『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は紛れもないほのぼの回。
またの名を無個性回。


その17

 

 

※月(`・ω・´)日

 

 ヒルダちゃんとクリスちゃん、ロザリーちゃんの機体を一通り弄った後、他にアルゼナルの面々がいないか上空から探索を行った。

 

本当なら自分がグランゾンと共に周辺を調べるつもりだったが、何故かクリスちゃんとロザリーちゃんに激しく拒否られてしまい、終始自分はヒルダちゃんの機体のお荷物となっていました。

 

女の子の体に抱き付くという一歩間違えばセクハラ紛いで訴えられる状況の中、一人緊張していた自分は運良くアンジュちゃん達を発見、合流する事に成功した。

 

そこにはタスク君とモモカちゃんもいて、全員無事な事に安堵したが、何故タスク君がここにいるのか不思議に思い訊ねてみると、色々彼も複雑な事情を抱えている事が分かった。

 

どうやら彼は五百年前、エンブリヲと共にサラちゃん達の地球から脱出し、世界の壁を越えて向こうの側の地球へ移民した人間……“古の民”の末裔らしいのだ。

 

エンブリヲに見限られた事で追いやられる事になった旧人類。自分達を弾圧し、亡き者にしようとしたエンブリヲに復讐しようと生きてきた彼等は世界の果てに追いやられていたノーマ達の存在を知り、共に向こう側の世界に反旗を翻そうと日々戦いと暗躍の日々を過ごしていたらしい。

 

けれど度重なる戦闘により古の民は残り少なくなり、今ではもうタスク君一人だとか。壮絶な彼の人生に自分は何も言えないが、それでもアンジュの騎士である事に誇りを持っているのか、仲間達の事を語るタスク君の表情は明るかった。

 

 何故アンジュちゃんの騎士なのか、この時自分は不思議に思ったが、年頃の男女が同じ所にいるのだ。加えて彼等の陥っていた状況を鑑みれば何も知らない異世界に放り込まれた様なモノ、その時のシチュエーションを考えれば二人の仲が急接近するのも無理もない事かもしれない。

 

 けど、自分という年長者がいるからにはここから先の不純異性交遊は許しませんけどね! 許しませんけどね!!

 

エッチィのはいけないと思います!

 

 ま、タスク君という数少ない男仲間が出来た事に今は喜んでおこう。オマケに彼はパラメイルの整備が出来るみたいだし、人手が増えるのは素直にありがたい。明日も早くから皆を捜索して合流する為に行動を起こさなければならないし、頑張ろうと思う。

 

……どうでもいいけれど、どうしてロザリーちゃんとクリスちゃんは自分がグランゾンに乗ることを酷く反対するのだろうか。反対というよりも、寧ろ遠慮? みたいな感じか? 自分がグランゾンを呼び出そうとする度に止めようとしてくるし……自分、何か怖がらせる様な事をしただろうか?

 

しかも二人とも常に自分には敬語だし、部下でもないのに敬礼してくる。自分としてはヒルダちゃんやアンジュちゃんみたいにもっとフレンドリーに接してくれてもいいんだけどなぁ。

 

 

 

※月*日

 

 パラメイルって、随分と開放感のある機体だよね。飛行形態に変形すればコックピットは丸裸だし、もう少し安全性を考慮した設計は出来なかったのだろうか?

 

タスク君の協力の下、皆の機体を一通り整備し終えた自分達はアルゼナルの皆を探すべくパラメイルを飛ばし、周囲を探索した。

 

この時に自分はタスク君のパラメイルに乗せて貰ったのだが……いやー、開放感も凄いけど風が良く通ること通ること、パラメイルってまさに空を飛ぶバイクみたいな感じだよね。

 

男仲間が一人増えた事によりタスク君と良くセット扱いされる自分達、まぁ男同士の方が気が楽になる事も多いし、その事に別に異議はない。タスク君のパラメイルも操縦させてもらえたし、寧ろ得られた経験を考えれば良かった事が多かった。

 

 パラメイルの操縦性、応用性、各種性能、これらが分かった事によりアンジュちゃんのヴィルキスの性能を知り得る事が出来た。

 

恐らく、アンジュちゃんのヴィルキスはラグナメイル。嘗てこの世界を滅ぼした機体の内の一つなのだろう。何せあの程度のサイズにあれだけの出力を有する機体だ。あれを普通のパラメイルと同格と言うにはあまりにも無理がある。

 

タスク君から聞いた話ではアレこそが沢山の犠牲を払った末に手に入れたリベルタスにおける切り札で、エンブリヲを殺す為に必要な武器なのだとか。そしてそのヴィルキスを扱えるのは現状アンジュちゃんただ一人、つまりは彼女こそがリベルタスにおける中枢人物だと言えるだろう。

 

道理でジル司令官があそこまでアンジュちゃんに拘る訳だ。ヴィルキス───即ちラグナメイルでなければ殺せないというのが本当ならば、彼女がアンジュちゃんの身柄を最優先に考えるのも頷ける。……あの人にはそれ以外に理由がありそうだけど。

 

因みに、アンジュちゃんはこのリベルタスの内容には猛反対なのだとか。まぁ、色々騙されてきた彼女だ。利用されるだけ利用してくる輩は反吐が出る程大嫌いなのだろう。嘗て利用された事のある自分としては彼女のリベルタスに対する反応は共感できる。

 

それに、もしエンブリヲを倒せる理由がラグナメイルに搭載されているあの武装にあるのだとすれば自分にもチャンスはあるかもしれない。アンジュちゃんが自分にエンブリヲを譲ってくれるのであれば、その時は自分がグランゾンと共に本気且つ全力で奴を葬る事にしようと思う。

 

 ……と、上記の事を言ったら、何故かアンジュちゃんに拒否られた。モモカちゃんの件で自分もエンブリヲには借りかあるという彼女の目は獰猛な肉食獣を思わせる。相変わらず向こう見ずな女の子だと思いながらそれが頼もしく思える自分がいる。彼女もアルゼナルで様々な人と関わりを持った事で人として成長したのだろう。

 

けれど、やはりまだ自分に殴られた事は相変わらず恨んでいるようで、今も時々襲われる。しかもその時は筆頭侍女のモモカさんも自分が主を殴った事だから一緒になって襲って来る。そんな訳だから余計にややこしくなる始末、尤もその程度でどうにかなる程柔な鍛え方はしてないので返り討ちにしたけどね。

 

 ───今日もアルゼナルの人達を見つける事は出来なかった。明日も早めに起床して行動を開始しようと思う。

 

PS.

今気付いたのだが、タスク君のパラメイルでタスク君と二人乗りしていた時、クリスちゃんの息遣いが荒かった気がする。風邪でも引いたのだろうか?

 

環境も変われば体調も変わり、疲労度も増していく。今は薬になるようなモノは持ち合わせていないからもう少し頑張って欲しい所である。

 

 

 

※月γ日

 

 ヒルダちゃん達と再会し、アンジュちゃん達と合流してから二日、遂に自分達はアルゼナルの皆と合流する事が出来た。

 

というか見つけた。複数人となった事から人数を分けて編成し、自分とアンジュちゃん、ロザリーちゃんの三人のメンバーで探索していた所、アルゼナルごと転移していた彼女達を見つけたのだ。

 

しかもその場所はサラちゃん達の故郷である都のすぐ近く、まさかアルゼナルが丸ごとこの世界に転移していた事に驚いたが、すぐに皆を呼びに引き返し、再びアルゼナルに戻った。向こうも自分達の接近に気付いたのか、多くのノーマ達が自分らを迎え入れてくれた。

 

久し振りの皆との再会、エルシャさんも他の第一中隊の娘達と再会出来た事から、目尻に涙を溜めながら再会を喜んでいた。アンジュちゃんも皆に迎え入れられた事から満更でもない様子だったし、引率しているつもりだった自分としても照れ臭そうにしている彼女が微笑ましかった。

 

まぁ、そんな再会の喜びも自分が出てきた瞬間にピタリと止んだけどね。や、別にいいんだけどね。ハブかれてるのは慣れてるし、避けられてるのも慣れているから別にいいんスけどね。

 

唯一ヴィヴィアンちゃんだけが笑顔で蒼スマって渾名で呼んでくれたのが救いだった。危うく中華連邦の一員になりかけた事も追記しておく。

 

 で、合流した自分達は司令官代行を名乗るジャスミン女氏との話し合いをする事になった。話し合いと言っても自分と奴、エンブリヲの機体とグランゾンがぶつかり合った以降の話を照らし合わせただけなんだけどね。

 

ジャスミン女氏らノーマはいつの間にかアルゼナルごとこの世界に放り出され、当初は右も左も分からず軽くパニクったそうな。けれどいち早く自分達の世界に戻れた事に気付けたサラちゃん達は事情を説明すべく現在都へ向かっているとの事。

 

その合間アルゼナルでは機体の整備、弾薬の補給と負傷者の治療になり、また手の空いている者は犠牲者達の埋葬に人員を割けていたという。

 

犠牲者、恐らくはミスルギ皇国の兵士達によって命を落とした娘達だろう。連中の素早い展開力によって侵入を許してしまったアルゼナルは何名かのノーマを死なせてしまう事になる。唯一救いだったのはその犠牲者の数が少なかった事と幼年部の子供達が全員無事だった事、中には怪我をしている子もいるそうだが、皆命に別状はなく、今は元気にアルゼナル内で走り回っているとの事だ。

 

犠牲となった娘達の事は凄く残念だが、今は生き残った事を喜ぼう。後で自分も出来る事があれば手伝いますと伝えるけど、何故か断られてしまった。

 

しかもその時のジャスミン女氏の顔が物凄くひきつっていた事もありちょっと気になるが……まぁ、彼女達から見れば自分はドラゴン側の人間なのだろう。幾ら協力関係を結べたといってもそう簡単に信頼関係を築けるのは流石に無理だ。

 

 サラちゃんにも話を伺いたい所だが、流石に夜中である今の時間帯に向かうのは色々拙いだろう。都に向かうのは明日にして今日はゆっくり休むことにしよう。

 

……つーか、このアルゼナルって基地は結構性に関してオープンな所なのね、幾ら夜だからといってまさか艶っぽい声が聞こえてくるとは思わなかった。

 

しかも女の子同士、まだチェリーボーイである自分には刺激が強いので外に出て風に当たってこようと思う。前にもいったと思うが、今日はこの一言でシメらせていただこう。

 

 ───エッチなのはいけないと思います!

 

 

 

 

PS.

 そういえば、ジル司令官はどうしたのだろう? ジャスミン女氏が言うには執務室に引きこもっていると聞いたけど……もしかして彼女もクリスちゃんと同様に体調を崩しているのか?

もしそうなら司令官が倒れる可能性もある。明日辺り何か栄養のある美味しいモノを届けた方がいいかもしれない。




※月γ日その後───。

あ! やせいの ボッチ が あらわれた!
ヒルダ の やじゅうのがんこう!
しかしうまくきまらなかった……。
やせいの ボッチ はにげだした!


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