて握り締める己……スペリオルダークネスSR。

無限の輪廻(メビウス・ウロボロス)』を発動しているのだろう、展開した装甲から放出した蒼い魔力を纏う姿は、神々しくも恐ろしい。

 

「……なあ。ひょっとして、俺ってボス属性持ちだったのか?」

「え、まさか気づいてなかったの?」

「真顔で断言されるとクルものがあるな……」

 

愛する家族にすら呆れ顔を向けられたことに内心ショックを受けるダークネス。

だが、まあいいかと即座に切り替え、残りの【アルカナフォース】の束を扇状に広げる。

自分のカードを引き抜いて二十一枚になったカードから視線を上げて、アリシア、シュテル、ヴィヴィオ、花梨、ルビーの順に目配せし、促す。

 

「それじゃあ、私はコレー♪」

「では、私は……ふむ。これに惹かれるものを感じます」

「ヴィヴィオはやっぱりこれなのです!」

「ん~……コレ、かな?」

「ボクはこれしかないでしょ~♪」

 

彼女たちもまた、己の引き寄せるカードが最初から決まっていたかのように選択を下す。

 

アリシアは、No.“19”《太陽(サン)》。

シュテルは、No.“2”《女教皇(プリエステス)》。

ヴィヴィオは、No.“5”《教皇(ハイエロファント)》。

花梨は、No.“6”《恋人達(ラヴァーズ)》。

ルビーは、No.“0”《愚者(フール)》。

 

「よし、それじゃあ行くとするか」

『おー!』

「全身黒タイツな戦闘員候補を集めに!」

『いや、ちがうでしょっ!?』

 

各々に相応しいカードを手に、龍神と少女たちは数多の世界へと旅立つ。

新たなる出会いの予感を胸に抱き、《新世黄金神》の眷属探しが開始された。

 

 

――◇◆◇――

 

 

そこは漆黒の闇に支配された世界。

死した獣が終焉の時にたどり着く“墓場”。

死後の世界は数多の並行世界で共有されており、この場所もまた、様々な呼び名を持つ。

とある世界では“怪獣墓場”と呼ばれるその場所には、死した後も意思を以て“個”を維持し続ける強者と呼ばれる怪物が存在していた。

彼らは生前の記憶と闘争本能をそのまま有し、まるで闘技場に送り込まれた剣闘士のように終わりなき闘争を繰り広げているのだ。

 

ふと、何の前触れも無く、静寂であるはずの“墓場”に爆音が木霊した。

次いで、大地を揺るがす凄まじき振動が波紋のように広がり、冷たい空気に殺意の激情が広がっていく。

宙を漂い、自我を消失していた屍たちが殺意に呼応して脈動を始めた。

まるで世界そのものを震え上がらせるほどの殺意と闘志が、渦を巻いているのだ。

闘争の渦の中心に在るのは、二体の『黒』。

人型と獣型、異形な怪物同士が出合い、眼前の敵を屠らんと唸り声を上げていた。

「ピポポポポポポ」と電子音のような鳴き声をあげるのは異形なる人型。

真っ黒な甲冑のような身体と雄牛のような角を生やし、目や耳といった機関の代わりに存在する楕円形の発光体が妖しく明滅している。

 

『宇宙恐竜』 ゼットン

 

とある世界で、侵略兵器として幾度となく地球を襲撃した恐るべき怪獣だ。

しかし、光の巨人すら退けた強者と相対する怪物もまた、並みではない。

 

その姿は一見すると恐竜のような姿をしていた。

だがその体躯はゼットンを軽々と凌駕している。

太く力強い足と長い尻尾で大地を踏みしめ、その背中には剣山のような背びれが並んでいる。

爬虫類を思わせるその口にはギラリとしたキバが立ち並び、その表情はまさに血に飢えた獣といった表現が正しいだろう。

彼こそ、伝説上の聖獣、魔獣すらも凌駕するであろう圧倒的な力を持つ最強の生物。

人の業が生み出した『核』の申し子であり最大の被害者。

 

『怪獣王』 ゴジラ

 

黒き巨獣は重低音楽器を重ね合わせたかのような咆哮を上げ、ゼットンに襲いかかる。

理由など存在しない。

己へと敵意を向けてきた。

それ以上の理由など……必要ないのだから!

 

憤怒か闘志か。

何人たりとも理解できぬ激情を内包した咆哮と共に、怪獣王が突撃する。

荒廃した大地を踏みならし、虚空に浮かぶ敗者の亡骸共が怯え竦む。

禍々しい牙の立ち並ぶ咢が開かれ、口内と背びれに青白い輝きが収束されていく。

それは破滅を意味する禁忌の光。

万物を滅する『核』エネルギーの顕現がチェレンコフ光を解き放ち、王の体内に宿る原子炉より練り上げられた破壊の奔流が一条の閃光……『放射火炎』となって撃ち放たれた。

 

――ゼットーン!

 

迫り来る破壊の奔流を前に、奇妙な鳴き声を上げて動きを見せるゼットン。

両手を振り上げ、頭部の発光体を不規則に点滅させる。

すると、彼を中心に円柱状の輝く障壁……バリヤーが形成、怪獣王の熱線を正面から受け止めてみせた。

先制の一撃を容易く止められ、憤怒の唸り声をあげるゴジラ。しかし、ならば直接叩き潰してやればよいと考えたのだろう。

前進する速度を速め、表情のまったく読めない標的目掛けて猛然と進撃する。

迫りくる脅威に対し、バリヤーを解除したゼットンが反撃に移る。

まずは籠手調べと、両手を突き出して重ね合わせ、放射状の光線を撃ち放つ。

光の巨人の弱点を一撃で破壊したこともある凶悪な閃光が、鋼鉄をも超える強度を誇るゴジラの皮膚を焦がし、蹂躙していく。

連続で撃ち放たれる光線が生み出す痛みに、怪獣王の咆哮が悲鳴じみた甲高いものへと変わっていく。

だが、それでも王の進撃を止める事は叶わない。

肉を焼かれ、血飛沫を蒸発させられながらも止まることなく悠然と――それどころか、感じる痛みを怒りに変換しているかのように、全身に纏った闘気がさらに荒々しく、恐ろしいものへと変わっていく。

ゴジラの胸に渦巻くものは怒りだ。

息子のような存在を残して消滅したことに後悔を感じないわけではない。

だが、アレはもう自分が守らねばならない弱者ではない。故に、彼の中には後悔など存在しない。

心残りを持たず、ただ純粋に本能が囁くままに行動する。

そう……己へ敵意を向けてきた『敵』に対して込み上げてくる怒りと殺意。

偶然この場所で邂逅し、明らかな敵を向けてきた黒い奴。

戦う理由など、それだけで十分すぎる。

故に……殺す。

核の申し子、漆黒の破壊神と呼ばれた怪獣王は、いつだって己自身でも制御しきれぬ闘争本能の赴くままに行動してきたのだから。

嵐のような攻撃に曝されながらひるむ事も無く、一直線に迫り来る敵を前にして、ゼットンの本能が危険警報を鳴らす。

こいつは、今すぐ始末しなければならない存在だ。

理性ではなく、本能で眼前の脅威を理解したゼットンは、己が最強の技を発動すべく攻撃を一時中断する。

突然止んだ攻撃の不可解さに怪訝そうに目を細めるゴジラだが、次の瞬間、驚愕に眼を見開くこととなった。

 

視界を埋め尽くすほどに巨大な紅蓮の劫火球。

 

所説によれば、一兆度とも称される超々高熱の炎を具現化し、射出するゼットン最大の必殺技だ。

元々フットワークに難点がある重量級であるゴジラ。しかも全速力で前進している最中、カウンターのように放たれたソレを回避することが出来るはずも無かった。

弧を描くことなく、直線の軌道を描いた劫火球はゴジラの胸部へ吸い込まれるように着弾し、大爆発を巻き起こす。

爆風が墓場を蹂躙し、巨大な岩石が粉塵と化していく。

濛々と立ち昇る爆風を前に、勝利を確信したゼットンの発行体が妖しく明滅した。

無機質な電子音の如き咆哮が、静寂を取り戻した墓場に鳴り響いた――……。

 

 

だが。

 

ズシン……、と。

勝利の讃美歌を阻むかのような重厚な足音と共に、粉塵の向こう側から闇を切り裂く黒き獣がゼットンに襲いかかってきた。

驚愕し、動揺を顕わにするゼットンの頭部、生物で言うところの目に当たる場所に存在する器官に、体躯に比べて細身でありながら、見た目に反して強靭なる強力を宿す巨腕が突き刺さる。

鋼をも容易く引き裂く鋭爪がゼットンの頭部へ深々と埋め込まれ、脳髄を引き千切っていく。

生前にも経験したことの無い激痛に、狂ったように暴れるゼットン。

超重量の強みをそのまま生かすよう覆い被さってきたゴジラを押しのけるべく、空手チョップのように手刀を幾度となく叩き込む。

だが、離れない。

元々、体格で比べ物にならない差がある両者だ。いかに優れた腕力を持つゼットンであれども、突進の勢いを乗せたゴジラを押し返すことは不可能だった。

超接近状態ではバリヤーを発動することも出来ず、かと言って光線技は自分にも被害が及ぶ。

せめてもの足掻きとばかりに打撃を叩き込み続けるものの、ゴジラはそんなもの気に留める必要も無いとばかりに攻撃の手を緩めない。

ゼットンの頭部を貫く右腕を引き抜き、逆の腕を手刀にして頭部の中心に在る発光体へ叩き込む。

ガラスの割れた様な異音と壊れたスピーカーのような絶叫が木霊する。

組み伏せられ、無残にバタつくしか出来ないゼットンの足の動きが、段々と弱々しいものへ変わっていく。

打撃を放ち続けていた両腕も力無く地面に落ち、特徴的な電子音のような悲鳴が途切れる様に聞こえるだけ。

それを塗り潰すかのように、肉を引き裂き、押し潰す残虐な音を響かせ続ける。

『怪獣王』ゴジラ。

彼の宿す闘争本能は容易く鎮火してくれず、死後の世界で更なる死を重ねた敗者を熱線で焼き尽くすまで収まる事は無かった。

 

「……メルトダウンの末に辿り着いた冥府の底でもなお、闘争に身を捧げるとは、さすが黒き破壊神と呼ばれた獣と呼ぶべきかな」

 

不意に、聞き慣れない声が聞えた。

返り血で染まった兇貌で振り返れば、虚空に浮遊する小さな者が己を観察していることに気づく。

そいつは“人間”とよく似た姿をしていた。

光る鎧を身に纏い、輝く翼を持つ雄。

瞳に宿るのは敵意ではなく……好奇心、であろうか?

ゴジラが生み出した凄惨な光景から眼を背けるでもなく、飄々とした空気を纏っているのが不思議と気になった。

闘争を終えて、怒りが鎮火したからだろうか?

先程までの暴虐が虚言であったかのように静かな精神で、男の言葉に耳を傾けることが出来た。

目の前の男もそれを察したのだろう。

愉快そうに小さく笑ってから、ゴジラを誘うように、掌を上にして手を伸ばしてきた。

 

「どうだ、怪獣王。俺と来ないか? 貴様の抱く無限の破壊衝動を満たせる強者との戦場を用意できるぞ。とは言え、少なくとも俺や赤龍神帝(アパカリュプス)は貴様以上の化け物だがな?」

『……!』

 

怖いなら来なくてもいいぞ?

挑発的な視線に込められた言葉と意味を理解して、ゴジラの咢が凄惨に歪む。

しかし、それは怒りによるものではない。

目の前のこの男は、自分と同種の存在……他の意志に左右されぬ、超越者として存在しているのだと否応なしに理解できたからだ。

故に、興味を抱く。

辛気臭い“墓場”で繰り広げてきた戦いの日々にも飽きがきていた所だ。

精々、楽しませて貰おうか。

まるでJrと出会ったあの時の再現のように、楽しげな怪獣王の咆哮が世界に響き渡った。

 

 

――◇◆◇――

 

 

無間地獄

第八層から成る地獄の最下層。

縦横高さそれぞれ2万由旬にも及ぶとされる広大な冥府の底は、ここに至るまでの七層の地獄で行われる責め苦が児戯にも等しい苛烈な苦で満ち溢れている。

生前に抗いきれぬ罪を犯した罪人の中でも、最も罪深い者共が堕とされ、数千年にも及ぶ責め苦を受け続けなければ輪廻の輪に戻る事も叶わない、まさしく最凶最悪の煉獄である。

 

多腕、多眼という異形の鬼が獄卒を務め、阿鼻叫喚の悲鳴で埋め尽くされた無間地獄……。

だがしかし、地獄絵図を体現した煉獄の中に、ある意味で異彩を放つ建築物が存在していることを知る者は少ない。

階層形式になっている地獄の全階層を貫いているくせに、見た目には雄大な和風の屋敷という矛盾を孕んだその建物は、獄卒の鬼の詰所である。

『地獄の王』である閻魔たち(・・)の仕事場である上屋敷からしばし離れた場所に建てられた下屋敷。

冥府とは思えぬ風情ある庭園が視界一杯に広がる縁側に胡坐をかく一人の老人が存在した。

色彩を失い、白く染まった長い顎鬚を長く伸ばし、額には十字に見える傷が刻み込まれている。

漆黒の着物……死覇装(しはく)の上に羽織を纏い、傍らに木製の杖を携えている。

高級感あふれる座布団に座す姿は堂に入っており、背筋を伸ばして庭園の風景を眺める姿は身分の高い好々爺といった印象を受ける。

しかし、内には煉獄の炎すら生ぬるい激情と後悔が渦巻いており、周囲の空間を捻じ曲げるほどのプレッシャーを撒き散らしていた。

事実、お盆に乗せたお茶と茶菓子を運んできた獄卒が、全裸でエベレスト登山を敢行したかのようなガクブル状態に陥り、無言の老人に睨み付けられた瞬間、白目をむいて気絶した位なのだ。

 

彼の名は『山本 元柳斎 重國』。

 

魂の調整者であった死神によって構成された実働部隊〈護廷十三隊〉の創始者であり、総隊長を務めていた英傑だ。

宿敵との戦いで敗北し、消滅するはずだった彼の魂は、千年にも及ぶ期間で成し遂げてきた偉大な業績の数々が高く評価され、知友であった閻魔の手によって死神であった頃の姿と力を維持したまま、ここ地獄の閻魔屋敷に客将として招かれているのだった。

嘗て失った片腕は再生し、宿敵に粉微塵とされた肉体を魂という形ではあるが取り戻すことはできた。

心残りはある。しかし、今更、誤り続けた老害がでしゃばった所でなんになると言うのか。

そう自分に言い聞かせてここに留まっているのだが……。

 

「やれやれ。アンタは相変わらず、か」

「……比古か。何用じゃ?」

「あん? 今日は妙に刺々しいじゃないか。何かあったか、ジーさん」

 

冥府の鬼ですら怯える元柳斎に平然と話しかけ、あまつさえ彼の隣に腰を下ろしたのは襟首の長い特徴的な白外套(マント)を纏った美丈夫。

胡坐をかいて廊下に座り込むなり、懐から取り出した盃に酒を注いでひと息に呷る。

酒を好まない元柳斎が眉をしかめるのに構わず、堂々とありのままの自分を振る舞う男もまた、彼同様、獄卒に請われてここにいる存在だ。

名を『比古 清十郎』。

古流剣術、〈飛天御剣流〉十三代目継承者であり、おそらく純粋な剣術の才では元柳斎おも凌ぐほどの技量を持つ最強の侍。

時代が生んだ苦難から弱気人々を護ることを流派の理と定め、数多の弱者を救い、それを超える悪を斬り捨ててきた。

大量殺戮を行った殺人者であり、救いを求める人々の希望となった救世主でもある。

相反する側面を持つ彼もまた、獄卒のトップである閻魔……というよりも、その片腕(?) である“鬼神”に獄卒共の指南役を依頼され、ここに滞在していた。

ある意味で似通った理由によって関わり合いを持つ様になった両者は、美しい庭園を肴に、時折こうして肩を並べつつ茶&酒を嗜む様になったのだ。

 

「ふん。貴様には関係ない」

 

踏み込めば斬り捨てる。

そう言わんばかりの剣幕に、しかし、気圧される比古ではない。

元柳斎の怒声混じりの声を聞き流しつつ、鬼神から訊き出した目の前にいる死神の過去情報から理由を推測していく。

 

「後悔、後に立たず。ジーさん、あんたはもう“終わった”男だ。弟子や若造どもに後を託す勇気も必要なんじゃないか?」

「知った風な口をききよるわ……」

「聞いたからな。閻魔のオッサンの庇護もあるだろうが、何よりも昔に後悔や無念を引きずった状態で固定化された魂は『山本 元柳斎 重國』という“個”の存在を揺るぎ無いものにしている……だったか? 強すぎる我のせいで、魂を浄化することも転生させることも出来ず、かと言って放り出すわけにもいかない。何とも、めんどくさいジーさんだな、アンタ。過去の清算さえできれば、全てを忘却して静かな余生を送ることも出来るだろうに」

「……儂の腕は血に染まり、どす黒い炭となって染みついておる。今更、他のナニカに変われるはずも無かろう」

 

千年もの間、死神として魂の安定と戦に身を費やしてきた。

古い人種だということは自分でも理解している。

後に続く者共の礎となることも、先人の役目であることは理解している。

だが、それでも――……過去の清算を教え子に、部下たちに背負わせてしまった己への怒りが、平穏を迎えることを良しとしてくれないのだ。

このまま、終わりなき地獄の中で罪悪感に苛まれて存在し続けることが己に課せられた贖罪なのかと達観じみた思考を抱き始めた時、不意に廊下の軋む音が耳朶に届いた。

 

「そうか? 意外と新しい変化に巡り合えるかもしれないぞ?」

 

「くっくっく……」と愉快そうに含み笑いを零した比古の視線の先、廊下の奥から吹き荒ぶ“変化”という風を感じとり、思わず瞼を閉じてしまう。

地獄では久しく感じていなかった、頬を撫でる暖かな風の心地良さに毒気を抜かれた元柳斎が再び眼を開けた時、彼の前に神々しいオーラを纏った少女が佇んでいた。

金糸の様に艶やかな髪を靡かせ、虹色に輝く二対四枚の翼を背中から生やした少女。

左右で色彩の異なる瞳で元柳斎と比古を見つめ、嬉しそうに微笑んでいる。

まるで、探し人にようやく巡り会えたかのような気配を感じさせる少女に、元柳斎は見覚えが無い。

何者だ? という問いを宿した視線を隣の男へ向ければ、愉快そうに頬を緩めながら盃を傾けているではないか。

 

「……ッ! 比古、きちんと説明せぬか!」

「おいおい、そう荒ぶるなよ、ジーさん。折角のお客さんだぜ?」

「客、じゃと?」

 

訝しみ、改めて少女の姿を念入りに観察する。

フリルのあしらわれた可愛らしいワンピースから覗く四肢は年相応に細く、高貴な身分のご令嬢と言った印象を受ける。

しかし、よくよく見れば手の甲や足の脛に格闘技を嗜む者特有の痣が見受けられた。

どうやらこの少女、何らかの武を習得しているらしい。

見た目子どもな隊員が部下にいたこともあり、すんなりと少女……ヴィヴィオの力量を認め、受け入れた元柳斎。

対するヴィヴィオもまた、ここまで案内してもらった鬼達とは違い、一目で自分の実力を見抜いた老人とおじさんの実力に驚くと同時に納得した。

やはり、父や母たちが認めた実力者であると言う話に偽りは無かったのだと。

 

「おじーちゃん、おじさん。初めましてっ、私、ヴィヴィオ・スペリオルって言います!」

 

ぺこっ、とお辞儀すると金の髪がふわりと舞い上がる。

目の目に在る庭園のように、人の手が掛けられた『美』ではない、素材の秘めた魅力を自然な流れで引き出した純粋な『美』がそこに在った。

思わず、感嘆の呟きを零しそうになった二人に気づかないまま、ヴィヴィオはここに来た要件を語る。

交渉の許可をくれた三白眼の鬼神は時間に厳しそうなので用件を先に済ませておく様にと三人目のママになるかもしれない人に言われたのだ。

 

「あのですね、今日はお願いがあるのです。実は、私のパパが《神》サマしてるんですけど、眷属さんを探すことになったのです。なので、おじーちゃんとおじさんをスカウトするために参りましたっ」

「……やるべきことを成せなかった老いぼれに何を求める? 幼き天使よ」

「ほえ? おじーちゃんは千年生きた死神さんなんですよね~? だったらこんなとこでウジウジしてないで、世界のため、ダークパパのために強力して欲しいですっ。ママたちから聞きましたよ~? お二人とも、とっても強いんでしょ?」

「儂の力を欲するのならば諦めよ。役目を果たせず、敗北者となった抜け殻に何を望もうと、意味は成さぬよ」

 

未だ、胸の中でジクジクと痛む敗北の傷跡。

過去を引き摺る老人に出来ることは無いのだと、幼い天使の求めを冷たく突っぱね、目を伏せる。

だが……、

 

「?? おじーちゃん、どうしたんですか? なんだかすっごく悲しそうな顔してますよ?」

「……!」

 

鋼の精神で過去の罪という名の責め苦に耐えていた元柳斎の右手に柔らかな温もりが灯る。

視れば、無垢な少女の瞳が元柳斎を気遣うように見上げながら、彼の剣ダコとシワで埋め尽くされた手を握り締めているではないか。

そこに打算や畏怖などの彼の身近にあり続けた感情は一切存在せず。

小さな両手から伝わる温もりは、純粋な思いやりのみ。

剣を振るい、修羅と成りて幾万もの屍を積み重ねてきた己には、あまりにも暖かすぎる。

 

「……手を、放しなさい。このような醜い腕に、お嬢ちゃんは触れてはならぬ」

「え~? 醜いって……汚い、ですか? え、どこが? 私には、たくさんの弱い人たちを護り抜いた、優しい手にしか見えませんよ~」

「……ッ!」

 

救われた気がした。

己が歩んできた道は間違っていなかったのだと。

剣を初めて振るった原初の時からずっと抱いてきた『力無き人々と魂を護りたい』という想い……それが肯定されたと思えたから。

ぽろり、ぽろり……と。

死神の頬を透明な雫が流れていく。

 

少女の背より生えた虹の翼。

そこに幼き日の教え子たちの姿が幻想の様に映し出されては、何かを告げていく。

言葉は聞こえない。だが、何を伝えたいかはなんとなくわかる……。

 

――そう、か。護廷の未来を、儂の想いをお主たちは受け継いでくれるのじゃな……。

 

雛鳥と思っていた小童どもは、いつの間にか雄々しく天空へと羽ばたく荒鷲へと成長していたのだ。

未来を託す……。そんな当たり前のことが出来たことが、何故か無性に――嬉しい。

 

「娘よ……感謝する。お主の温もりが、儂の心を救ってくれたような気がするのう」

「んぅ? えっとぉ……どうしたしまして?」

 

何が何だかわからないと首を傾げるヴィヴィオの頭に手を添えて優しく撫でる元柳斎。

傍目には孫を可愛がる好々爺然とした柔らかな空気を纏い始めた元柳斎の変化をしばし無言で眺めていた比古は、過去の亡霊に憑りつかれていた老人を容易く救済して見せたヴィヴィオに興味を抱き――しかし、素直に求めに応じるのは癪なので、

 

「くっ……ははははは! 大した者だな小娘! だが、心の思うままに生きる様は見ていて気持ちが良くもある。過去を悔いてばかりだったバカ弟子に見習わせたいくらいだ。――面白い、陸の黒船と呼ばれた御剣の殺人剣術、もう一華咲かせるのも一興か。……それで御老人、アンタはどうする?」

「……ふん。惰性を貪るのも飽いた。護廷の守り人として生きたこの儂を顎で使おうとする小童の性根を叩き直すくらいはしてやろうかのぅ」

「アンタも大概素直じゃないな……。娘、俺も手を貸してやってもいいぞ。ただし、美味い酒を用意しろよ」

「了解なのです~♪」

 

盃に残っていた酒を煽り、膝を叩いて立ち上がる比古。

元柳斎もまた、己が半身たる斬魄刀を手に、新たな未来へ向けて歩みを進めようとしていた。

そんな時、新たな来訪者が姿を現した。

 

「おや、ようやくまともな仕事をする気になりましたか」

「鬼灯」

 

額に角を生やし、黒い着物に身を包んだ目つきの悪い鬼神……閻魔補佐官の鬼灯が、いつも通りの無表情で現れるなり毒を吐いた。

口の悪さで定評のある彼だが、その得意技は死神であろうと普通に発揮されるらしい。

 

「ふん、余計なお世話じゃ。閻魔にはよろしく伝えておいてくれい」

「やれやれ、肥満体のオッサンに拾われた無駄飯ぐらいの居候の分際で偉そうに。そう言う台詞は書類仕事の一つでも手伝ってからぬかしなさい。――まあ、新米《神》の手駒に再就職された老人への手向けとして、承りましょう」

「……オヌシには傷心で落ち込んだ老人に対する慈悲が無いのか」

「おや? 老害と断言してやらないだけ優しいと思うのですが?」

「……もういいわい」

 

実際、過去を悔やんで不機嫌オーラを垂れ流すだけだった己に偉そうなことをいう資格は無い。

……そう思わなければ、流石の元総隊長と言えども涙腺の耐久値が危険域。

この歳で閻魔のように情けない泣き顔を晒すわけにはいかぬ。

 

死神が鬼神に口撃されるという実にめずらしい一幕が繰り広げられる中、ふと「あ、忘れるとこでしたっ」という顔になったヴィヴィオが、慌てて懐から紙片を取り出し、そこに記された母の言葉を読み始めた。

 

「えっと、シュテルママからの伝言なのです。『貴方たちに求めるのは抑止力。私たちが誤った方向に未知を踏み出そうとした際に、刃を以てソレを止める事が出来る『剣』です。私も含め、旦那様である《新世黄金神》の家族は基本的に彼と想いを共にします。思考の誘導とかではなく、自然と同じような思考回路になってしまったわけなのですが、それ故に抑止役が出来るのは一人しかいないのが現状です。それ故に、貴方たちには、手駒ではなく監視者のような役割を希望します。――まあ、状況によっては手勢として遣わせていただきますがね。では、そういうことで。……P.S.こちらに来るときは、娘の誘導に大人しく従ってください。怪我でもさせたら“コロコロ”しちゃうのでそのつもりで』――だって♪」

「物騒な上に容赦ないな、お前の母親」

「それがシュテルママクォリティなのです!」

 

ヴィヴィオ、渾身のドヤ顔である。

さいきょ~ドラゴン一家の辞書には、家庭崩壊という諺が存在しないようだ。

 

顔を見合わせ、苦笑を浮かべた死神と侍は、初めてのお使いを成功してルンルン気分な虹色天使に導かれるように地獄を旅立った。

その後ろ姿を、キセルを吹かす鬼神が静かに見送っていた。

 




・今回参戦した眷属さん方のプロフィール

●ゴジラ
二つ名:怪獣王
アルカナフォース:No.”8”《(ストレングス)
解説:
平成VSシリーズでメルトダウンを起こした個体。核をエネルギーとする超生物。
怪獣族共通の冥府世界で暴れ続けていたところをダークさんにスカウトされた。
ルビー制作《鬼械竜戦士》の心臓がGMKゴジラのだったのは、彼を参入させるフラグ。
平行世界の同一存在の気配を知っていたからこそ、広大な冥府の中で彼を探し出すことが出来たというワケ。
ダークさんと契約を交わしたことで基本性能が飛躍的に強化されており、ゆくゆくはバーニングモードの制御も可能になる。
そのための補助装置として、最近復活した龍球的光の超人列伝でおなじみの装鉄鋼の開発をルビーが進めているとかいないとか。超闘士に変身する日も近いかな?


●山本 元柳斎 重國
二つ名:元護廷十三隊一番隊隊長兼総隊長
アルカナフォース:No.”13”《死神(デス)
解説:
尸魂界という世界で死神による武装集団『護廷十三隊』を設立し、総隊長として千年もの年月を戦い抜いた最強の死神。
全力戦闘の卍解時には太陽の熱量に匹敵する炎を産み出すことが出来る。
宿敵に手の内を晒してしまったために不覚を取り、消滅したところを旧知の友である閻魔に救われ、客将として地獄の最下層に身を寄せていた。
過去を悔やみ、転生することも出来ないまま日々を過ごしていたが、ヴィヴィオの誘いを受けて再び剣を握ることに。
《新世黄金神》一味に参入後は、ご意見番のような役割を担ってもらう予定。
ちなみに隻腕は完治済み。


●比古 清十郎
二つ名:飛天御剣流 十三代目継承者
アルカナフォース:No.”7”《戦車(チャリオット)
解説:
恵まれた長身とすさまじい筋力を持つ最強の侍で、重さ十貫に相当する肩当と筋肉を逆さに反る能力制御専用の白外套(継承者の証でもある)を羽織ったままでも無双の如き戦闘力を有する超人。
かなりの酒豪で、常に酒で満たされた徳利を持ち歩いているとかいないとか。
冥府の獄卒の指南役として地獄に招かれ、本人も「小奇麗な極楽なんて性に合わない」と言う理由から地獄に滞留していた。
元柳斎とはそこで知り合い、手のかかる弟子を持つ者同士という事もあって、良好な関係を築いていた。
面倒事は嫌いだが、ヴィヴィオの言葉に惹かれるものがあったのか、彼女の誘いに乗って眷属入りを果たす。

……ちなみに、師匠やご老公にもいろいろと活躍してもらう予定(某魔法先生な世界にある気の習得とか、幼女と化け物が蔓延るブラック世界で新しい弟子を見つけて貰ったりとか)。

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