『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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OGMDをプレイして一言……。


そろそろ因子が溜まってきてない?


その5

 

 

 

 

 

私立リディアン音楽院────の、地下。数百メートルにも及ぶ地下深くに特異災害対策機動部ニ課、その本部があった。

 

人類の天敵とも呼べるノイズに対抗する為、様々な技術の粋を集めた日本政府の特殊機関。その特異災害対策機動部にある一室にて一人の女がその目を鋭くさせながら眼前のモニターに映る“ソレ”を睨み付けている。

 

女の名は櫻井了子。アップに纏めたロングヘアーと知的な眼鏡、そして身に纏う白衣が特徴的なこの女性はニ課において重要な役割を担っていた。特異災害ノイズに対抗しうるシンフォギアを開発する所から始まり、古の聖遺物を起動させる櫻井理論を提唱させるなど、自身が誇示する通り天才的な能力を有している彼女は専門的な考古学者であると同時にニ課の主要技術を一手に担っている。

 

自他共に認める天才学者、しかしそんな彼女の頭脳を…………いや、これまで培ってきた(・・・・・・・・・)知識を以てしても目の前のモニターに映る“ソレ” を理解する事は出来なかった。

 

「…………一体、何なのかしらね。コレ」

 

櫻井了子がその目を刃の如く鋭くさせた瞳に映る蒼い巨人。それは二年前に起きた災害の時、突如として現れノイズを一瞬にして撃滅せしめた怪物。

 

ノイズは位相差障壁と呼ばれる機能を駆使し、コチラ側の物理干渉を減衰、或いは無効化させる特異能力を持ち、これによりノイズと出会った人類は殆ど成す術なくノイズに呑み込まれ炭となって消滅していった。

 

シンフォギアを除いて現状ノイズに対抗出来るのは奴等が此方に攻撃を仕掛けてくる一瞬、一秒にも満たない時間の中、高速で飛来してくるノイズに物理干渉を施すしかない。

 

現代の銃弾と同等以上の速さで接近してくるノイズに物理干渉を施す。そんな事が可能なのは過去の英霊と評される者達か人外の領域にまで己を鍛え上げたウチの司令官の様な人種位しか出来ない芸当だ。

 

しかし、そんな人外の力を必要とするやり方をこの怪物は一瞬でやり遂げた。それも無数のノイズの全てに対して…………。

 

恐らくこの巨人は自分が知る先史文明とは異なるルーツから生み出された代物だろう。しかし、問題はそのルーツとなる部分だ。

 

米国程度がアレほどの兵器を単独で開発出来るとは思えない。…………唯一可能性としてあるのは自分が研究するモノとは別の、それこそ錬金術位しか思い付かない。

 

一体何処の誰がアレほどの怪物を造り出したのか、今後の自身の活動の妨げになるやもしれない存在を前に了子は忌ま忌ましいと呟く。

 

「了子さん、いるー?」

 

そんな時、背後の扉から聞き慣れた声が聞こえてくると同時に女はニ課の誰もが知る櫻井了子へと姿を替える。その目には先程までの剣呑な様子は欠片もなかった。

 

「はぁい。皆大好き櫻井了子さんよー。って、あれ? 奏ちゃんじゃない。どうかしたの?」

 

「あぁうん。大した用じゃないんだけど…………邪魔しちゃったかな? アタシのリンカーについて話があるんだけど…………ソレ、もしかして二年前の?」

 

どうやら大事な調査中だったらしい櫻井了子に奏の表情は申し訳なさそうに曇る。モニターに映る蒼い巨人は奏にとっても他人事じゃない案件だ。それを邪魔してしまったという事に奏は自身の間の悪さを恨めしく思い、少なからず後悔する。

 

そんな奏に了子は気にしないでと口にする。どうせこれ以上調べても意味はないから、とは言わないで。

 

「そんな事よりもどうしたの? リンカーに関してはって事はもしかして体に合わなくなったとか? でもデータを見る限り不具合の様子は見受けられてないみたいだけど?」

 

「いや、別にリンカー自体は悪くないんだ。ここの所体調もそんなに悪くないし、調子の良い時だってある。けど、だからこそ今のアタシにはリンカーの改良が必要なんだ」

 

LiNKER(リンカー)” それは聖遺物、またはシンフォギアを纏うに至らない者を人為的にシンフォギア装者に仕立て上げる制御薬の事、確かにこのリンカーを用いれば最低限の適合係数を持たない者でもシンフォギアを纏う事は可能。

 

しかし、無理矢理にシンフォギアに体を合わせる為その負荷は凄まじく、オマケに時間制限も着いており、使用法を間違えれば死に到るという欠陥品。現在は横流しした別組織がこの薬品の改良に勤しんでいると聞くが、それがどの程度なのかは依然として不明のまま。

 

確かにリンカーの起源となったmodel Kを開発したのは了子だ。その後も暇を見ては改良を続けていたし、より効率的に、負荷も可能な限り軽減出来るように努めてきた。しかし…………。

 

「響ちゃん、の事かしら?」

 

「………………」

 

真っ直ぐ見つめながら響の名を口にする了子に奏は押し黙る。

 

「ねぇ、奏ちゃん。翼ちゃんが絶唱を口にしたことで入院したのが自分の所為だと思っているのなら、響ちゃんを戦わせているのが自分の所為だと思っているのなら…………それは違うと思うわよ。翼ちゃんがあの時絶唱を口にしたのも、響ちゃんが戦うって決めたのも自分の意思で決めた事、嘗て貴女がシンフォギア装者になると決めたのと同じように、それはきっと誰かが口を挟める事じゃないと思うの」

 

「そんなの、分かってるよ。けど、どうしても思わずにはいられないんだ。あの時アタシにもっと力があれば、あの時もっとアタシが頑張っていれば、翼が絶唱を歌うことも無かった。二年前、あの日にアタシが上手くやれてればもしかしたら響がシンフォギア装者になることもなかったって…………」

 

「奏ちゃん…………」

 

「傲慢だって分かってる。アタシなんかの力が全ての人間を救えるなんて思っちゃいない。けど、アイツは、響はこっちに来ちゃダメなんだ。アイツや皆が陽だまりの中でアタシ達を待っていてくれているからアタシは戦ってこれたんだ」

 

最初は復讐しかなかった。両親を殺したノイズが憎くて、ノイズの全てを皆殺しにするまで止まらないと今日まで戦ってきた。けれど歌いながら戦うにつれて、自分の歌を聞いて頑張れると言ってくれた人達がいてくれたお陰でいつのまにか復讐から誰かの為にと戦う理由が変わっていった。

 

復讐に駆られた自分の歌が誰かの為に役立ってくれるのなら、こんなに嬉しいことはない。ここへ来て漸く天羽奏は自分以外の他に戦う理由を見付けた気がした。

 

本音を言えば響と一緒に戦える事を喜んでいる自分がいる。あの日砕けたシンフォギアの一部が響の中に眠っていた事、その力が目覚めた事に奏はまるで自分の後継者が現れたのだと思った。

 

憎しみではなく、誰かの為に戦うと決意した響、それがまるで自分の想いを継いでくれた事のように思えて…………嬉しかった。

 

けど、だからこそ今の響には戦わせられない。誰かの為にと豪語した一方で自身の事を蔑ろにしている響を命を掛けた戦場に立たせたくなかった。

 

故に天羽奏は櫻井了子に願い出る。翼が倒れた以上、自分が戦うしかない。と、未だ戦うことの意味を理解しきれていない後輩に少しでも教え導く為に天羽奏は血反吐を吐きながら歌うことを決めた。

 

それを聞いた了子は深い溜め息を溢す。

 

「…………分かったわ。出来る限りリンカーの性能を上げてみる。けれど約束して、響ちゃんを自分の代わりに思わないこと、それは貴方にとって、そして響ちゃんにとってもマイナスでしかないわ」

 

「はい」

 

「そしてもう一つ約束、必ず生きて帰って来なさい。誰かの為じゃなくて自分の為に…………折角女として産まれてきたんだもの、一度位恋しないと損ってものだからね」

 

「は、はい」

 

「声が小さいわよ?」

 

「ひゃい!」

 

唐突に恋の話を振られて狼狽する奏、そんな彼女を面白おかしく弄りながら部屋を追い出した了子は再びモニターへと目を向ける。そこに写し出されているのは先程までの蒼い巨人ではなく、天羽奏の身体データだった。

 

嘗ては肉体がボロボロとなっていた奏、数多の戦場でノイズを屠り、その度にリンカーを使用していた彼女は既に余命幾ばくも無かった。

 

しかしここ最近彼女のバイタルは徐々に変わってきていた。死にかけた細胞が活性化しはじめ、ここ最近では日常生活に支障がないほどに回復してきている。

 

これも櫻井了子の理解しがたい案件の一つ。一体何故、どうやって彼女は肉体を回復させているのか。

 

依然として謎は謎のまま時間だけが過ぎていく。軈てまぁいいと、自分の計画には問題ないと捨て置きながら櫻井了子はこの件を無視することにした。それが後に大きな間違いになることなど想像も出来ずに…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、クリスちゃん。一度でいいから麻婆食べてみなって、絶対損はさせないから! 絶対美味いから!」

 

「しつっけぇなぁ、いらねぇって言ってんだろっ! アンタの造る料理は確かに美味いさ、おかげでここ最近体の調子も良い気がする。けどなぁ、アンタの麻婆だけは無理だ。何だよあの禍々しいくらいの赤さは!? 目にしただけで命の危険を感じるってどんだけの香辛料をいれてんだよ。デスソースをリットル単位でいれてんのか!?」

 

「失敬な! あんな劇薬に頼るほど俺は落ちぶれちゃいない! 全ては厳選された素材によるものさ! …………確かに個人的な調理法をしてはいるけど、それも食べる人を考えての事、一口食べれば汗が吹き出し、これにより老廃物は排出され、二口食べれば細胞が活性化し元気になる! コレほど優れた料理が未だ嘗てあったか? いやない!」

 

「なんか、聞いてる限りヤバい薬にしか思えないんだが?」

 

「ムキー! この食わず嫌い子ちゃんは! ちょっと未来ちゃん、君からも言ってあげなよこのツンデレ銀子ちゃんに!」

 

「…………修司さんの麻婆は人類にはまだ早いと思うな。具体的には三世紀位」

 

「孤立無援!?」

 

 

 

 

 




ボッチ「麻婆とは細胞を活性化させ、人体を健康にさせるもの」

ボッチ「GN粒子とは細胞を活性化させ、肉体を進化させるもの」

ボッチ「つまり、麻婆とはGN粒子の簡易版だったんだよ!」





んなわけない。



次回もまた見てボッチノシ

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