『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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更新、遅れてしまって申し訳ない。


その184 電脳楽土

 

 

 

 メルトリリスを自らのサーヴァントにすると決断し、探索先で初めてパートナーを得られた事実を前に、修司は彼女との繋がりを確かに感じながら、手の甲に刻まれている令呪に視線を落とす。

 

自分が使役する初めてのサーヴァント、これ迄は藤丸立香がマスターとして使役しているのを遠巻きでしか見てこなかった為、仮とは言え修司はこの契約に人一倍嬉しさを感じていた。

 

そんな浮かれている様子の修司を、釘を刺すようにエミヤ・オルタが横槍を出してくる。

 

「さて、そこの欠陥サーヴァントと契約するのは良いとして、これからどうする? まさか、アテもなくこのSE.RA.PHを歩き回るつもりか?」

 

浮かれるのも大概にしろと、呆れの混じった視線を向けてくるエミヤ・オルタ、その視線の意味するモノを理解した修司は、浮かれ気分もそこそこにして、改めて今後の行動の指針を定める事にした。

 

「いや、取り敢えずセンチネルとやらを担っているサーヴァントを探そうと思う。どうやら聞いた限りだと、この電脳空間に関する情報を持っていそうだし、黒幕を追い詰める意味を含めて、人数や外見的特徴を把握しておきたい」

 

「あれ? このSE.RA.PHって変な空間に成ったのって、あのBBって奴の仕業じゃなかったの?」

 

「あれが? まさか。彼女は自分で公言している通り、人類を支援するAIさ。人類の為に尽くすとか言っている奴が、人類を滅ぼす選択するのはポンコツ以前に自律思考がバグっているよ」

 

「その意見には俺も概ね同感だが、相手はアルターエゴを生み出した奴だぞ。もう少し警戒した方がいいんじゃあないのか?」

 

「え? じゃあメルトって、BBの娘?」

 

「……………」

 

「スッゴく嫌そうな顔してるッ!?」

 

 メルトリリスは、BBによって生み出された存在。故に彼女にとってBBは母親同然ではあるが、本人はその事実を酷く毛嫌いしている模様。その可愛らしい顔立ちを嫌悪に歪ませている辺り、この話題は彼女にとって相当タブーな話なのだろう。

 

「まぁ、エミヤの危惧しているのも分かる。だから間を取って、俺達はSE.RA.PHを探索しつつセンチネルを探し出して接触。可能であれば説得してこちら側に引き込む」

 

「説得出来なかったら?」

 

「その時は戦うしかないだろうなぁ。あ、でも無理に戦う必要はねぇよ? 何事も命を大事に。勝てないと分かったらすぐ逃げることを条件に追加な」

 

センチネルという脅威を相手に、あくまで非戦闘という態度を崩さない修司、唯でさえSE.RA.PHの探索という危険な任を背負っておきながら、その顔には一切の陰が無かった。

 

白河修司は、自らの為すべき事を理解している。だからこそ、必要だと判断したものはトコトン拘るし、妥協はあまりしない。

 

 だからこそ、何もかもが擦りきれた男には………その在り方は些か以上に眩しかった。

 

「相変わらず、杜撰な作戦だな。そして反吐が出そうな程に甘い。センチネルを説得? これ迄殺し合いをさせられていた相手が、今更此方の言葉に耳を傾けると、本気で思っているのか?」

 

「それは、実際に会ってみてから考えることにするさ」

 

修司の案を甘いと一蹴するエミヤ・オルタだが、修司本人は決して覆そうとしない。それは油断か慢心か、目を逸らして舌を打つエミヤに、修司はやはり笑みを浮かべるだけだった。

 

「────付き合いきれんな」

 

「え? あ、あれ? 一緒に行かないの? アーチャーさん」

 

「理想を呑み込んだ馬鹿のお守りをするつもりはない。………拠点は俺が預かってやる。とっとと外へ行って野垂れ死んでおけ」

 

 背を向けて、礼拝堂の奥へと消えていくエミヤに、武蔵は目を剥き………。

 

「あ、序でに武蔵、お前も今回は此処で留守番しておけな」

 

「ええっ!? そりゃないよお師匠様!」

 

更に、武蔵ですら置いていくという修司の判断に、今度は武蔵が抗議する。このSE.RA.PHという未知の領域にて、サーヴァントという未知なる強敵が跋扈している。それと戦えるのは武蔵にとって絶好の修行場であり、成長の機会。それを奪うのは流石に納得出来ないと吼える武蔵に対して……。

 

「阿呆、たかが小娘がサーヴァントと戦えるなんて思い上がってるんじゃねぇよ。大体お前、さっきはサーヴァント二体相手に圧されていたじゃねぇか」

 

「ウグッ」

 

「そんな自分の実力も把握していない半端者を連れていける程、俺は自惚れていねぇよ。分かったなら大人しく留守番しておけ」

 

 これから先、どんな危険な相手が待っているのか分からない。ただ一つ分かるのが、六時間経過したら死を免れないという超危険地帯に、家出娘を連れていくのは流石の修司でも理解できた。

 

事実、この特異点で見かけた時は、遭遇していたサーヴァント相手に圧されていて、修司がいなくとも潜り抜けたとしても、時間という死を前に為す術が無くなっていたかもしれない。

 

他にも、此処にはエミヤが陣取ってくれている事で安全性が高まり、武蔵の身を預ける分には最適解なのかもしれない。

 

「ううぅぅ………」

 

「────はぁ、分かった。戻ってきたらお前の鍛練に付き合ってやるから、今はそれで機嫌治せ」

 

「本当ッ!? なら私、寝ながら待ってるね~!」

 

 それでも涙目で俯き、恨めしそうに見つめてくる十数歳の女子に訴えられてしまったら、それを無視してはね除けてしまうのもまた難しい。

 

戻ってきたら鍛練の相手をしてやると、手軽に組手の約束をしただけなのに、武蔵は機嫌を180°変えて礼拝堂の空きスペースに胡坐をかいて横になる。

 

直ぐ様寝息を立て始める自称弟子に呆れながら、修司は改めてメルトリリスへ向き直り………。

 

「んじゃ、俺達も行こうか」

 

「は、はい!」

 

彼女と共に礼拝堂を後にした。

 

「─────所で、サーヴァントとの契約ってどうやるんだ?」

 

「えぇっと………」

 

尚、その道のりは前途多難である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ………気持ち悪い………」

 

 そうして、修司がメルトリリスを引き連れて再びSE.RA.PHの探索を開始する事数分、通称《腕》の部分までやってきた二人だが、その足取りは順調そうに見えて順調ではなかった。

 

「お、おい。本当に大丈夫なのか? 俺とパスとやらを繋げてからずっとその調子だけど……」

 

「だ、大丈夫です。ちょっと供給されるエネルギー量に圧倒されて、吐き気を催しているだけですので」

 

修司に背負わされているメルトリリスは、目を回して絶賛悪酔い中。何度も汲み上げてくる吐き気に苛まされては、休憩を挟んでいるという体たらくを晒してしまっていた。

 

 原因はメルトリリス────ではなく、寧ろパスで繋がっている修司の方にあった。既に彼の魂の総量は並みの人間を軽く越えており、その規模は計り知れない。

 

今の不完全なメルトリリスでは、紙コップ一つで大量の水を受け止めているのに等しい。それでも彼女が悪酔い程度で済んでいるのは、偏に彼女の特性のお陰でもあった。

 

「でも、あなたのエネルギーにも少しずつだけど慣れてきました。戦闘はまだ難しいですけど、何れは貴方の役に立って見せましょう」

 

「そ、そうなのか? 悪い。俺って魔術方面に関する知識は毛程もないからさ、その辺りの事はメルトに任せたいんだ」

 

「………勿論、その程度の事は任せてください」

 

 修司本人にはそのつもりは無いだろうが、言外に“それ以外の事は期待していない”と言われた気がした。当然、それはメルトリリスの単なる被害妄想でしかないが、今までの修司の活躍を知ればそれは仕方の無い事かもしれない。

 

これ迄修司は単独、己の体一つであらゆる状況を打破してきた。数多くのエネミーも、SE.RA.PHという地獄で狂ったサーヴァント達も、BBからの妨害さえも意に介さず突破。

 

そんな修司のやらかしを前に、メルトリリスは果たして自分がこのまま彼のサーヴァントであっていいのか、そう思うのも仕方がなかった。

 

しかし、そんな彼女の胸中に関わらず、事態は進行する。

 

「ふっふっふっふー! ようやく来ましたか修司センパイ! BBちゃん待ちくたびれましたよー!」

 

「あぁ? また来たのかお前、暇かよ」

 

「ふふーんだ。そんな呆れの籠った視線も今のBBちゃんには効きませーん! 何故なら、今回BBちゃんには心強いお仲間が来てくれたのですから!」

 

「仲間ァ?」

 

「その通り。幾らトンチキなセンパイでも、彼らの前では塵も同然! 何せ、顔からして戦闘能力が違いますからね! と、その前に……えーい♪」

 

「っ!」

 

 これ迄で既に何度も立ち塞がってきたBB、情報も碌に渡さず、時間潰ししかしてこない彼女に修司は少しばかり苛立ちを覚えた。

 

けれど、今回ばかりはどうやら違うらしい。なにやら自信満々で笑みを浮かべるBBを前に警戒心を少しだけ上げると、途端に自身の体が重くなるのが分かった。

 

この感覚は覚えがある。それは、これ迄修司が幾度となく体験してきた………高重力による負荷!

 

「フフフフフ、今の修司センパイに掛けられた重力は通常の10倍! そして………カモーン! 円卓のナイト達!」

 

「円卓、太陽の騎士ガウェイン。ここに」

 

「同じく円卓、湖の騎士ランスロット。ここに」

 

「同じく円卓、騎士トリスタぶへぁ!?

 

 BBからの紹介により、次々と名乗りを上げる円卓の騎士だったが、突如トリスタンだけは顔面を蹴り飛ばされて吹き飛んでしまう。

 

突然の事に呆気に取られている一同、中でもメルトリリスは驚愕の度合いが大きかった。自身に降り掛かる圧力に気を失い掛けた時、気付けば彼女は電子の床にそっと置かれていた。

 

それこそ、メルトリリス自身が直後に何をされたのか理解できなかった程に、優しく、丁寧に扱われていた。

 

「メルト、ちょっと待ってろ」

 

 太陽の騎士、湖の騎士、円卓の中でも屈指の強者に挟まれて尚、修司は嘯く。

 

「二分で終わらせる」

 

拳を鳴らし、やる気を見せ始めた修司。その迫力を前に上級AIのBBの笑みは既にひきつっていた。

 

 




Q,なんでメルトリリス吐きそうになってるの?

A,ボッチの魔力……というより、魂のエネルギーを諸に浮けているから。
現在のボッチの魂の総量は未知数、並みのサーヴァントならマトモに動けなくなる程に膨大の量のエネルギーが彼女に流れ込んでいる状態。





リアルが糞忙しくてマトモに筆が進まないィィ……。

済まない、本当に済まない。


次回、円卓の騎士GETだぜ!

次回も、また見てボッチノシ




オマケ。

或いはこんな特異点の旅 その②

「これがローマの始祖、ロムルスか!」

「この圧、流石は神祖ロムルス。けれど、私達とて敗けはしない!」

「いけカイニス、10万ボルト!」

「イヤ出来るか!?」

「え、出来ないのかい?」

「出来るわけねぇだろ!? そもそもオレはどちらかと言えば水タイプだろうが!」

「いや、その返しもどうなのよ」

「じゃあカイニス、みだれづき!」

「やらねぇよ!」

「全く、あの子達ったら」

「よっしゃあ! やっちまえ修司、はかいこうせん!」

「波ァァァッ!」

「こっちもこっちで楽しそうだがな」


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