『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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クロスアンジュが面白くてついやってしまった。




クロスアンジュ編
その1


○月○日

 

 唐突に起こった時空振動、それに巻き込まれ放り出されてしまう形で別世界へと跳ばされてしまった自分は、ここ暫くショッキングな出来事が多すぎた為、日記を書く手を止めてしまっていた。

 

理由は様々だが、一つ目の理由としては……現在自分のいるこの世界には自分以外人間が存在しないという事。これは自分のいる世界に人間が元々いなかったという意味ではない。

 

現在自分が拠点にしている場所は……東京都永田町。嘗て日本の心臓部だった国会議事堂があった地区の付近だ。時空振動でこの世界へと跳ばされた自分は戸惑いながらも情報収集の為にあちこちを探索して回ったが、人らしい人は見つけられず、取り敢えず寝床と拠点を確保する為に周囲を散策する事に徹していた。

 

その最中で自分は案内係のロボットと遭遇し、彼の案内に従って地下へと続く巨大なシェルターに案内された。

 

そこで待ち受けていた事実は……今から500年程前に大きな戦争で人類が滅んだという重たい現実だった。勿論最初は信じないという気持ちもあったが、彼女の────シェルターに搭載された人工知能の女の子から聞かされる映像と言葉、そしてシェルターに放置された人々の亡骸を見て、自分は受け入れざるを得なかった。

 

度重なる世界大戦と汚染、その果てに生み出されたラグナメイルと呼ばれる戦略兵器の使用により地球に大きい爪痕を残した地上は最早人の住める環境ではなかった。

 

 何故汚染された地上で自分は生きているのか。グランゾンから降りる際に調べた時は特に異常は検出されなかったけれど……時が経つに連れて汚染は浄化されたのかな?

 

映像で見かけた戦争の規模的に500年やそこらで環境が整えられるとは思えないんだけど……まぁ、その辺は別に放っておいてもいいだろう。どうせ自分以外人間なんていやしないんだ。少しくらい思考を休めても問題はないだろう。

 

因みに何故人類が自分以外存在しないのか、その理由に付いてだが……どうやらこの避難用シェルターは世界中のシェルターとリンク出来るらしく、お互いに無事の有無を確かめる事が出来るのだという。

 

そう語る彼女から聞かされた状況は……現在生存している人類は自分だけという簡単な一言で締めくくられた。しかも、とびっきりの笑顔と共に。

 

もうね、流石に笑えなかったよ。自分以外に人間がいない事、人類が既に滅んでいて、自分以外誰もいないという事。数日ばかり憂鬱になっても仕方がないと言い訳しておく。

 

まぁ、それも今日で終わりだ。人類が自分以外生存していないならここに自分がいても仕方がない。この星に誰もいないのなら自分なりに調べて自分なりに生きていく事を考えていくしかない。

 

 現在、自分が拠点にしている場所は“夢有羅布楽雅”と呼ばれるホテルだ。シェルターから色々部品を拝借し、それで発電機を作ったので当分は電力に困る事はないだろう。

 

それにしても今日は疲れた。シェルターで亡くなった人々を埋葬するために思った以上に手間取ってしまった。明日に備える為にも今日はこれでお開きにすることにしよう。

 

……ていうか夢有羅布楽雅ってホテルさ、これ完全にアレだよね? もしかしなくてもラブホだよね? 500年前の建築物で一番保存状態がいいのがラブホとか、どうなってるんだよ一体。それを利用する俺も俺だけどさ……しかも一人で。

 

この世界に来て早数日、ショッキングな出来事に数多く見舞われたが、拠点とする場所は確保したので取り敢えず今後も探索を続けていこうと思う。

 

 

 

○月△日

 

 今日は拠点とする夢有羅布楽雅を中心に半径20キロ程探索した結果、中々面白いモノを発見した。国会議事堂から少し離れた位置にある巨大なクレーター、水が貯まり湖と化したそこの中心地点に高く聳え立つ塔が建設されていたのだ。といっても、塔は半分程倒壊している為聳え立つという表現は誤りかも知れない。

 

塔の事を以前シェルターで人工知能ちゃんから見せて貰った映像から思い出し、当時の事を推察すると、恐らくあの塔は当時この国のエネルギーを抽出する場所だったのではないかと思われる。

 

映像ではラグナメイルと呼ばれる機動兵器が戦略武装のものらしき攻撃であの塔を破壊する場面が映し出されていたし、それが原因でこの地球は一時期滅びの時を迎えていたと話していたから、多分間違いないと思う。

 

中へ入ってもっと詳しく調べてみたいと思うが、崩れる危険性がある為塔への探索は止めておく事にした。グランゾンで調べれば問題は無いと思うかもしれないが、あの塔は謂わばこの世界、この地球での象徴とも言える存在だ。興味本意で刺激を与えて完全に倒壊させてしまっては忍びない。あの塔を調べるのはこの世界の事を調べ回り、最後に残して置くことにしようと思う。

 

 その後自分はあちこち調べ回ったが……為になりそうなモノは殆ど見当たらなかった。大きなショッピングモールとか調べて見たけれど、特に活用出来そうなモノは残っていなかった。電子版とかイジって電力を回復させようにも電源も酸化で殆ど錆びてしまっている為、電力を回復させるにはかなりの労力が必要になってくるだろう。

 

……電力もそうだけど、今自分にとって必要なモノは食料だ。グランゾンに保管してある非常食も限りはあるし、水は塔の所にある湖から拝借すればいいから由として、問題は食べ物だ。

 

水はろ過や火で加熱し、人体に有害な細菌が無いか調べれば良いだけだから別にいいが、食料はそうはいかない。最悪の場合そこら辺に生えている草木や苔を食べなければならないだろう。

 

……苔って、食えるのかなぁ? 暗黒大陸にいた頃も流石に苔は食べた事はなかったし、色々不安だ。

 

シラカワシステムを起動させて博士に聞いてみようかな? ……いや、止めておこう。博士に食用の苔の事を聞いて困らせるのもアレだし、仮に聞いたとしても博士を困らせるだけだろう。

 

────知っていたら知っていたで反応に困るしね。

 

 

 

○月▼日

 

 ────ヤベェ。今日の事を振り返って出てきた表現はこれしか思いつかなかった。

 

もうね、ビックリしたよ。多元世界で様々な出来事を経験し、大概の事には驚かなくなった自分だけど、今日見たモノは自分が経験してきた中でもトップ10に入る出来事だった。

 

“ドラゴン”空想の生物で物語の中にしか存在しないと思われていた巨大生物。今日街を探索していた自分は偶然このドラゴンなる生命体と遭遇してしまった。

 

……夢かと思ったよ。目の錯覚だと信じたかったよ。でもね、何度目を擦っても、何度瞬きをしても目の前のドラゴンちゃんは消える事は無かったよ。

 

勿論、別の生き物かとも思ったよ? けどね、あの体躯を見たら誰だってドラゴンだって思うんだ。巨大な躯、鋭い爪、荒々しい牙、つーかあのシルエットでドラゴンじゃないって言われたら逆にキレるよ俺。

 

しかも何か取り巻きの小型ドラゴンみたいなものもいるし、ホント怖かった。小型といっても大人の倍以上の体躯を持っているし、そんなのが取り巻きで十数匹もいるし、ホント怖かった。

 

オマケに聴覚も優れているらしく、動揺し足下にあった枝を踏み抜いてしまった所為でさあ大変。枝を踏んだ音で気付かれた自分は無数のドラゴンとまる一日鬼ごっこをするハメになってしまった。

 

ハチャメチャが押し寄せてくるというレベルではない。無数のドラゴンが頭の真上を通り過ぎた時は心臓の鼓動が五月蠅くて叶わなかった。その後はかくれんぼモードをフルに活用してどうにかドラゴン達を蒔くことに成功したが……まさかあんな生物が地球に跋扈しているとは思わなかった。

 

これからどうしよう。もしまた今回のようにドラゴン達が襲ってきたら流石に無抵抗のままではいられない。自分の身を守る為、最悪グランゾンで応戦しなければならなくなるが……なるべくならそういう事はしたくない。

 

ドラゴン達からすれば自分は余所者の侵略者に見えると思うし、実際この地球には人類が生息していないのだから事実上この星はドラゴン達のモノと言えるのかもしれない。

 

複雑な心境だがドラゴン達と接触するのは今後控えるべきかもしれない。もしかするとここら辺はあのドラゴン達の縄張りかもしれないし、早々にここから立ち去った方がいいだろう。

 

……しかし、久し振りに全力疾走したなぁ。最後辺りは空中三角跳びまで出してしまったし、こりゃ明日は筋肉痛確定だな。

 

 それにしても、ドラゴンなんて実際初めて見たけれど結構格好良かったなぁ。某ハンターゲームでは割と見かけるけど、やっぱ生で見ると迫力がダンチだわ。

 

……真ドラゴン? アレはほら、ゲッターだから。厳密にはゲッターロボの集合体でドラゴンじゃないから。ノーカンノーカン。

 

次元獣にも似たようなのいるけど、アレは獣であってドラゴンじゃないから。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 修司のいる地点から遠く離れた所にある集落。ドラゴン達の集っているその場所に複数の女性達が大広間に集まっていた。

 

「それは……真か?」

 

「はい。目撃者の話によればその者は敵対する意志はなく、斥候隊と遭遇した直後逃亡いたしました」

 

跪く女性の報告に大広間にてざわめきが広がる。

 

「……ナガタチョウに現れた謎の人間、しかも長年存在する事のなかった男とは」

 

「何か良からぬ災いの前触れなのだろうか」

 

「アウラ奪還の前にこの様な事が起きようとは……」

 

女性の口から伝えられる報告、その内容は彼女達にとって信じられない事ばかりであり、また不安に駆られる内容だった。

 

彼女達にとって未知の存在とも言える謎の男性、その男に対して今後どのような対応を取るべきか大広間にいる女性達が頭を悩ませていた時、一人の女性が立ち上がった。

 

「大巫女様、その男への対処は私に任せてはいただけませんか?」

 

「サラマンディーネ、そなた自ら出向くのか?」

 

サラマンディーネと呼ばれる少女、彼女が男性に対して対処すると名乗りを挙げる事で大広間に更なる波紋が広がる。不敵とも呼べる笑みを浮かべながら、彼女は大巫女と呼ばれる少女に向き直り言葉を続ける。

 

「その男は人間体でありながら我々の追尾を振り切ったと聞く事から相当な手練れである事は明白。彼の者の目的を聞き出す為には彼の者に近しい実力者でなければ叶わぬ事でしょう」

 

まるでこの中で一番強いのは自分と言う様な台詞。だが、事実サラマンディーネと呼ばれる少女はそう自負する程の実力と才能を有しており、多くの者もその事を認めているし、そんな彼女に信頼を寄せている者も多い。

 

そんな彼女が名乗りを挙げる事で波紋の広がった大広間にも静寂が戻り、彼女に一任しようと言う言葉が出始める。

 

相手が未知の存在であるならば此方も全力で事に当たらねばならない。大巫女と呼ばれる少女は数秒の思案に耽った後……。

 

「───承った。その任、そなたに任せるとしよう。サラマンディーネ」

 

「ありがとうございます」

 

「ただし、手荒な真似はするでないぞ。こちらはアウラ奪還を控えた大事な時期、事を荒げず穏便にすませるのじゃぞ」

 

「委細承知しております」

 

大巫女から正式に任を受けた事でその場はこれで解散となる。広間から抜け、自室へと戻る最中、サラマンディーネは久しく覚えなかった高揚感を抱いていた。

 

「突然現れた謎の男、果たして彼の者は一体何が目的でここにきたのか……フフフ、興味が尽きませんわ」

 

 

 

 

 




予告

サラ子「謎の男性、それは私達の里にとって劇薬となるのか良薬となるのか分からない」
サラ子「けれどこ数話後、恐らく大多数の人間はこういう事でしょう」
サラ子「もう、アイツ一人でいいんじゃないかな?」

ボッチ「モンスターハンターじゃぁぁぁぁぁっ!!」

次回もまた見てボッチノシ

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