魔法少女リリカルなのは 『神造遊戯』   作:カゲロー

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前中後編で予定していた出張編ですが、ロストロギア関連のシーンも含めると、もう1話くらい増えそうな予感。
とりあえず、今回と次回は温泉回。
いちゃラブ的なイベントは次回に持ち越し……かな?


銭湯開始

食事が終わり、大量の洗物を片付けた所で、はやてが手を叩きながら一同の視線を集める。

 

「ほんなら、機動六課一同&現地協力者のお二方。これより我々は銭湯準備を済ませた後、“スーパー銭湯”へと出撃するで!」

「はやてちゃん。そこ、今年の初めに増改築されて“ハイパー”に進化しちゃってるよ?」

「え、そうなん? ――じゃあ、改めてっ! これより我々は銭湯準備を済ませた後、“ハイパー銭湯”へと出撃するで!」

「あ、言い直した」

 

ノリノリな部隊長の様子に首をかしげるフォワードたちに、なのはから詳細の説明が入る。

市内に存在する大公衆浴場、その名も“ハイパー銭湯”。

数か月前に施設を増築して名前も“スーパー”からワンランクアップ。

古き良き時代を彷彿させるオーソドックスな浴槽から星空を仰ぎ見れる露天風呂、ジャグジーや水風呂と言った多様な種類が自慢の巨大施設なのだという。

水着類は一切着用できないというルールに一部の乙女から不安げな声が上がったものの、男女できっちりと区分けされているだけでなく、月村家お手製の覗き防犯用システムまで配備されているということを聞かされて、納得した。

 

着替え類を取りに女性陣が部屋に引っ込んだタイミングを見計らい、鼻の下を盛大に伸ばしまくっているカエデがこんな事を言い出した。

 

「……ところでご存知ですかな、切やん? これから向かうところには、混浴なる素敵空間があるそうですよ?」

「なん……だと……!?」

 

ミッドにおいては銭湯や温泉という概念そのものがほとんどない。

故に、元日本人である切名は、なぜ魔法世界に風呂屋が無いのか!? と涙で枕を濡らした事もある。

時も流れ、いまや諦めかけていた理想郷……。

しかも、女の子とのうっかりどっきりハプニングイベントを体験できると噂される、伝説のアレが存在するというのか!?

 

「こいつは……行くっきゃねぇなあ!」

 

吹き荒れるは魔力の奔流。

 

「それでこそだぜ親友!」

 

湧き立つは真紅の血潮。

 

「……友よ! いざ行かん、我らが理想郷(アガルダ)へ!」

 

今ここに、悲しいまでに男の性に敗北したバカコンビが誕生した。

――しかし悲しいかな、コテージにはそこまでの防音対策は備わっておらず、バカみたいに大声を上げてしまうと隣の部屋は愚かコテージ中に木霊してしまうという事実を彼らは知らなかった。

 

『……』

 

部屋の外で集束砲をチャージしている魔法少女(笑)によってピンクの光と成るまで、後十秒……。

 

 

 

 

数十分後。

ピンクの光に包まれたり、雷に撃たれたり、炎で焼き斬られたり、オレンジの弾丸でスナイプされたりしたバカ二人(簀巻き装備)を引きずって到着した“ハイパー銭湯”。

ミッドではまず見かけない独創的な引き戸を開いた先にある受付へと向かう。

 

「いらっしゃいませ~! 皆様は団体様でよろしいでしょうか?」

「はい。ええっとぉ……大人十人、子ども四人、ボロクズになったアホ二人です」

「わかりました。大人十人、子ども四人、ボロクズになったアホ二人でよろしいですね?」

さすがは接客業を務める強者。

微笑を浮かべながら復唱してみせる彼女も唯者ではない。

と、そこへ、

 

「――いいえ、大人もう一人追加よ」

 

受付の女性に応対していたなのはの後頭部を、ぐわしっ! と鷲掴みにする腕。

「ぴいっ!?」 と悲鳴を上げるなのはの頭を万力の如き力で締め上げる腕の持ち主……高町 花梨が、額にバッテンマークを大量生産させつつ、実にイイ笑顔を浮かべて現れた。

髪がボサボサになっているところを見ると、相当激しい攻防(ついきゅう)が繰り広げられていたのだろう。

怒りに震えるその背中に、修羅の幻影が浮かんで見える。

 

「ほーら、なのはぁ? ちょぉ――おっと、お姉ちゃんとオハナシしようじゃないのぉ……!」

「あ、あはは~~、い、嫌だな~おねえちゃんってば。折角のお風呂なのにプリプリしちゃ駄目でしょ? ね? 争いは何も生み出さないんだよ?」

「うふふ……安心しなさい、なぁのぉはぁ……! 高町家伝統の肉体言語(オハナシ)をするだけじゃないのぉ……! それにね? 争いは科学を進歩させる手段でもあるの。だから人は時に争う事も必要だったりする訳よ。そう――今この瞬間の様にねぇええええっ!」

「そ、そそそんな事は無いと思ったりしちゃったりするんですがいだだだだだっ!? ず、頭蓋がっ! 頭蓋が割れちゃう! 割れちゃうからぁああああっ!?」

「知っているかしら、なのは? ……人の頭蓋は花瓶よりも脆いらしいわよ♪」

「この状況でそんな事言う必要がどこにあったのかなあっ!?」

「すぐにわかるわよ――……アンタの身体でタップリとねぇええええっ!!」

 

ゴキュメギョミシミシッ……! グチョッ!!

 

「に゛ゃぁああああああああああっ!?」

 

「では、確認させていただきます。大人十人、子ども四人、ボロクズになったアホ二人、頭蓋を砕かれた妹一人でよろしいですね?」

『こ、この女……ブレやがらねぇッ!?』

 

“ハイパー”の名は伊達ではないようだ。従業員の面の皮が厚すぎる。

「こ、これが隊長たちの故郷に生きる人々……ッ!?」 とフォワード陣が戦慄を隠せない後ろで、トマトが潰れたような生々しい音が響き渡った。

ああ……季節外れのひぐらしが鳴いている……。

 

 

――◇◆◇――

 

 

代金の支払いとなのはの蘇生(リカバリー)を済ませた一行は、『男湯』、『女湯』と達筆な筆文字で記された暖簾が下がる入り口の前までやってきた。

 

「広いお風呂かぁ~、楽しみよねリヒトっ!」

「うん。そうだね、ルーちゃん! 宗助君もっ!」

「へうぁ!? あ、ああ、ソウダネ」

「……エロガキ。言っとくけど、私たちは女湯に入るるからね。アンタと一緒に入るつもりなんてないから」

「だっ、誰もンな事思ってねぇよ! 言いがかりすんな、この虫っ娘!」

「誰が虫っ娘よ! それならアンタは犬っコロじゃない!」

「何だと!?」

「何よ!?」

「ふわわわっ!? け、喧嘩しないでぇ~!?」

 

おでこを擦り合わせながら悪口を言い合う宗助とルーテシアに、慌ててリヒトが仲裁として飛び込んでいく。

この二人、下手をすれば『大怪獣バトル 神狼VS巨大昆虫軍団!』 をリアルで実現できるので色々と洒落にならない。

まあ、リヒトに仲裁されれば数分で鎮圧されてしまうのだが。

 

「エリオ、エリオ。久しぶりに一緒に入らない? ホラ、十一歳以下のお子様は女湯に入れるって書いてあるし」

「うぇええええっ!? で、でででも、僕はその……男の子ですし」

「う~ん、でも折角なんだから……」

 

真っ赤な顔のエリオの反論もなんのその、久しぶりのスキンシップを求めてフェイトも引き下がらない。

復活したなのはや花梨も微笑ましそうに見守るだけで、援軍は期待できそうにない。

大体、花梨などはミッドの自宅で宗助と一緒に入浴したりしているのだから、「そ~すけ~。アンタも一緒に入らない~?」 ってな感じで、魅惑の誘いを敢行していたりする。

最も、ちみっこ~ズの女の子二人に大反対されているが。

どうも、ほとんど赤の他人なエリオならまだしも、クラスメートかつ友達な宗助と一緒にお風呂に入るのは、流石に恥ずかしいらしい。

 

「い、いいいや、やっぱり駄目ですって! ホラ! すずかさんやアリサさんたちもいらっしゃることですしっ!?」

 

慌てふためくエリオがせわしなく視線を彷徨わせながら逃げ道を探すものの、

 

「別に構わないわよ? 子ども相手に恥ずかしがるような事でもないしね~」

「私も別にいいよ?」

 

浅はかな言い訳は、速攻で撃沈されてしまう。

もっとも、アリサにすずかは異性(というか子ども)に肌を見られて恥ずかしいとか言う以前に、あわあわするエリオをもっとからかってやりたいと言う意図が見え隠れしているが。

 

「……私としては、二人から漂うみょーなフェロモンちっくなフレグランスの方が気になるんやけど。ちゅーか、アリサちゃん。首元から赤いマーク的な物が見え隠れしとるんですが?」

「馬鹿にしか(・・)見えないモノよ」

「あれぇ!? ごくごく自然に罵倒されたっ!?」

 

さらりと毒を吐かれたはやてのフォローを買って出る勇気ある者はいないようだ。

ま、助力する = 馬鹿 の法則が成立してしまうのだから致し方ない。

 

「なーなー、ティア。ここに混浴ってステキ空間があるらしいんだ」

「……で? 何する気よ?」

 

ティアナの“にらみつける”! 

こうかはばつぐんだ!

せつなはおどろき、すくみあがっている!

 

「い、いやー、久しぶりに童心に帰ったりしちゃうのも良いんじゃないかなー……なんて」

「ははーん? 読めたぜ、切やん! お前、さてはローションとボディーソープを持ち込んで、ティアっちんと『ソープぷれい』をお楽しみしやがるつもりだな!? 『お客さん、痒いところはありませんか~?』 をやらかすつもりなんだな!? こ、このエロスめ!」

「はあっ!? 思ってもいねぇよそんなことはよぉ! 俺はただ、同じ風呂の中でイチャイチャしたいだけ――ハッ!?」

 

思わず本音が駄々漏れてしまった切名君、痛恨のミスである。

恐る恐る振り返れば、真っ赤なお顔の乙女(ティアナ)が振り上げた右腕が――

 

「こんのっ……エロスバカ――!」

「ぐもらばぁああああっ!?」

 

『パー』ではなく『グー』。

『ビンタ』ではなく、偉く腰の入った『ジョルト』であった。

錐もみ回転しながらぶっ飛んだ切名君の最高到達地点、実に4.5m。

人間タケコプターとなって空を飛んだ切名が最後に見たものは、それは見事な敬礼をする元凶(カエデ)の姿であった。

 

――あの野郎、後で絶対ブッ飛ばす

 

そう心に誓いながら、地面に突き刺さる激痛によって、意識を手放すのだった。

 

 

――◇◆◇――

 

 

「よーっし! いっちばーん!」

「あ、コラ、スバル!?」

 

入浴前のかけ湯のルールを知らないスバルは、一番奥にどどーんと構える大きな浴槽目掛けて猛ダッシュ。

突き抜けたテンションそのままに、天高々と跳躍すると浴槽目掛けて飛び込んだ――瞬間、

 

――ポコポコッ……。

 

と、スバルの着水地点あたりから気泡が立っている事に花梨が気づく。

 

「スバルちゃん! お湯の中に誰かいるわよっ!?」

「えっ!?」

 

慌てて叫ぶもすでに遅し。

水面に浮かび上がってきた金色の髪が目を引く少女が、自分目掛けて落ちてくるスバルに気づき、

 

「しょーりゅーけーん♪」

「げぷうあっ!?」

 

実に見事なアッパーカットを決めてくださいました。

「えええええっ!?」 と方々から絶叫が上がる中、小さな拳が鳩尾に突き刺さったスバルは、体内の空気をすべて吐き出しながら盛大に吹っ飛ぶ。

きりもみ回転しながら吹っ飛んでいったスバルは、二つ向こう側の水風呂へドボン……と。

 

「げぶぁあっ!? いっ、いだっ!? つめだべげぼっ!? は、鼻! 鼻に水が入ったぶっ!? て、ティア~~!?」

「ああもう、何やってんのよこの馬鹿!」

 

半泣きで悲鳴を上げるスバルの救助にティアナが駆け出すのを横目に、花梨たちの視線は陸戦魔導師を片手で吹っ飛ばした少女へと注がれていた。

腰まで届く金の髪と紅玉と翡翠を思わせるオッドアイを持つ少女。そこまでならば、さしたる問題では無かっただろう。

将来有望な美少女であるという点で言えば十分な問題と言えるのかもしれないが、今は脇に置いておく。

重要なのは、魔導の才を有する者たちだからこそ少女から感じ取れる強大な魔力。

さらに、何故かお湯の水面に仁王立ちしている少女の全身を包み込む虹色の魔力光。

その地球には不釣り合いすぎる要素が、少女を一般人ではないことをあからさまに主張してしまっていた。

 

――しかも、お湯の水面で仁王立ちを決めてくださっておられます。

 

腕を組み、可愛らしい顔に不敵な笑みを浮かべながら、呆然とする一同へ向けビシイッ! と指を突き付ける。

 

「魔力で全身を覆い、液体の表面張力と同調する事によってお湯の上に立つ。これこそ、繊細な魔力コントロールの修行なのです!」

「絶対違うと思うよ!?」

「どこのNINJAを目指してるワケ!?」

「将来的には『へっ……きたねぇ花火だ!』 を習得することを目指してますっ!」

「満面の笑みを浮かべながらものすごく物騒な事言っちゃってるよ!?」

「しかも色々と混じっていないか!? 目指しているのがNINJAなのか戦闘民族なのか分からんぞ!?」

「わ、サムライっぽいお姉さんってば博識です! 物知りなんですね!」

「そ、そうか……?」

「そこぉ! 照れてんじゃねぇよ、シグナム!?」

「ハッ!? わ、私としたことがっ!?」

 

最早意味が分からない騒動をひき起こしてくださった少女は再び湯船の中に浸かると、保護者らしき人影へと近づいていく。

 

「アリシアママ~~。魔力(チャクラ)コントロールの修行が終わりましたっ」

「うんうん、流石は私たちの娘っ! よーし、この調子なら『悪いな、これでも手加減したつもりだったんだが』を出来る日も近いんだよ!」

「何やらせてるんですか貴方は……。て云うか、今の誰ですか?」

「んう? 悪落ちした龍玉のトップさん~~♪」

「ああ、(スーパー)なドラゴンさんの事でしたか。そういうことなら良しとしましょう」

「いや、認めちゃ駄目でしょうが! ――って、ああっ!? アンタたちはっ!?」

 

食欲をそそられる温泉卵が入った木製の器と匙を手に、のんびり湯ぶねに浸かっていたのはアリシアとシュテルだった。

どちらも髪を結い上げているらしく、ほんのり桜色に染まったうなじが醸し出すえも言えぬ色気が、普段の彼女たちとはまた違った印象を感じさせていたので気づかなかったようだ。

傍に寄ってきた少女……ヴィヴィオを後ろから抱き締めつつ、ほにゃっとした笑みを浮かべたアリシアが、敵意ゼロでフェイトに手を振っている。

つられて手を振り返してしまったフェイトが何やら葛藤しているのは置いといて、とりあえず花梨は聞き捨てならない台詞を吐いた少女へ、出来るだけ威圧しないように問いかける。

 

「ね、ねぇ、お嬢さん? アナタ、さっきその二人の事を“ママ”って言わなかったかしら……?」

「んぅ? ……アリシアママとシュテルママはヴィヴィオの“ママ”だよ~?」

「え゛っ!?」

 

驚きの声は彼女たちを良く知る海鳴市関係者によるものだった。

特に、いつの間にか姉が子どもをこさえていたことにショックを隠せないフェイトの動揺っぷりがハンパではない。

……ちょっぴり、女として負けた気になってしまうのも仕方のない事だろう。

出会いが無い&釣り合うような相手が居ないのだから仕方がない。

全ては、彼女たちのスペックがハンパないのがいけないのだ。

 

「お、お姉ちゃん……いつの間に……!?」

「んとね~、数週間前にこう……ひょいっと」

「ひょいっと!?」

「うん、そう。ひょいっと拾ったの」

「……はい?」

「アリシア、それでは分からないですって。――コホン。まあ一言で言うなら、ヴィヴィオは養女です。路地裏で衰弱して倒れていた所を我々が保護いたしまして、身寄りが無いとのことでしたのでそのまま娘として受け入れたのですよ」

 

ヴィヴィオが人造魔導師云々の情報は隠蔽しつつ、話しても問題は無い真実だけを要点に纏めて説明する。

下手に情報を与えてしまえば、いろいろと面倒な展開になってしまう事を、シュテルは予測しているからだ。

もっともそれは管理局の暗部云々の話ではなく、単に彼女らがどうしようもないお人よし&おせっかい気質を持つ者の集まりで、例え敵であろうとも手を差し伸べたくなってしまう性格を懸念したと言った方が正しい。

彼女の中では、必要以上に慣れ合いをするつもりはないという一種の境界線を定めているのかもしれない。

キャロに続いて今回の事件における最重要キーマンたるヴィヴィオまでもが敵性勢力に加入してしまった事実に頭を抱える花梨に、更なる追撃が襲い掛かる。

 

「ふん、喧しい連中だな。もうすこし落ち着いて風呂を楽しもうと言う気概は無いのか、たわけ」

「まあまあ、皆でワイワイするのもアリだと思いますよ?」

「気持ちいいね~、フリード~♪」

『ガツガツモフモフ……』 ← どんぶり鉢山盛りな温泉卵と格闘中。

 

泡が湧き立つジャグジー風呂を堪能中なユーリ、ディアーチェ、キャロ&フリードまで参戦。

混沌(カオス)はさらに混迷を極める。

 

「――って、アンタらまでおるんかいっ!?」

「ぬがっ!? 大声を上げるな馬鹿者! 声が反響して耳に響くであろうがっ!」

「マナーは守らないと駄目ですよ~?」

「あ、すいません……じゃなくて! なんでアンタらまでリラックスしとんねん!? ここで、とっ捕まえたろーか!?」

 

意外なほどに程に正論を吐く紫天一派に、ストレスがマッハなはやては部隊長としての冷静さなどかなぐり捨てて激昂する。

今にも、更衣室のロッカーの中に仕舞っているデバイスを取りに駆け出しそうな剣幕だ。

 

「……出来ると思っているんですか? 今の貴方たちごとき(・・・)に」

 

暗い声をだすユーリの影が、ゆらりと揺れる。

軟らかな瞳に危険な色が浮かんだ瞬間、お湯を吹き飛ばしながら展開された鮮血の血潮を彷彿させる魂翼が巨大な鉤爪へと転じてはやてたちを覆い隠す。

十年前に比べて、格段に大きく、より禍々しく進化を遂げている魔物の鋭爪は、絶対的な死の恐怖を彼女たちに降り注ぐ。

 

「デバイスが無ければ魔導師の実力は半減します。でも、私は違う。もとより、この身ひとつで世界を滅ぼす最強の兵器。故に――あなた方を此処で消滅させることも容易いんですよ?」

 

聖母を思わせる微笑みを浮かべ、死神の鎌すら凌駕する殺意に満ちた狂気の刃を振りかざす。

あの“Ⅱ”(ルビー)ですら戦慄を隠せないほどに凶悪な成長を遂げた“紫天の盟主(ユーリ)”は、まさしく次元世界最強の生ける災厄。

彼女を止められる存在がいるとすれば、壁の向こうで風呂を堪能しているであろう最強の竜神か。

もしくは……

 

「ユーリ、その辺にしておきなさい」

 

彼と共に在る、かつて同胞であった少女だけであろう。

 

「シュテル……貴方に私が止められると思っているんですか? それは傲慢と言うものですよ?」

「ほう、随分と自意識過剰になったものですね。何様のつもりですか?」

 

一触即発。

湯船に浸かったままであっても、寒気を感じずにはいられないほどの威圧感(プレッシャー)を放ち合う両者から距離を取っていく身内たち。

両者共に笑顔を浮かべているものの、それが返って恐怖を増長させていることに、はたして本人たちは気付いているのだろうか?

 

「ちっ。アンタたちいい加減に――」

 

流石にこれ以上は見過ごせないと、花梨が鎮圧に動こうとした瞬間、

 

「シュテルママ……」

「ユーリさぁん……」

 

怯える様な少女たちの声が、浴場に響き渡った。

見れば、殺気に当てられたらしく、ヴィヴィオとキャロが目尻に涙を浮かべながら睨み合っている二人を見つめていた。

 

「あ、ご、ごめんなさい、ヴィヴィオ! 決してあなたを怯えさせるつもりなどっ!?」

「キャロちゃんっ!? す、すすスミマセンッ! あ、あの、どうか泣き止んでください~~!」

 

一瞬で殺気を霧散させた過保護なお姉さんたちが、慌てて泣く娘をあやしにかかる。

場の急展開についていけず、完全に置いてきぼりにされてしまった六課の面々が不憫でならない。

ついでに、《マテリアルシフト》を発動させようとした体勢のまま、所なさ気に手が宙を泳いでいる花梨さんの羞恥心とかいろいろとヤバい。

 

「あー……とりあえず、一時休戦ってしない? 地球で最終戦争的なバトルを引き起こすつもりは無いし、私たちもディアちゃんたちものんびり気分転換するために里帰りしてきたみたいなもんだからさ」

「ちゅーことは、や。アンタらは街の中にあるロストロギアとは無関係っちゅう事でええんやな? どうせなのは隊長たちの探索にも気づいとったんやろ?」

「フン、当然だ。我々の情報網を甘く見るなよ子烏? 貴様らが休暇を兼ねて不正に持ち込まれたロストロギアの探索を行っていることなど、すでに把握済みよ! だがアリシアの言葉通り、我らは現在休暇中。色々とゴタゴタしているルビーめらから、偶には親子水入らずで旅行でもしてくればと勧められたのだ。だからこうして、家族であるユーリも共に『ぶらり海鳴市、温泉宿浪漫譚』を実行中な訳だ。ここに来たのも、多様な温泉が売りだと耳にしたからでな!」

「私たちも似たようなもんなんだよ~。ヴィヴィオと家族になった記念に、管理外だから過ごしやすい海鳴市(ここ)でゆっくりしようって事になったんだよ。久しぶりにモモコさんのシュークリームも食べたかったしね!」

 

律儀に答えてくれた二人の説明に合点が言ったらしく、はやては納得顔。

一方で花梨は、少し不満そうな表情。

 

「お姉ちゃんってば、むすっとしてどうしたの?」

「そりゃ、お母さんのシュークリームに比べればまだまだ及ばないかもしれないけどさ。でも、最初っから見向きもしないってのはどうなの? 私だって日々腕を磨いているってのに……」

 

どうやら、パティシエとしてのプライドが傷つけられてしまったようだ。

師匠である母・桃子に比べればまだまだ未熟である事は自覚しているものの、それでも最初から相手にされないというのは、職人として納得が出来ないらしい。目尻が吊り上ってしまうのを抑えられない。

 

「――ま、本音を言えば、ダークちゃんと会わせたくなかったってのもあるんだけどね。なんとなーく嫌な感じもするし」

 

ボソリと呟くように告げられたアリシアの台詞は、誰にも届くことは無く風呂場に響く喧噪の中に消えて行くのだった。

 

 

「――ん? ちょい待てよ……。この子たちがここに居るってことは……まさか向こうにも?」

 

 

――◇◆◇――

 

 

風情ある檜の香りが漂う男性用更衣室で衣服を脱ぎながら、切名は現在進行形で鈍い痛みを放つ頬を擦る。

近接魔導師であるスバルもびっくりな身体強化によって繰り出された一撃は、骨の髄まで届く素晴らしい破壊力を叩き出していた。

 

「あいちちち……くっそーティアのヤロー、まーた威力が上がっていやがる。どこら辺が射撃型魔導師なんだ?」

「周りの目がある中じゃあ、流石に高望みし過ぎだったかねぇ? ……くそぉ! 旅行(しゅっちょう)の醍醐味って言やあ、NOZOKIだって相場が決まってんのにいっ!」

「喧しいわド阿呆! うっかり載せられた俺もたいがい間抜けだけど、そもそもの元凶が何をぬかしてやがるか。つーか、オメーはなんでピンピンしてんだよ。俺よりも念入りにボコられてたくせに」

「曇りなき正義の心が、超常的なパゥワァ~を授けてくれたのさ!」

「キメェ!?」

 

服を脱いで腰タオルを装備した切名とカエデが漫才しながら浴場の中へと入っていく。

 

「やれやれ、やかましい連中だ――む? どうしたモンディアルに高町? 目が皿の様になっているぞ?」

「あ、あの……どちら様ですかっ!?」

「すっげーマッチョメンだ!?」

「エリオ君、宗助君。彼、ザフィーラだよ? あれ? その反応……ひょっとして人間形態の彼を見るの始めて?」

「む、そう言えばそうだったもしれんな」

 

肉体美を惜しげも無くさらすザフィーラの筋肉に気押さえて、思わず自分の貧相なそれと見比べてしまい、少年の口からため息が零れる。

やはり男として生まれた以上、鋼のような筋肉は憧れるようだ。

 

「まあ、せっかくのお風呂なんだ。騒いだりしないで、ゆっくりと楽しもうよ。ね? それに僕たちの他にもお客さんが入るみたいだしさ」

 

事実、鍵付きのロッカーが二つほど使用中になっている。

公衆浴場なのだから当然の事ではあるが、他の利用客の方々にご迷惑を掛けるような騒ぎを起こすのはマナー違反だ。。

頭の上と腰にタオルを装備し、備え付けの桶を脇に抱えたコウタにそう窘められれば、切名とカエデも鎮まざるを得ない。

不承不承と言った風の後輩たちに苦笑しつつ、浴場へと通じる扉を先導して開く。

 

「わあ……! ここが『セントウ』なんですか――ぇ?」

「んあ? エリオさん、どしたん――だ?」

 

我先へと中に入ったエリオと宗助が一瞬で固まってしまった。

何事か? と覗くように身を乗り出したコウタたちもまた、その人物を目にした瞬間、驚愕のあまり大口を開けて硬直してしまった。

 

 

そこには、青い髪が美しい天上の存在がいた。

澄んだ湖水を彷彿させる、艶やかな長髪はしっとりと潤いを纏ってほっそりとした身体に張り付いている。

ちょうど髪を洗っていたらしく、シャワーで泡を流す様が、まるで春の木洩れ日によって溶け出してせせらぎへと変わりゆく淡雪のよう。

コウタたちに背中を向けている体勢ゆえに容姿を確認する事こそ叶わなかったものの、水を弾くなめらかな背中、生まれたままの身体の大切な所を隠していた泡が流れ落ちていく様は、言葉では言い表すことが出来ない興奮と背徳感を味あわせてくれる。

人生経験故か、一番早く再起動に成功したザフィーラが慌てて更衣室から飛び出して、ここが男湯である事を確認する。

 

――腰タオル一丁の姿でロビーに飛び出したものだから、女性利用客の皆様方による黄色い悲鳴の合唱が発生していたが、その辺は割愛。

 

次に再起動を果たしたのはコウタと切名。

両名とも、事態を理解した瞬間、神速を思わせる反射速度で後方三回転ジャンピングDOGEZA! を敢行。

この場に恋人がいないと言うのに、彼らの中では『異性の肌を見てしまった → DOGEZA!』 という理論が構築済みのようだ。

 

「いっひょー! なにコレ!? もしかしてご褒美ですか!? 卒業しちゃっても構わないっていう神サマの思し召しなのでしょうかそうなんですねわかりましたいただきます!!」

 

ストッパーが平伏している隙をついて、目をハートマークにしたカエデが突貫する。

鼻息は沸騰したヤカンの如き勢い荒く駆け出すと、水に濡れている滑りやすいタイルの上であるにも拘らず、見事な跳躍を見せる。

中空で捻り一回転半を決めながら、濡れたうなじが艶やかな美少女(希望)目掛けて、ルパンダイブを敢行する。

 

だが。

 

「風呂で騒ぐな」

「もぎゅれぶぁああああっ!?」

「か、カエデさ~~ん!?」

 

あと十㎝と言うところで横合いから放たれた容赦のない蹴りがカエデの横腹へクリーンヒット。

魚拓ならぬ人拓的な、壁と一体化した奇怪なオブジェへと成り下がってしまった。

壁に埋まったままビクンビクン、と結構ヤバめに痙攣しているカエデを蹴り飛ばした人物は、不機嫌そうに鼻を鳴らしながら未だ入り口で騒いているコウタたちへと視線を動かした。

 

「……なんだ貴様らか。まったく、いつもの事ながら騒々しい連中だな」

「んな……!? ふ、“Ⅰ”(ファースト)っ!? なんでここにっ!?」

 

聞き覚えのある声に顔を上げたコウタが、戦慄にわななきながら叫ぶ。

指を差され、管理局勢の視線を一身に集めながら、“Ⅰ”ことダークネスは何を言っているんだとばかりにアホの子を見る眼を向けてきた。

 

「風呂に入る以外に風呂屋へ来る理由があるのか? もしあるのなら、ぜひともご教授願いたいところだな」

「むっ!? そ、そういう事を言ってるんじゃなくて――」

「ヴゥアカメエッ! 風呂屋と言えば覗きに決まっとろうが! 湯船で暖められ、ほんのり薄ピンク色に上気した肌! 水面に浮かぶ、豊満かつ浪漫溢れる母性の象徴たるおっぱい! 解放的な空間故に、時に大胆に、時にエロティックな表情を見せてくれるおんにゃのこが住まう理想郷(アガルダ)!! 市恋の芸術作品にすら比類する素晴らしき光景を目にせずして、なにが男かあっ!!」

 

めり込んでいた壁から飛び出して軽やかに着地を決めたカエデが、喉が張り裂けてしまいそうな大声で最低な欲望を叫ぶ。

身体がら放たれる凄まじき覇気は、青い髪の謎の人物がびっくりして振り向いてしまったほどだ。

「ほぉ……最近の管理局員は随分と度胸の据わった奴がいるのだな。女湯にまで確実に聞こえる(・・・・・・・)ほどの欲望だだ漏れな絶叫を上げるとは」

口では感心するそぶりを見せながら、口元は愉悦極まりないとばかりに歪みきっている。

壁越しに感じられる、オドロオドロしい殺気をあえて無視しながら、根強い野望を抱いてしまう某公国の長男を彷彿させる勢いで、いかに覗きが素晴らしいかを少年二人に力説しているカエデの後ろへと忍び寄る。

 

『アリシア、シュテル、ヴィヴィオ。タオルで身体を隠して湯船の中に浸かってろ』

 

身内に念話を飛ばしながらカエデの後頭部をわし掴みにすると、そのままそれなりに鍛え上げられている現役魔導師の彼を片手で持ち上げつつ、腰に巻いていたタオルを奪い去っておく。

その際、股間の紳士が宿す戦闘力を確認することも忘れない。

 

「――ふ、所詮は小物だったか」

 

失笑まじりに囁いた彼の中に湧き上がる、えも言えぬ優越感。

一般的な平均値はクリアしているはずのカエデの紳士を格下と睥睨する彼の戦闘力がいか程のモノなのか、非情に気になるところだ。

 

「まあ、それはさておいて。そこまで吼えるのなら、妄想(イメージ)で我慢していないで実物(リアル)を見聞してくると良い。――と、言う訳で、行ってこい!」

 

力いっぱいブン投げられたカエデの身体が天へと飛翔し、天井近くへと舞いあがる。

ところでご存じだろうか?

公衆浴場の女湯と男湯は壁によって遮られているだけの、元々は一つの大部屋であることを。

壁に面した湯船の底にお湯を循環させる窓口が備え付けられていたり、境の壁は天上近くまでの高さは無いという事を。

つまり、壁を乗り越えることが出来さえすれば、隣の浴場へと移動することも可能なのだ。

まあ、もっとも――

 

『きゃぁああああああああああああああっ!!』

「あぶろもげろぷりくぅぇええええええええええっ!?」

 

色とりどりの魔力弾による防空システムを突破できた場合に限るのだが。

遠距離砲撃を得意とするなのはやはやてはもちろん、近接戦闘での見切りを必須スキルとするフェイトらは、非常に優れた視力をしていると言える。

歴戦の勇士である彼女らは咄嗟の事態に直面した際、対象がどのような驚異を有しているのかを一瞥しただけで解析、判断できるように一瞬で対象の全体を把握できるよう訓練を積んでいる。

この場合、全裸の変態が天から舞い降りようとしていた訳なのだが、ついいつもの癖で対象……カエデの全体像を観察してしまったのだ。

そう、つまり……腰タオルを奪われてしまって、『ぱお~ん!』 と自己主張してしまっている『ゾウさん』を直視してしまったのだろう。

部隊長とか、エースとか、執務官とか、騎士とか関係ない、一糸乱れぬ乙女の悲鳴であった。

ひゅるる~~っ――……ぼちゃんっ!

何ともマヌケな効果音と共に、真っ黒焦げになったカエデ(全裸)がいくつかある浴槽のひとつに着水、煙を上げながらぷかぷか浮かんでいる。

こんがりローストされたお蔭で、見事な焼き色がついている。

ふぅ~、と満足げに額を拭うダークネスに、正気に返ったコウタが突っかかる。

 

「なんてことをするんだ!」

「法の守護者を名乗りながら、堂々と女風呂を覗こうとしていた変質者をお前ら自身の手で処罰できるように取り計らってやっただけだが? 身内の始末は身内で付けるのがスジと言うものだろう?」

「くぅっ……!?」

 

やり方は問題がありすぎるのだが、管理局員であるカエデが覗き云々を力説していた事も、それを処罰したのが管理局員である六課女性陣であることもまた事実。

確かに捉えようによっては、身内の恥を自分たちの手で対処できたと言えなくも無い……か?

 

「ふっざけるんやないわぁあああっ! 乙女の柔肌をなんやと思とんねん!?」

「そうだよ!」

「覗きの幇助で斬り捨ててくれる!」

 

一方の被害者たる女子湯サイドからは、当然の如く大ブーイング。

怒りに震える乙女の怒号が響き渡る。

 

「見せる相手もいないのだから、別に構わんだろうに」

『そんな訳あるかァアアアアアアアア!!』

 

壁越しに降り注ぐ桶の雨。おまけとばかりに誘導弾まで混じっている。

 

「ふ――卑劣極めし生者の防壁(オメガ・シールド)ッ!」

「「ちょっ――!?」」

 

巻き添えを受けてはたまらないとばかりに逃げ出そうとしたコウタと切名の後頭部へアイアンクロー。

そのまま上方へ向けて持ち上げる。

完成した生ける人間による鉄壁の防壁が、怒れる乙女の粛清(りゅうせいぐん)を迎えうつ!

 

「「あだだだだっ!? ちょっ、タンマタンマタンマぁあああああっ!?」」

「ふん、所詮はこの程度か……。独身貴族の底力など、恐れるに足らんと言うことだな」

「なんやとぉおおおおおおおっ!?」

「程度って言葉を知らないみたいだね! すこし頭冷やそうか!」

「やれるものならやってみろ」

「お願いしますから挑発しないでくれません!? ――って、ぎゃあああああっ!? 視界を埋め尽くさんばかりの魔力弾の嵐がぁああああああっ!?」

「はっ、放しやがれ――ぶべべべべっ!? ちょ、やめ、やめてくれティアぁぁああああああっ!?」

「くっくっく……」

 

 

「……モンディアル、高町、よく見ておくのだ。あれが真の極悪人の姿だ」

「は、はい……」

「おっ、おう」

 

真っ黒な愉悦に浸りほくそ笑むドSな顔のダークネスにドン引きしながら、エリオと宗助はその極悪ってぷりに戦慄を感じずにはいられない。

結局、怒りの“りゅうせいぐん”はコウタと切名がこんがりローストされるまで続いたという。

 

「あはは~♪ みんな楽しそうだね~」

「いや、あれを見てどこが――ってえ!? あんた……まさか男お!?」

「あれ、気づいてなかったの? 僕はレヴィだよ。よろしくね~♪」

 

――ぱおーん!

 

「「す、すごく……大きいです……!?」」

「ぬぅ……やるな」

 

それはそれは、ザフィーラさんがライバル意識を持つほどにご立派な紳士であったという。




出来れば混浴までもっていきたかった……。
ちょいエロシーンをご期待の皆様、申し訳ありませぬ。

・作中に登場した魔法解説(笑)
卑劣極めし生者の防壁(オメガ・シールド)
使用者:ダークネス
”Ⅰ”ことダークさんが生み出した非情なる凶悪魔法(爆)。
敵勢力に囲まれた際にもっとも効果を発揮する戦法の一つであり、敵をわざと挑発して攻撃を誘発しつつ、手ごろな人間――基本は敵さんの仲間をとっ捕まえて盾にする。
基本は攻撃の前にかざして肉の壁にするのだが、バットのように振り回して魔力弾を撃ち返すことも可能。
腕部に短距離転移魔法陣を部分展開させることで、いかなる防御や回避をとろうとしてもすり抜け、捕獲する。
同士討ちを誘発させる手法故に、撤退戦などには非常に有効。
空白期に管理局の追跡を裁いていた際に産み出された『敵を殺さないで鎮圧する』手段の一つ。

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