『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今更だけど、今期のアニメも非常に佳き。
個人的には銃をブッパするリコリコな女の子と、異世界帰りのおじさんが絡む日常系アニメが好き。(存在しない記憶)


その185 電脳楽土

 

 

 

 

 ──────嗚呼。

 

『────そうか。君がここのカウンセラーの……些か珍しい経歴の持ち主だから、少し興味を抱いていたが……ふむ、聞いていた割には普通だな』

 

貴方の眼差しは、何時だって先を視ている。

 

『あぁいや、気を悪くさせたなら申し訳ない。別に君を下に見たり侮っている訳ではないんだ。立場上、俺も人を見る目を持っていなければいけないモノでね。王────上司には、いつもその事で叱られているんだ』

 

先を見据え、未来を視て、その未来を実現させようと奮起する貴方は、何時だってキラキラと輝いていて……。

 

『でも安心した。君なら……いや、君()なら。良い仕事が出来そうな気がするよ』

 

 何時だってその瞳には私ではなく、私を通して視える未来しか視ていない。その瞳が、どうしようもない程に綺麗だったから……。

 

だから────。

 

『◼️◼️◼️さん。情けない上司で、色々と迷惑を掛けるだろうが……宜しく頼むよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

“その綺麗なモノを、グチャグチャにしてみたいと抱くのも、女の性で御座いましょう?”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、お前達は別にBBの傘下に降った訳じゃないんだな?」

 

「ひ、ひゃい。我々は……」

 

ひょひょ(ここ)ひぇはい(世界)ひょろぽす(滅ぼす)みゃおう(魔王)がひると……」

 

「そう()われてたので……」

 

 未だ深海を沈み行く領域、セラフィックス改めSE.RA.PHを往く修司とBBによって生み出されたアルターエゴ、メルトリリス。凸凹コンビ感が否めない二人の前に現れたのは、妨害大好きな厄介者(上級AI)が連れてきた円卓の騎士達。

 

ガウェイン、ランスロット、トリスタン。円卓の中でも指折りの実力を有するだろう彼等は今、その美形な顔をこれでもかと歪められ、戦意を根刮ぎへし折られていた。その時間は凡そ1分52秒程、まさかの超電撃戦であった。

 

 彼等の前で腕を組み、仁王立ちをしている者────白河修司は、まんまと言い含められた円卓の騎士達に深いため息を吐き、滲み出る闘気を引っ込めた。

 

三人とも、いずれ悪意で動いていた訳ではなく、単純にBBの言葉に従い、実行しただけに過ぎない。オマケに此方にはBBから生み出されたアルターエゴ、メルトリリスまでいるのだ。彼女(アルターエゴ)をこの特異点での怪物だと広く認識されてしまい、そんな彼女を引き連れているとなると、彼等の誤解も仕方の無い部分もあるかもしれない。

 

そう言うわけだから、今回の修司は円卓の騎士である彼等に対して、比較的軽めに対応した。彼等の得物であり誇りでもある聖剣も今回は砕いてないし、トリスタンの弓も無事である。もっとも、三人の顔は某パンの戦士の如く腫れ上がっているが……。

 

「それでホイホイ言うこと聞く辺り、もうなんというか………実に円卓だなぁ」

 

 彼等を束ねていた騎士王の名誉の為にこれ以上の追求は控える事にした。

 

ただ、同時にもう彼等に用がないのもまた事実で……。

 

「あぁ、もういいよ。肝心のBBにも逃げられたし、これ以上戦うつもりもないなら、俺から言う事はねぇよ。ホラ、どこへでも行けよ」

 

既に、BBの姿はこの場から消えている。元が電脳に特化したAIだからか、転移の如く瞬間移動によって彼女の追跡は困難になっている。

 

ともあれ、自分の策が悉く破れ、ギャン泣きしながら凄まじい勢いで撤退した事から、暫くは此方に手出しをしてくる事はないだろう。

 

 ならばもう彼等には用はない。シッシッと片手で払うように言う修司だが、対する三人は黙したまま動かない。不思議に思った修司はなんだよと訊ねると……。

 

「────修司殿、貴方はこのSE.RA.PHに来て何を為さるおつもりか?」

 

「………この戦いを、終わらせる為だ」

 

何をするつもりだと問い掛けてくるランスロットに、修司はこの戦い………ないし、この特異点を修復させてこのふざけた戦争を終らせるつもりだと説明する。

 

世界を救う為と謳っておきながら、その実態はただの殺し合い。手を差し伸べることも、逃げることも出来ず、安全地帯に逃げた所で待っているのは終わりの見えない戦いに我慢を強いられる毎日。

 

外界と切り離されたSE.RA.PHは、通常時間の凡そ100倍。これ等を元に修司はある確信を抱いた。

 

「この特異点の黒幕は、どうしようもない程に終わってやがる。サーヴァントの戦いを、人の生き死にを、娯楽の対象としか捉えていない。俺は、この特異点を終らせる為に、カルデアから派遣されたマスターの片割れだ」

 

 今回の黒幕は、どうしようもない程に終っている。普段の修司ならばしないであろう酷評だが、そう断言させてしまう程の業がこの特異点にはあった。

 

恐らく、生き残った職員達はマトモではないだろう。仮にマトモだったとしても、それはあくまで外見だけで、その心身(中身)はこれ迄とは残酷な程に変容している可能性がある。

 

せめて、特異点修復後に彼等の心の傷も無かった事にして貰いたい、そう思ってしまう程にこのSE.RA.PHは絶望に満ちていた。

 

 この特異点を生み出した黒幕には、必ず報いを浮けさせる。その意味を含めての終らせるという修司の言葉に、三人の騎士達は互いに顔を見合せ………。

 

「では、その黒幕打倒の旅路、どうか我々も連れて行って貰えないだろうか」

 

この戦いを終らせると、そう強く言葉にする修司に三人は自分達も同行させて欲しいと申し出て……。

 

「────え? いや、別にいらないけど?」

 

修司は、にべもなくその頼みを断った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────で、結局一人連れていくことになったと言うわけですか」

 

「いや、俺も断るつもりだったよ? 立香ちゃんと違って大人数のサーヴァントを御せる自信ないし、あくまで俺達は少数精鋭の(てい)で行こうと思っていたんだけど………」

 

 心なしか、普段よりやや険のある態度のメルトリリスに、修司は困り顔で弁明していた。

 

その後、同行を求める円卓の騎士三人の頼みを断り、その場から去ろうとしていた修司だったが、必死にすがり付いてくる彼等を引き離すのに躍起になった。

 

良い歳した筈の男達かすがり付いてくるとか、それは一体何の罰ゲームなのやら。如何に見目麗しい円卓の騎士と言えど、この時の光景は円卓に恋する乙女も澄まし顔で回れ右をする様相だった事だろう。

 

結局、あまりにもしつこい事と、また敵対されたら面倒という事もあり、修司はガウェインを同行に加えて残った二人を拠点の防衛に宛がう事にした。

 

「まぁまぁ、良いではないですか。修司、確かに貴方は強いし、我々もその実力を思い知っている。ですが此処は広大なSE.RA.PH、探索をするならば手の多さは必然となることでしょう」

 

「………何気に正論なのが腹立つが、確かにその通りだな。なら、今後の探索では当てにさせて貰うぞ。此処にいてそれなりに経っているんだ。案内は任せるぞ」

 

「勿論そのつもりですとも」

 

 自信ありげに頷くガウェインに、修司は一先ず彼との同行を受け入れる事にした。この特異点は未だに謎の多い狂った世界、サーヴァントと戦うよりも特異点と化した原因究明をしていくことが、今回の特異点攻略の際の前提条件だろう。

 

その為には探索に必要な物理的な“手”が必要になってくる。その事の重要性を理解しているからこそ、修司はガウェインの意見に賛同する事になった。

 

それ自体は、メルトリリスもよく理解している。だが………。

 

「それで? 貴方は私の事を放置するんですか? 私達アルターエゴは、貴方達英霊から敵視されていると記憶していますが? それとも、私を倒して彼の隣を奪いますか?」

 

 自分達アルターエゴと、他のサーヴァント達との関係性を考えれば、この同盟は悪手に等しかった。サーヴァントはアルターエゴを敵視、或いは危険視しているものも多い。そんな自分に円卓の騎士が加わっていると知られれば、より多くの敵対サーヴァントから狙われるかもしれない。

 

故に、メルトリリスは敵意マシマシで訊ねるが………。

 

「────それには及びませんよ、レディ。貴女の思惑はなんであれ、彼が貴方を信頼している以上、私から言うことはありません」

 

「信頼? 利用の間違いではなくて?」

 

「警戒心故に悪女ぶるのも結構ですが、貴女も理解している筈です。彼は、たかがクラスの枠組み程度で揺らぐ男ではない。それに………」

 

「それに………何です?」

 

「私も、馬に蹴られるのはゴメンですからね。ここは静観に徹する事にいたしましょう」

 

「なっ!?」

 

円卓の騎士に対して、その対応こそが悪手であった。生意気にも諺を使ってまで返してくるガウェインに、メルトリリスは意外な程に動揺して見せた。

 

赤くなった顔で狼狽する彼女を尻目に、ガウェインはいつの間にか先に進んでいる修司を追いかける。

 

「………バカなことを」

 

 先往く二人を前に、メルトリリスは有り得ないと吐き捨てる。自分が、人間に何かを想い、期待を抱くのはあり得ない。

 

自分はアルターエゴ、メルトリリス。人類とは決して相容れず、互いに恐れ合う破綻した関係性。

 

白河修司との契約はこの特異点を修復する合間に利用し合うだけの、ただの契約でしかない。

 

だから、そんな事になるのは………絶対に有り得ないのだ。

 

「────さぁ、行くわよメルト。私のやるべきをやり遂げる為に」

 

 今一度心を氷付けにして、少女は進む。既に彼から流れるエネルギーには慣れた。後は存分に自慢の魔剣(ジゼル)を奮うのみ。

 

 

 

 

 

数分後。SE.RA.PHのとある地点にて。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!」

 

「デッッッッッ!?」

 

 巨大なモノをお持ちの姉妹に、これでもかと驚きを顕にしているバカ二人、そんな二人にメルトリリスは容赦なく魔剣を見舞った。

 

 

 











オマケ。

或いは、こんな特異点の旅。その③

「あれが、本来のヘラクレスか」

「はは、腕の一振で海を割ってやがんの。幾ら何でもデタラメ過ぎね?」

「どうやら英雄の力というのは、我々が思っていたモノより、遥かに強く、偉大だったらしい」

『何を呑気に言っているの!? 速く、速く其処から逃げてッ!! Aチーム!』

「いやぁ、それは無理じゃない?」

「前方にはギリシャ最強の英雄、後方にはギリシャ有数の魔女。逃げるには色々と無理があるわねぇ」

「ならば、方法は一つしかない」

「………勝てると思う?」

「出来なければ、我々が終るだけだ」

 うねりを上げる大海原。裂けて、砕けて、爆ぜる世界で人類最後のマスター達は見上げる。

ぶつかり合うのは、ギリシャ最強の大英雄と現代最強の一般人。紅き焔を纏いながら突き進む彼の男に、リーダー格の男は叫ぶ。

「やってしまえ、修司!!」

 再び英雄と英雄が激突し、世界が爆ぜた。


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